９．恋する気持ち ３

　ナナコに告白をして、一週間が過ぎた。毎日顔を合わせているが、中々答えを聞き出せなかった。
　ナナコも私と顔を合わせるのが辛そうだった。辛いなら答えてくれたらいいのに恥しいのだろうか。
　今日、思いっきって聞くことにした。いつものように仕事が終わってから、玄関の前で待ち合わせをしていた。
　「お疲れ様。この前の返事を聞きたいんだけど。」
　「あれから色々と考えたんだけど、私達やっぱり友達でいましょう。」ナナコがうつむいて答えた。一週間待った答えが友達とは、悲しくなった。私は、一週間の不満がたまっていてぶつけていた。
　「何でだよ。」
　「今は仕事を一生懸命したいから。」そんなの理由にならなかった。結局は振られたという事だろう。
　「分かった。」唇を噛み締めて、何も言わず背中を向けて、家へと帰った。
　振り返えらず、うつむいて、人にぶつかっても、涙が流れても、ひたすら歩いて帰っていた。
　ナナコとはそれから、ずっと友達だった。どこかへ遊びに行くにしても、友達だった。一線を超えたとしても、ずっとずっと友達だった。
　何を基準に人は恋人と呼ぶのだろうか。友達でも恋人でも同じ事ではないのだろうか。毎日遊んでいても友達だし、遊んでいなくても恋人だとしたら、どういう事だろうか。
　もしケンカして別れたとしたら、友達ではなくなるのだろうか。恋人ではなくなったとしても、永遠の友達になれるのかもしれない。
　そうだとしたら、友達という関係も悪くないような気がした。
　私が考えていたら、前の席のサチコがニヤッと笑っていた。