スズメの鳴き声が聞こえて来て、目が覚めた。周りを見渡すと、自分の家ではなさそうだった。手を伸ばして欠伸をしていると、布団の中からナナコが寝返りをうっていた。ナナコは、上半身下着姿でいた。私の方も上半身裸だという事が今になって分かった。
私は驚いてトイレに向かった。鏡を見るとひどい顔をしていた。昨日の記憶がまったくない。あれから、どうしたんだろう。
トイレの鏡に向かって考えていると、三人で居酒屋に行ったのはうっすらと憶えていた。それからの記憶という記憶がなかった。トイレをすまして、顔を洗ってナナコの横に散らばっていた服を急いで着た。
ナナコは、ぐっすりと寝ている。もう一度隣に寝てナナコの寝顔を見ていた。私はドキドキと胸が高鳴った。
私達は、そんな関係になってしまったのか。ベッドで靴下を履いていると、下の方から、ゾンビの様なうめき声が聞こえてきた。
何かなと思ってベッドの下を覗き込むとサチコが死んだようにグッタリと寝ていた。なぜベッドの下なのかよく分からなかったが、二人ともよく寝ていた。
ナナコと関係を持ったというだけで幸せで、空にも上る気持ちだった。
二人を起こすのも悪いので、電話機の横のメモに「帰ります稲村」と書いて、家に帰った。
それから、会社でいつものようにナナコに逢った。私が挨拶をするとナナコは知らぬ顔で通り過ぎて行く。
私は何かしたのか。この前の出来事が関係している事が十分伝わってきた。そんな事を考えていると、前の席のサチコが、話しかけてきた。
「この前はどうも。いい夜でしたね。」何か意味深に聞こえた。
「どういう事だよ。」
「いや。ナナコから何も聞いてないの?」
「聞いてないよ。」
「私の口から言うのもですね。」
「俺はなんかしたのか?」
「いや別に。」サチコが何か知っている事は確かだった。私がどうかしたのかと問いただすと白状をした。
ナナコが私に抱きついて来たのに何もしないで、そのまま寝ていたという訳だった。怒るのも無理はない。女としてみていないと言っているのと変わらないなと思った。
サチコの方は、見て見ぬ振りをして、ずっとベッドの下に隠れていたらしい。
せっかく関係を持ったと思ったのにとても残念だ。
だけど、両思いという事が分かっただけでもうれしかった。やっぱり謝ったほうがいいのだろうか。
ナナコに会社が終わって話があると言って、玄関で待たせていた。
「なんですか?」私が急いでナナコの前に行くと、少し怒ったような感じで言った。
「この前はごめん。酒があんまり強くなくてね。」
「もういいです。終わった事ですから。」
「そんな事ないよ。今からはじめる事だって出来るだろうし。」沈黙が流れた。 仕事帰りの人たちが次々に横を通っていた。
「それどういう意味ですか?」
「俺、ナナコが好きなんだ。」ずっと言いたかった言葉。今度はいつ言おうかと何度想っても出てこなかった言葉。ついに言ってしまった。
「えっ。いきなり言われても。」ナナコは困ったような顔をして、顔をふせた。
「俺じゃ駄目かな。絶対幸せにするよ。」
「少し考えさせてください。」
「分かった。」ナナコは、恥しそうに、人通りが多い道をすり抜けて、急いで家へと帰って行った。私は、ずっとその姿を見ていた。ナナコが歩いていると、知らない男が振り返っていた。やはり、美人なんだなと思うと、なんだかまた顔がにやけてきた。
私は驚いてトイレに向かった。鏡を見るとひどい顔をしていた。昨日の記憶がまったくない。あれから、どうしたんだろう。
トイレの鏡に向かって考えていると、三人で居酒屋に行ったのはうっすらと憶えていた。それからの記憶という記憶がなかった。トイレをすまして、顔を洗ってナナコの横に散らばっていた服を急いで着た。
ナナコは、ぐっすりと寝ている。もう一度隣に寝てナナコの寝顔を見ていた。私はドキドキと胸が高鳴った。
私達は、そんな関係になってしまったのか。ベッドで靴下を履いていると、下の方から、ゾンビの様なうめき声が聞こえてきた。
何かなと思ってベッドの下を覗き込むとサチコが死んだようにグッタリと寝ていた。なぜベッドの下なのかよく分からなかったが、二人ともよく寝ていた。
ナナコと関係を持ったというだけで幸せで、空にも上る気持ちだった。
二人を起こすのも悪いので、電話機の横のメモに「帰ります稲村」と書いて、家に帰った。
それから、会社でいつものようにナナコに逢った。私が挨拶をするとナナコは知らぬ顔で通り過ぎて行く。
私は何かしたのか。この前の出来事が関係している事が十分伝わってきた。そんな事を考えていると、前の席のサチコが、話しかけてきた。
「この前はどうも。いい夜でしたね。」何か意味深に聞こえた。
「どういう事だよ。」
「いや。ナナコから何も聞いてないの?」
「聞いてないよ。」
「私の口から言うのもですね。」
「俺はなんかしたのか?」
「いや別に。」サチコが何か知っている事は確かだった。私がどうかしたのかと問いただすと白状をした。
ナナコが私に抱きついて来たのに何もしないで、そのまま寝ていたという訳だった。怒るのも無理はない。女としてみていないと言っているのと変わらないなと思った。
サチコの方は、見て見ぬ振りをして、ずっとベッドの下に隠れていたらしい。
せっかく関係を持ったと思ったのにとても残念だ。
だけど、両思いという事が分かっただけでもうれしかった。やっぱり謝ったほうがいいのだろうか。
ナナコに会社が終わって話があると言って、玄関で待たせていた。
「なんですか?」私が急いでナナコの前に行くと、少し怒ったような感じで言った。
「この前はごめん。酒があんまり強くなくてね。」
「もういいです。終わった事ですから。」
「そんな事ないよ。今からはじめる事だって出来るだろうし。」沈黙が流れた。 仕事帰りの人たちが次々に横を通っていた。
「それどういう意味ですか?」
「俺、ナナコが好きなんだ。」ずっと言いたかった言葉。今度はいつ言おうかと何度想っても出てこなかった言葉。ついに言ってしまった。
「えっ。いきなり言われても。」ナナコは困ったような顔をして、顔をふせた。
「俺じゃ駄目かな。絶対幸せにするよ。」
「少し考えさせてください。」
「分かった。」ナナコは、恥しそうに、人通りが多い道をすり抜けて、急いで家へと帰って行った。私は、ずっとその姿を見ていた。ナナコが歩いていると、知らない男が振り返っていた。やはり、美人なんだなと思うと、なんだかまた顔がにやけてきた。