病院の一室。
木に止まっている小鳥が鳴く中、明菜は外の景色を何かを探すかのように上の空で眺めていた。たった一人の幼い弟が目の前で交通事故で死んで心にポッカリと穴が開いたのだ。
あの時、死んだのは私の方がいいとさえ思っていた。
そんなある時、隣に頭と腕と片足に包帯を巻いた若い男が入って来た。
名前は難しい字でベッドのネームプレートに書いてあったが明菜は読むことが出来なかった。
その男は馴れ馴れしい口調で話しかけて来る。
「いやぁ~まいった。交通事故で全治3週間だってさ。しかも隣にこんなカワイ子ちゃんがいるとは、まんざら病院も悪くないね。君、名前なんていうの?」
明菜は、無視をした。全治三週間って何それ。私の弟は目の前で死んだというのに、馴れ馴れしいのもほどがあるわ。
「あれ?無視かな。それじゃ~しょうがない。テレビでも見るとするか。」100円コインを三枚入れてテレビをつけていた。
その間も、「ウフェフェ」と不気味な笑い方をしていた。
夜になり、隣の男のいびきがうるさい。苛立ちもかねて屋上に上がり、外の景色を眺める事にした。
屋上では、満月が煌びやかに輝いていた。
ここから飛び降りれば確実に死ぬだろう。いっその事死んでみようかな。
「あれれ~。カワイ子ちゃん。ここにいたんだ。何してるの?そんなおっかない顔をしてさ。」
「何?」いきなり声をかけられてビックリした。さっきいびきをかいて隣で寝ていたのに、何なのこの男は。
「やっと話してくれた。超ウレぴ~。」
「私に構わないでくれます。」
「いや。別に構っているわけじゃないんだけど、タバコを吸いに来たんだ。病院内ではいくら俺でも吸えないからさ。」男はギブスを巻いていない方で、器用にタバコをポケットから取り出して火をつけた。
男が煙をはくと満月に吸い込まれていくような感じがした。
「どうしたんだい。いつも顔をしかめてさ。今にも死にますって顔をしてさ。」
「あなたにはわからないわ。この私の気持ちなんて。」
「俺には君が何を考えて、行動しようと勝手だけどね。だけど、弟さんが天国で泣いてると思うぜ。そんな悲しい顔をしているなんて、おねぇちゃんらしくねぇってね。」
「何でそんな事。」
「さっき看護婦さん達が話してるのを少し聞いちゃってさ。心の病気がどうのこうのって。君は、体はもう治ってるってさ。後は生きる力を思い出すだけって。」
「あなたにそんな事言われる筋合いはないわ。何でそんな事いうの。」明菜は、コンクリートの上で倒れこんでメソメソと泣いた。
「ごめん。ごめん。泣かせるつもりじゃなかった。そんな落ち込んで肩を張ってたら、生きるのが嫌になっちゃうだろう。もう少しリラックスしてさ。君みたいなカワイ子ちゃんには長生きしてもらいたいしさ。恋も知らずに死んでしまったらこのおじさんが悲しむだろう。」
満月の月明かりで二人の影が寄り添っていた。
男は、ギブスの隙間から真っ赤な薔薇の花を一つ取り出した。明菜は薔薇を掴むと少しだけ笑った。
「やっと初めて笑った。女の子はそうやっていつもニコニコと笑ってなくちゃ可愛くないよ。こうやって月を見ていると、素晴らしい事じゃない。死んだら絶対見れないって。」
確かにこの男が言う事も満更じゃない。よく見ると質素な顔立ちをしているが、カッコいい男だ。年は20代から30代くらいだろうか。
「寒いからもう病室に戻ろう。」
「うん。」
次の日。
明菜はベッドから起き上がると、今までにない満足感に満ちていた。
あの男のお陰だった。
早速、男と話したくて、隣を見ると、既にいなくなっていた。
部屋から出て看護婦さんに聞くと、昨日は誰も入院していないと言った。
あんなに重症の患者が急にいなくなる事が可笑しいと思ったが、夢でも見たのだろうか。
病室に戻ると、窓の隙間に真っ赤な薔薇の花が一輪あった。
「ねぇ~カワイ子ちゃん。どこか遊びにいかない。」
「いかない。」
「そんなつれない事いうなよ。」街角で、アルマーニの白いシャツに黒のジャケットを羽織り、ベルサーチの革靴を履いている男がナンパをしていた。
胸ポケットには、真っ赤な薔薇が覗いていた。
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木に止まっている小鳥が鳴く中、明菜は外の景色を何かを探すかのように上の空で眺めていた。たった一人の幼い弟が目の前で交通事故で死んで心にポッカリと穴が開いたのだ。
あの時、死んだのは私の方がいいとさえ思っていた。
そんなある時、隣に頭と腕と片足に包帯を巻いた若い男が入って来た。
名前は難しい字でベッドのネームプレートに書いてあったが明菜は読むことが出来なかった。
その男は馴れ馴れしい口調で話しかけて来る。
「いやぁ~まいった。交通事故で全治3週間だってさ。しかも隣にこんなカワイ子ちゃんがいるとは、まんざら病院も悪くないね。君、名前なんていうの?」
明菜は、無視をした。全治三週間って何それ。私の弟は目の前で死んだというのに、馴れ馴れしいのもほどがあるわ。
「あれ?無視かな。それじゃ~しょうがない。テレビでも見るとするか。」100円コインを三枚入れてテレビをつけていた。
その間も、「ウフェフェ」と不気味な笑い方をしていた。
夜になり、隣の男のいびきがうるさい。苛立ちもかねて屋上に上がり、外の景色を眺める事にした。
屋上では、満月が煌びやかに輝いていた。
ここから飛び降りれば確実に死ぬだろう。いっその事死んでみようかな。
「あれれ~。カワイ子ちゃん。ここにいたんだ。何してるの?そんなおっかない顔をしてさ。」
「何?」いきなり声をかけられてビックリした。さっきいびきをかいて隣で寝ていたのに、何なのこの男は。
「やっと話してくれた。超ウレぴ~。」
「私に構わないでくれます。」
「いや。別に構っているわけじゃないんだけど、タバコを吸いに来たんだ。病院内ではいくら俺でも吸えないからさ。」男はギブスを巻いていない方で、器用にタバコをポケットから取り出して火をつけた。
男が煙をはくと満月に吸い込まれていくような感じがした。
「どうしたんだい。いつも顔をしかめてさ。今にも死にますって顔をしてさ。」
「あなたにはわからないわ。この私の気持ちなんて。」
「俺には君が何を考えて、行動しようと勝手だけどね。だけど、弟さんが天国で泣いてると思うぜ。そんな悲しい顔をしているなんて、おねぇちゃんらしくねぇってね。」
「何でそんな事。」
「さっき看護婦さん達が話してるのを少し聞いちゃってさ。心の病気がどうのこうのって。君は、体はもう治ってるってさ。後は生きる力を思い出すだけって。」
「あなたにそんな事言われる筋合いはないわ。何でそんな事いうの。」明菜は、コンクリートの上で倒れこんでメソメソと泣いた。
「ごめん。ごめん。泣かせるつもりじゃなかった。そんな落ち込んで肩を張ってたら、生きるのが嫌になっちゃうだろう。もう少しリラックスしてさ。君みたいなカワイ子ちゃんには長生きしてもらいたいしさ。恋も知らずに死んでしまったらこのおじさんが悲しむだろう。」
満月の月明かりで二人の影が寄り添っていた。
男は、ギブスの隙間から真っ赤な薔薇の花を一つ取り出した。明菜は薔薇を掴むと少しだけ笑った。
「やっと初めて笑った。女の子はそうやっていつもニコニコと笑ってなくちゃ可愛くないよ。こうやって月を見ていると、素晴らしい事じゃない。死んだら絶対見れないって。」
確かにこの男が言う事も満更じゃない。よく見ると質素な顔立ちをしているが、カッコいい男だ。年は20代から30代くらいだろうか。
「寒いからもう病室に戻ろう。」
「うん。」
次の日。
明菜はベッドから起き上がると、今までにない満足感に満ちていた。
あの男のお陰だった。
早速、男と話したくて、隣を見ると、既にいなくなっていた。
部屋から出て看護婦さんに聞くと、昨日は誰も入院していないと言った。
あんなに重症の患者が急にいなくなる事が可笑しいと思ったが、夢でも見たのだろうか。
病室に戻ると、窓の隙間に真っ赤な薔薇の花が一輪あった。
「ねぇ~カワイ子ちゃん。どこか遊びにいかない。」
「いかない。」
「そんなつれない事いうなよ。」街角で、アルマーニの白いシャツに黒のジャケットを羽織り、ベルサーチの革靴を履いている男がナンパをしていた。
胸ポケットには、真っ赤な薔薇が覗いていた。
キーボーさん、作家道まっしぐらですね、
ぞくぞくしましたよ、怖さと素敵さで。
そのかっこいい20代~30代の男って
もしかしてキーボーさんではないでしょうか。
真っ赤な薔薇がキーワード・・・。
亡くなった「弟」さん・・・
紡がれたモチーフの煌きに
貴方の生きてきた道筋を感じます・・・。
次回にも超期待してます
えっ怖かったですか?
ただ薔薇とせつなさを描きたかっただけです(笑)
たまには意味ない普通のストーリーもいいかなと思いました。
こんな物語皆さんに受け入れられるかなと思いましたけど、自分が書きたかったのですから、しょ~がな~いですね。
ルパン三世のように心盗むのは難しいかな~。
ふ~じこちゃんに聞いてみたいです(笑)