夜の街。夜になると周りの電気が明々と点きはじめ、風俗、スナック、居酒屋などの店が開き始める。
酔っ払ったサラリーマンが昼間の鬱憤を晴らす為にフラフラと店の前を歩いている。ぼんやりとした光が天国の入り口と勘違いしているのかもしれない。
ミニスカートを履いた若い女性が客寄せで店の前で呼び込みをしている。
「ねぇオジサン。遊んでいかない。」
「おじ様。いい男だね。私とどう?」虚ろな目で呼び込みをしている。その目は明日への希望を胸に抱いているのかもしれない。
さとみは、風俗で働いて3年になる。相手にした男はざっと1000人はいるだろうか。どの男も陰気で嫌な男だった。最初の頃は、思い出すたびに吐き気がしていたが、人間慣れるという事は最高にいい事だった。ゆきずりの男なんて夢の様に忘れてしまう。
現実の私は、家族を養っていかないといけない。
旦那とは別れて、今は働かない彼氏と子供を食べさせていっている。
彼氏はスロット、競馬をして、酒を毎晩飲む。
ギャンブルの調子がいい時は機嫌がいいが、負けた時は悪く、わたしに八つ当たりをする。殴られるなんて日常茶飯事だ。
私は顔だけは、商売道具だから殴らないでと言うが、今日は物凄く苛立っていたらしく顔を殴られた。
次の日、店長から「お前、顔どうしたんだ。」と聞かれた。昨日はそれほど腫れてはいなかったのだが、黒くあざになっていた。
私は「ちょっと転んじゃって。」と誤魔化して、ベロを出して惚けた。
店長は、急いで店の奥から氷を持ってきて、タオルで包んで顔を冷やしてくれた。
「いらない世話かも知れないが、あの男とは別れた方がいい。」と呟きながら、私の顔をぬぐってくれた。
「ありがとうございます。」私でもそれは嫌というほど分かっている。だけど、こんな殴る様な男でも時に優しいのだ。
店長は、やるせない目で見ていた。店長のそんな所が温かい。その後に、今日は休んだ方がいいと言った。
「私は大丈夫です。お金を持って帰らないと、また怒られるので。」
「そうか。」店長は何でもお見通しなのだ。
これから先は自分で気づくしかないと心の声が聞こえてきた。
この店に来たのはいつからだろう。店を転々としてやっと辿りついたのがこの店だった。店長は快く受け入れてくれた。父親のような温かい人だ。
そういえば父親とも喧嘩したっきりあっていない。元気だろうか。
私は、自分の為に、家族の為に頑張るしかないのだ。
今日も派手な服を着て、店の前に立って、金を持っていそうな男に声をかける。
「遊んでいかない。サービスしとくよ。」顔のあざがジンジンしたからなのか。家族の事を思ってなのか。抜け出せない夜の街の事を思ってなのか。ネオンが眩しかったからなのか。
知らず知らずに涙がほろほろりと溢れて来た。
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酔っ払ったサラリーマンが昼間の鬱憤を晴らす為にフラフラと店の前を歩いている。ぼんやりとした光が天国の入り口と勘違いしているのかもしれない。
ミニスカートを履いた若い女性が客寄せで店の前で呼び込みをしている。
「ねぇオジサン。遊んでいかない。」
「おじ様。いい男だね。私とどう?」虚ろな目で呼び込みをしている。その目は明日への希望を胸に抱いているのかもしれない。
さとみは、風俗で働いて3年になる。相手にした男はざっと1000人はいるだろうか。どの男も陰気で嫌な男だった。最初の頃は、思い出すたびに吐き気がしていたが、人間慣れるという事は最高にいい事だった。ゆきずりの男なんて夢の様に忘れてしまう。
現実の私は、家族を養っていかないといけない。
旦那とは別れて、今は働かない彼氏と子供を食べさせていっている。
彼氏はスロット、競馬をして、酒を毎晩飲む。
ギャンブルの調子がいい時は機嫌がいいが、負けた時は悪く、わたしに八つ当たりをする。殴られるなんて日常茶飯事だ。
私は顔だけは、商売道具だから殴らないでと言うが、今日は物凄く苛立っていたらしく顔を殴られた。
次の日、店長から「お前、顔どうしたんだ。」と聞かれた。昨日はそれほど腫れてはいなかったのだが、黒くあざになっていた。
私は「ちょっと転んじゃって。」と誤魔化して、ベロを出して惚けた。
店長は、急いで店の奥から氷を持ってきて、タオルで包んで顔を冷やしてくれた。
「いらない世話かも知れないが、あの男とは別れた方がいい。」と呟きながら、私の顔をぬぐってくれた。
「ありがとうございます。」私でもそれは嫌というほど分かっている。だけど、こんな殴る様な男でも時に優しいのだ。
店長は、やるせない目で見ていた。店長のそんな所が温かい。その後に、今日は休んだ方がいいと言った。
「私は大丈夫です。お金を持って帰らないと、また怒られるので。」
「そうか。」店長は何でもお見通しなのだ。
これから先は自分で気づくしかないと心の声が聞こえてきた。
この店に来たのはいつからだろう。店を転々としてやっと辿りついたのがこの店だった。店長は快く受け入れてくれた。父親のような温かい人だ。
そういえば父親とも喧嘩したっきりあっていない。元気だろうか。
私は、自分の為に、家族の為に頑張るしかないのだ。
今日も派手な服を着て、店の前に立って、金を持っていそうな男に声をかける。
「遊んでいかない。サービスしとくよ。」顔のあざがジンジンしたからなのか。家族の事を思ってなのか。抜け出せない夜の街の事を思ってなのか。ネオンが眩しかったからなのか。
知らず知らずに涙がほろほろりと溢れて来た。
涙がはらはらと流れました
キーボーさん
女心わかりすぎです
「ほろほろりと溢れました」でした