恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

11.麻雀

2016年07月07日 | 夏の物語
 ジャラジャラジャラジャラ。麻雀牌を混ぜる音が部屋中響いている。
 ケンジとツナヨシとカズと私で、麻雀をしていた。
 銀色の灰皿が潰れたタバコでいっぱいになり、ツナヨシが缶コーヒーの缶に吸った煙草を押しつぶすように入れた。周りは、煙で充満していた。
 くわえたばこで、「ポン」とケンジが叫んだ。その後、隣に座っていたツナヨシがリーチ一発とつぶやいた。
 「やられたー。」ケンジがリーチ棒を横で投げるように混ぜた。
 部屋に掛けられている時計を見ると、真夜中の3時だった。
 カズが何かを思い出したように、「ちょっと明日早いので、今日は帰らせてもらう。」と華奢な体を起こして、ムクッと立ち上がった。
 「そっか。」と言って、私が車で送って行くと言った。
 駐車場まで、歩いていると、生暖かな風と共に雨が降り始めてきた。
 カズを後部座席に乗せて、家まで送る。
 道路を走りながら、バックミラーで自分の顔を見る。目の下のクマがここ2、3日寝ていない事が物語っていた。
 「カズ、眠いなぁ。」と後部座席に話しかける。外は、大雨になり雷で声がかき消された。
 「明日、仕事ならきついな。この雨で大変だろう。」カズは、土木工事の下請けのような仕事をしていた。
 独り言のように話しをしながらカズの家の前へとつく。
 「おい。ついたぞ。」外は、大雨で、今にも車の中に雨が入ってきそうだった。
 「寝てるのか。」と後ろを振り返ると、誰もいない。後部座席が雨でじゅっくりと濡れていた。
 まったく。もう降りて、家の中に入ったのだろうと思い、その日は、家へと帰った。
 
 次の日、どうも昨日の事が気になり、カズの家へと尋ねに行く。
 家の前には、大きな菊の花輪が出してあり、門前提灯が飾られてある。
 「まさか。」と思って、急いで、家の中に入ると、カズの遺影があり、母親が泣いている。
 昨日、カズと夜中まで麻雀をした話しを、母親にすると、麻雀をする前日に自殺したと言った。
 「麻雀が好きで、どうしても、友達と麻雀をしに行きたかったのでしょうね。」母親がすすり泣いた。
 昨日のカズが幽霊で何か俺たちに相談したかったのだろうか。
 「悩んだなら相談すればよかったのに。自殺するなんて、バカヤローだ。」遺影に向かって、叫んだ。

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