何をしても彼女の事で頭が一杯だ。
本を読んでいる時も、映画を見ている時も、友達と遊んでいる時も、ご飯を食べている時も、トイレに行っている時も、彼女の姿を思い出して行動が出来なくなってしまう。
たえ間なくため息が口から出てくる。彼女の笑顔が目の前に現れ、何か囁いてため息と共に消えていく。
彼女の姿を思い出すと、せつなくて、苦しくて、わーと叫びたくなるような気持ちになってしまう。
本当に胸が苦しくて、死んでしまいそうだ。
恋する男って誰でもこんな感じなのだろうか。
「おはようございます。」会社で同期の女性ナナコに恋をしていた。
「うむ。おはよう。」彼女から先に挨拶されて、緊張して偉そうに答えてしまった。嫌われたかなと思うと、涙がこぼれそうになってしまった。
彼女とは会社で席が隣だった。彼女が挨拶をすますといつものように取引先に電話をしていた。
電話に出ている姿を見ていると、天国にいるような雲の上にいるような気持ちになる。声が小鳥のさえずりのように聞こえてくるのだ。きっと青い鳥だなと思った。一度でいいから好きですと耳元で囁いて欲しいと想像していた。
「稲村さん。何にやついているの?」目の前の席のサチコから言われてしまった。サチコも同期だが、少し痩せていて、いいたい事をすぐに言うタイプだが、名前の通り幸が薄い所もある。
「いや。別に。」苦笑いを浮かべた。
「どうせナナコの事を考えてたんでしょう。」
「何をバカな事を。」いきなり言われて驚いた。サチコは私がナナコを好きな事を気付いているのかもしれない。女の感は鋭いから。
「あら。私稲村さんだったらいつでもオッケイしちゃいますよ。」会話を聞いていたナナコが話に入って来て、意味深な笑みを浮かべていた。私は何か騙されているような気持ちになって、すぐに喜ぶ事が出来なかった。
「なんだ。つまんないの。」サチコは話に飽きると、書類をもってコピー室の所へ行っていた。
私は、ナナコが言った言葉をもう一度整理していた。
稲村さんだったらいつでもオッケイしちゃいますよ。オッケイって何の事なのか。ご飯誘ったらオッケイなのか。ホテルに誘ったらオッケイなのか。付き合ってくれるのオッケイなのか。これって、両思いじゃないんだろうかと考えていた。
また、にやついていたら、今度は課長から怒られてしまった。
会社の終わりのチャイムがなり、課長が急いで帰っていった。隣のナナコも机を整理して帰ろうとしている。
私もコートを羽織って帰る準備をしていた。
「お疲れ様でした。」ナナコが帰っている同僚に愛想よく挨拶をしていた。私もその後に続けるように挨拶をした。挨拶が一通り終わって私と目があったので、話しかけた。
「仕事お疲れ様。これから暇?暇ならご飯食べに行かない?」私はどうしてもさっきの質問の真相が気になり、いてもたってもいられなくてナナコに聞いた。
「私は暇ですよ。」ナナコが答える前に、前の席のひょろ長い顔を近づけて、サチコが先に大声で答えた。
「えっ。サチコは暇なの?」私は戸惑って苦笑いを浮かべた。サチコは何を言い出すのか。せっかくナナコを誘ったのに邪魔をするんじゃないよと思った。
「それじゃ。三人で行きましょうよ。」ナナコがサチコとのやり取りを聞いて、元気よく美しい声で答えた。
「決まりだね。三人で行こう。」私は、うれしくて声が裏返ってしまった。ナナコは本当に気が利いて、愛想もいいんだよね。ますます好きになっていた。それに比べて、サチコは何を考えているのか。私達の恋路の邪魔をしているのか。
居酒屋までの道のりを三人で歩いていた。通りはにぎやかで、仕事帰りのサラリーマンや呼び込みのおじさん達が前を歩いていた。
私の少し後ろにはナナコがいる。ナナコとサチコが何か話していた。聞きたかったが、タクシーのクラクションの音でかき消されてしまった。ナナコが近くにいて一緒に歩いているかと思うと、胸が躍るような気持ちで一杯になった。今だったら何でも出来ると思った。
一時歩いていると、居酒屋があったのでここにしようと言って、店の中に入った。
「いらっしゃいませ。」威勢のいい声が聞こえてきた。私達は、店の奥の和式の部屋に案内された。店内では、八代亜紀の演歌が流れていた。
靴を脱いで、前の席にナナコとサチコが座った。私もコートを脱いで座り、お絞りで手を拭いた。
「この店結構いい感じだね。」私が室内を見渡して言うとナナコが頷いていた。
「まぁまぁかな。」サチコが私の顔を見て、嫌みを言った。お前は何をしに来たんだよと心の中で叫んでいた。本当に邪魔だけはしないでくれと神様に祈った。
「それよりも頼みましょうよ。」ナナコがメニューを取り出して、一枚私にくれた。その後になんにしようかなと呟いて、サチコと相談していた。
私はその姿に見入ってしまった。指を指しながらメニューを見ているナナコにうっとりとしてしまった。そこだけ空間が切り取られて、高級な料亭にいるみたいだった。
メニューが決まると私達は店の人を呼んだ。アフロヘアーが目立つ男の店員が愛想よくメニューを聞いて、私達がそれぞれ言うと店の中に戻っていった。
「アフロかっこよかったね。」アフロが帰った後、ナナコがサチコに言った。私は、あんな男のどこがいいのか分からなかったが、あんな感じの男が好きなのかと思うと悲しい気持ちでイラついていた。
「やっぱり、若いっていいよね。色々出来るし、社会人になったらなんにも出来なくなるから。」
「そうだよね。」二人の会話を聞いていた。アフロがいいというわけじゃなく、アフロに出来る事にカッコイイと言ったのかもしれない。その会話を聞いてうれしくなった。
話し込んでいると、頼んだビールが来て、三人で乾杯をした。
それから、仕事の話や世間話をして盛り上がった。私は酒があんまり強い方ではなく、ビールを三杯飲んで眠気が襲ってきた。ナナコとサチコがわいわい騒いでいるのを見て、いつの間にか眠っていた。
本を読んでいる時も、映画を見ている時も、友達と遊んでいる時も、ご飯を食べている時も、トイレに行っている時も、彼女の姿を思い出して行動が出来なくなってしまう。
たえ間なくため息が口から出てくる。彼女の笑顔が目の前に現れ、何か囁いてため息と共に消えていく。
彼女の姿を思い出すと、せつなくて、苦しくて、わーと叫びたくなるような気持ちになってしまう。
本当に胸が苦しくて、死んでしまいそうだ。
恋する男って誰でもこんな感じなのだろうか。
「おはようございます。」会社で同期の女性ナナコに恋をしていた。
「うむ。おはよう。」彼女から先に挨拶されて、緊張して偉そうに答えてしまった。嫌われたかなと思うと、涙がこぼれそうになってしまった。
彼女とは会社で席が隣だった。彼女が挨拶をすますといつものように取引先に電話をしていた。
電話に出ている姿を見ていると、天国にいるような雲の上にいるような気持ちになる。声が小鳥のさえずりのように聞こえてくるのだ。きっと青い鳥だなと思った。一度でいいから好きですと耳元で囁いて欲しいと想像していた。
「稲村さん。何にやついているの?」目の前の席のサチコから言われてしまった。サチコも同期だが、少し痩せていて、いいたい事をすぐに言うタイプだが、名前の通り幸が薄い所もある。
「いや。別に。」苦笑いを浮かべた。
「どうせナナコの事を考えてたんでしょう。」
「何をバカな事を。」いきなり言われて驚いた。サチコは私がナナコを好きな事を気付いているのかもしれない。女の感は鋭いから。
「あら。私稲村さんだったらいつでもオッケイしちゃいますよ。」会話を聞いていたナナコが話に入って来て、意味深な笑みを浮かべていた。私は何か騙されているような気持ちになって、すぐに喜ぶ事が出来なかった。
「なんだ。つまんないの。」サチコは話に飽きると、書類をもってコピー室の所へ行っていた。
私は、ナナコが言った言葉をもう一度整理していた。
稲村さんだったらいつでもオッケイしちゃいますよ。オッケイって何の事なのか。ご飯誘ったらオッケイなのか。ホテルに誘ったらオッケイなのか。付き合ってくれるのオッケイなのか。これって、両思いじゃないんだろうかと考えていた。
また、にやついていたら、今度は課長から怒られてしまった。
会社の終わりのチャイムがなり、課長が急いで帰っていった。隣のナナコも机を整理して帰ろうとしている。
私もコートを羽織って帰る準備をしていた。
「お疲れ様でした。」ナナコが帰っている同僚に愛想よく挨拶をしていた。私もその後に続けるように挨拶をした。挨拶が一通り終わって私と目があったので、話しかけた。
「仕事お疲れ様。これから暇?暇ならご飯食べに行かない?」私はどうしてもさっきの質問の真相が気になり、いてもたってもいられなくてナナコに聞いた。
「私は暇ですよ。」ナナコが答える前に、前の席のひょろ長い顔を近づけて、サチコが先に大声で答えた。
「えっ。サチコは暇なの?」私は戸惑って苦笑いを浮かべた。サチコは何を言い出すのか。せっかくナナコを誘ったのに邪魔をするんじゃないよと思った。
「それじゃ。三人で行きましょうよ。」ナナコがサチコとのやり取りを聞いて、元気よく美しい声で答えた。
「決まりだね。三人で行こう。」私は、うれしくて声が裏返ってしまった。ナナコは本当に気が利いて、愛想もいいんだよね。ますます好きになっていた。それに比べて、サチコは何を考えているのか。私達の恋路の邪魔をしているのか。
居酒屋までの道のりを三人で歩いていた。通りはにぎやかで、仕事帰りのサラリーマンや呼び込みのおじさん達が前を歩いていた。
私の少し後ろにはナナコがいる。ナナコとサチコが何か話していた。聞きたかったが、タクシーのクラクションの音でかき消されてしまった。ナナコが近くにいて一緒に歩いているかと思うと、胸が躍るような気持ちで一杯になった。今だったら何でも出来ると思った。
一時歩いていると、居酒屋があったのでここにしようと言って、店の中に入った。
「いらっしゃいませ。」威勢のいい声が聞こえてきた。私達は、店の奥の和式の部屋に案内された。店内では、八代亜紀の演歌が流れていた。
靴を脱いで、前の席にナナコとサチコが座った。私もコートを脱いで座り、お絞りで手を拭いた。
「この店結構いい感じだね。」私が室内を見渡して言うとナナコが頷いていた。
「まぁまぁかな。」サチコが私の顔を見て、嫌みを言った。お前は何をしに来たんだよと心の中で叫んでいた。本当に邪魔だけはしないでくれと神様に祈った。
「それよりも頼みましょうよ。」ナナコがメニューを取り出して、一枚私にくれた。その後になんにしようかなと呟いて、サチコと相談していた。
私はその姿に見入ってしまった。指を指しながらメニューを見ているナナコにうっとりとしてしまった。そこだけ空間が切り取られて、高級な料亭にいるみたいだった。
メニューが決まると私達は店の人を呼んだ。アフロヘアーが目立つ男の店員が愛想よくメニューを聞いて、私達がそれぞれ言うと店の中に戻っていった。
「アフロかっこよかったね。」アフロが帰った後、ナナコがサチコに言った。私は、あんな男のどこがいいのか分からなかったが、あんな感じの男が好きなのかと思うと悲しい気持ちでイラついていた。
「やっぱり、若いっていいよね。色々出来るし、社会人になったらなんにも出来なくなるから。」
「そうだよね。」二人の会話を聞いていた。アフロがいいというわけじゃなく、アフロに出来る事にカッコイイと言ったのかもしれない。その会話を聞いてうれしくなった。
話し込んでいると、頼んだビールが来て、三人で乾杯をした。
それから、仕事の話や世間話をして盛り上がった。私は酒があんまり強い方ではなく、ビールを三杯飲んで眠気が襲ってきた。ナナコとサチコがわいわい騒いでいるのを見て、いつの間にか眠っていた。
私も片思いのとき、こんな感じでした・・・上司に怒られることはなかったですけど^^; 好きな人がいると何も手につかなくなってきちゃって、大変です。男の人もそうなんですね!!
二人がどうなるのか、たのしみです♪