恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

11.time love

2006年07月01日 | 物語
 ザァザァと外は大雨が降っている。雷も遠くから鳴り響いていた。
 今日の体育の授業は、体育館でバスケでもあるのだろうか。
 僕はボンヤリと運動場を窓から見ていた。運動場は、雨で水溜りが所々に出来ていて、二階からは日本地図の様に見えた。
 お昼休みが終わり、体育員が大声で「次の体育は体育館であります。」と叫んでいた。
 それを聞いて喜ぶ生徒もいれば、サッカーが良かったのにとため息を漏らしている生徒もいた。女子も体育館でバレーだと言っていた。
 ミユキもバレーをするだろうか。違うクラスだが、僕が好きになった子だ。ミユキと逢えるかと思うとワクワクと胸が急いでいた。 
 素早く着替えて、体育館に入った。
 バレーの準備をしている所にミユキの姿があった。僕はチラチラと見ていた。体操服も似合っていて、髪の毛を後ろで一つに結んでいた。
 今日こそは告白をするぞという意気込みだけはあった。
 ミユキの姿を気にしながらバスケをして一時間があっという間に過ぎていった。
 体育館を出る時、ミユキがタオルで汗を拭きながら前を歩いていた。相変わらず外は大雨が降っていた。渡り廊下が水浸しになって避けるのに戸惑った。
 彼女は一人だったので、これはチャンスと思い、声をかけようとしたら、後ろからミユキの友達が先に声をかけた。
 今日も告白は出来ないみたいだ。それから何度となく機会はあったようでなかった。
 そうやって三年間好きな想いを伝えられず僕の恋はあっという間に終わってしまった。
 大学に行き、今は平凡なサラリーマンをしている。
 大人になった今でもミユキの事を思い出している。
 あの瞳。あの髪型。あの話し方。あの笑い方。
 あの時に好きだと言う事が出来たなら、今という現実はもう少しマシになったのかもしれない。勇気さえあればこんなに悩まなくても済んだだろう。
 もう一度あの時に戻りたい。体育館の入り口を出て彼女に好きだと言いたい。
 自分の部屋でアルバムを見ていると、外は大雨が降り、雷がなって、稲妻が走った。ピカッと光った瞬間、音と同時に倒れこんだ。
 目を覚ますと、周りは体育館だった。僕は体操服を着ていて、チャイムがなり、みんながボールを片付けていた。
 「あれ。おかしいな。確かに大人になったよな。」と自分の体を一通り見渡して触ってみると子供になっていた。外はゴロゴロと雷が鳴り響いていた。
 疑心暗鬼で「俺何歳に見える?」と隣にいた友達に聞くと「お前馬鹿だな。俺と一緒で17だよ。」と言われた。
 不思議な事にタイムスリップしたようだった。
 これは神様がくれた限りないチャンスに違いない。この事をミユキに伝えなくてはならない。ミユキの姿を探すとバレーが終わって体育館を出ていた。僕は後を追いかけていった。
 あの時と同じで髪を一つに結んでいた。確かに彼女に間違いない。僕は戸惑いながら声をかけた。
 「ミユキさん。話しがあるんだけど。」今まで一度か二度くらいしか話した事がなかったので、ミユキさんという言葉に疑問を感じたが、そんな事を言っている場合ではなかった。
 雷がなって現代に戻ったらまた後悔してしまう。自分を変える為に今告白をするのだ。
 「なんですか?」ミユキが大きな瞳を丸くして振り向いた。まさに現実だった。大好きなミユキが目の前にいたのだ。
 「えっと。僕の事あんまり知らないと思うけど好きでした。」ずっと言えなかった言葉。何度も頭をよぎった言葉。僕は、タイムスリップをして告白をしていた。 この時間が永遠の様な気がした。僕は想いを伝えた事がうれしくて涙が溢れていた。
 「いきなり言われても。」ミユキは俯いた後、一息ついて何かを言おうとした瞬間、雷が近くで落ちて光った。
 「キャー。」どこからか悲鳴が聞こえて来て、僕とミユキはふさぎこんだ。
 気がつくと、自分の部屋で目が覚めた。枕元にはアルバムがあった。
 「なんだ夢か。タイムスリップするわけないか。」と呟いて、パラパラとアルバムをめくった。
 すると、不思議な事にミユキとのツーショット写真がたくさんあって、思い出そうとすると頭が痛くなった。
 外は、相変わらず大雨が降っている。雷は遠くでなっているみたいだった。
 そんな馬鹿な事があるかと思って、部屋をもう一度見渡してみると、少し違和感があった。ふとベッドの写真たてを見ると、ミユキと自分がスキー場の前で仲良く写っている写真があった。
 「まさか。未来が変わったのか。」と呟くと、誰かが部屋のドアを開けた。
 振り返ると、大きな瞳で覗き込んでいるミユキの姿があった。
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