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世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

6.祭りのあと

2018年08月02日 | 夏の物語
 花火の賑やかさも落ち着き、屋台の人たちも暖簾を下ろしたり、後片付けをしている。
 生暖かい風が吹いて、祭りのあとって、いつも切なくなってしまう。
 ヨウコを探していると、サトルを見失ってしまった。
 それにしても人が多すぎである。
 駅の方に歩いていると、浴衣を着ている女の子二人いた。一人は、祭と書いてある団扇を帯にさしている。
 後姿がヨウコに似ている。走って前に見に行く。
 「おー。ヨウコじゃん。今日来てたんだ。」
 「ヨシオ君も来てたんだ。さっきサトル君が探してたけど。」
 「そうそう。さっきそこであったんだけど、またはぐれちゃった。」
 「二人らしい。」ヨウコが笑った。笑うと通りすぎている男達が見ていた。
 一時沈黙した後、「ヨウコ二人っきりで、ちょっと話さないか?」
 「別にいいけど。」その姿を察した女友達が、「じゃーここで、またね。」と言って、帰った。
 人通りが多い駅通りを通り過ぎて、静かな細い道を二人で歩いて行くと、赤トンボがこっちを見ながら、横を通り過ぎて、ヨウコが「もう夏も終わりだね。」と呟いた。
 それを聞いて、夏の切なさがまた込み上げてきた。
 歩いていると、狛犬が左と右にいて、鳥居があって、神社がある。
 いつもサトルと遊んでいる神社だった。
 「せっかくだからお参りして行こう。」と行って、中に入っていく。
 今日は祭りの日で、電気が明るくついていて、ヨウコの横顔がはっきりと見えて、緊張した。
 神社の前に来ると、ヨシオが鈴を勢いよく鳴らして、手を二回叩いて、一礼した。
 「何願ったの?」ヨウコは、大きな瞳で覗き込んだ。
 「言ったら叶わないから言わない。」
 「気になる。私との話と関係あるの?」
 ヨシオが神社の方を一度見て、「ヨウコ好きだ!俺と付き合ってくれ!」と大声で言った。
 「えっ?びっくりした。」
 「ずっと好きだったんだ。ヨウコの事。」
 「そうだったんだ。」
 神社なんかでヨシオのやつ告白するとは気持ち悪いなとサトルは思った。
 駅の所で二人を見つけて、後をつけてきた。
 手を洗う所の草むらで隠れて二人を見ていた。蚊が多くて足をバタバタとさせた。こんな事なら虫よけスプレーをして来ればよかった。
 二人とも黙った後、ヨウコが「私は、やっぱりサトル君が好きなんだ。」と言葉を探すように言った。
 まじで!!とサトルは思った。
 「そうだったのか。サトルが聞いたら喜ぶと思うよ。」ヨシオは足の所にあった小さな石をおもいっきりきり蹴った。石が草むらの所にいきサトルの足に当たって「いてっ。」と声が出た。
 「誰かいるのか?」ヨシオが声をかけると、仕方なく草の枝を持ったサトルが出てきた。
 「何?二人ともここにいたのか。探したんだぞ。ガハハハ。」と胡麻化して笑った。
 ヨウコが気まずそうに俯いた。
 「ヨシオがヨウコの事先に見つけたなら俺の負けだな。うん。負けでいい。」
 「そうだな。俺の勝ちだ。」そんな勝負をしていたのは、とっくに忘れていたが、どう見てもヨシオの大負けだった。
 「俺は用事があるから、サトル、ヨウコをちゃんと家まで送ってやれよ。」胸の奥の方がチクチクと痛かった。心臓が悪いのだろうか。
 「分かった。」ヨシオが走って、帰って行く。
 ヨウコは、相変わらず気まずそうに俯いている。
 「それじゃ、家に帰ろうか。」
 「うん。」とヨウコがサトルのシャツの裾をつかんだ。
 夜の神社は、子供の僕たちには怖かった。お化けが出そうな感じがする。遠くで変な鳥が鳴いている。
 ヨウコの手に力が入っていた。
 帰る時狛犬を見ると、右の狛犬の向きが違うような気がした。
 それもそのはず、ヨシオが帰り際、ムカついて、狛犬を蹴って向きを変えたのだった。

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