天皇が黒日売のいる「山手」までお越しになられて、その膳<カシワ>に奉ったものが古事記には、黒日売が摘んで来た菘菜<アヲナ>を羹<アツモノ>にして出したと書いております。
この「羹」とは、あの「羮に懲りて膾を吹く」の羮です。この場合の「羮」とは、煮立つったばかりのものすごく熱い食物を云うのです。しかし、黒日売が天皇に差し上げた羹は、宣長はその古事記伝で
「阿豆毛乃<アツモノ>で、意味は、“ぬるからず熱きを好しとして”(熱からず冷たからずの食べ物)と説明しています。その例として、蒸<ムシモノ>、茹<ユデモノ>、炙<アブリモノ>、韲<アヘモノ>等がそれであり、吸い物香ノ物など、食事のつける軽い食べ物だそうです。魚とか肉などの副食に添えるごく簡単な物だそうです。
その材料を黒日売が住んでいる近くに取りに行ったのです。