恋愛ブログ

世にも不思議な物語。
出会いの数だけドラマがある。
一日一話愛の短編物語。
〜ショートストーリー〜

9.悲しい雨

2006年06月12日 | 雨の物語
 外は雨。まるで僕の心の中をあらわしているかのようだった。憂鬱な気分が続いている。
 彼女が浮気をしているからだ。トイレに行っている間、彼女の携帯がなって着信履歴を見たら、男の名前が出ていた。
 田中タケルどこからどう見ても男の名前だ。その時は彼女に問いただす勇気もなかった。
 次の日から彼女の行動が気になって仕方なかった。田中タケルいったいどこの誰だろうか。
 今日は、友達と買物に行くから逢えないと言っていたが、誰と行くのだろうか。 僕は、気になって後をつけて行く事にした。
 彼女のマンションの近くで、張り込みをしていると、背が高い、ジャケットが似合う男が彼女の前に現れた。
 彼女は手を振った後、肩を並べて、楽しそうに会話をしていた。
 僕は、車の陰から覗き込んでいた。心の中は、どんよりとして、いつの間にか雨が降っていた。目の前の大好きな彼女が浮気をしているのだ。
 次に逢った時にこの前の男の話をしていた。
 彼女は、顔を曇らせて言った。
 「田中さんは、仕事の先輩であっていただけだよ。私の事信用してないの?」
 「信用はしているけど、何で黙ってたんだ?」
 「だって、疑われると思ったから。」
 「どっちにしたって疑うだろう。早く言えよ。」
 「分かった。これからそうする。」車の中で、彼女は口を尖らせて黙っていた。 僕も話す気にもなれず黙っていた。窓のウィンドウを開けて、外を眺めていた。マンションの近くを犬が群れで通っていた。
 一時すると彼女が、「怒った?」と聞いて来て、僕が更に黙っていると、彼女が覆いかぶさるようにキスをした。
 「おい。やめろよ。みんなが見てるだろ。」
 「見てたっていいよ。仲直りしようよ。田中さんとは、逢わないから。」
 「分かった。絶対逢わない約束だからな。」僕達は、車の中で何度かキスをした後、約束していた映画を見に行った。映画を見ている時も、気になっていた。
 さっきのキスの感覚がいつもと違う気がしていた。隣の彼女を見ると目を輝かせて、映画を見ていた。僕が彼女の手を静かに握ろうとすると手を引っ込めた。
 確かに、彼女の瞳には陰気で嫌な男の影が見えた。

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