２．結婚式

　パカパカパーン。結婚式場でファンファーレが鳴り響いた。
　鉄は結婚式に呼ばれていた。友人代表でスピーチをする為だ。
　三ヶ月前くらいに高校の友人の芳樹から電話がかかってきて、結婚するからスピーチを頼むと言われてこうやって来たのだった。
　ただ問題なのは、高校の頃から好きだった瞳が芳樹の相手だということが気にかかっていた。
　芳樹もよく分かっているハズなのになぜ鉄を友人代表でスピーチをさせるのかが分からなかった。
　今でも心のどこかには、瞳を好きな気持ちがあり、中々消えなくて哀しかった。
　この恋心を打ち消すためにも友人代表でスピーチをする事を決心していた。
　ステージの中央に並ぶ芳樹と瞳を見て幸せそうだった。
　瞳は相変わらず綺麗だ。笑顔がとてもチャーミングなのだ。
　学校の校長先生の様な人が乾杯の音頭をとった後、声が美しいアナウンスの人から紹介され、鉄はステージの隅に立ち、芳樹と瞳を見ながら挨拶を始めた。
　会場に来ている客は目の前の料理に夢中になり、ガヤガヤとうるさかった。
　「私は高校の友人です。高校の頃から芳樹は、スポーツも出来て、顔もかっこいい。私とは正反対で瞳さんをものにしたのは間違いありません。」鉄が皮肉たっぷりに言ったつもりが、会場からはドッと笑いがおきた。
　笑とともにガヤガヤがおさまった。
　目の前にいる芳樹のばぁちゃんが拝んでいた。
　その姿を見て話しを続けた。
　「実は言うと、私は高校の頃、瞳さんが好きでした。明るい笑顔が大好きだったからです。芳樹から取られたのは、若さの至りで腹が立ちましたが、今二人を見ていると、本当に世界一のお似合いのカップルだと思います。これ以上にナイスカップルは見たことがありません。私と付き合わなくて本当によかったと思いました。芳樹、絶対彼女を幸せにしろよ。」
　「あぁ。分かっているよ。ありがとう。」ステージで芳樹が叫んだ。瞳も頷いて泣いて化粧が少し落ちていた。
　その間、会場は水を打ったように静かになっていたが、二人の熱い友情に土砂降りのような拍手が聞こえてきた。
　「長くなりましたが、末永くお幸せに。」深々と頭を下げて、鉄はステージを降りて席に着いた。
　鉄が一息ついていると「いいスピーチで感動しました。」と話しかけられた。振り返ると隣には絶世の美女がいた。
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