タイ政府は先日、タイ国際航空を破産法に基づき会社更生手続き開始とする事を閣議決定しましたが、
今後6,000人規模の人員削減が必要になることを明らかにしました。
現在までに特定の機種への言及はありませんが、
世界的に4発機を早期退役させる計画が進行していることから
B747なども候補となっていることが考えられます。
タイ国際航空は
タイ国際航空は
エアバスA380 6機保有しています
下記 TUA〜TUF
どうなるのでしょうか?
B747やA380が早期退役対象になることも考えられます
運航再開時にはA380 の運航を期待です
タイ国際航空 Airbus A380 (HS-TUA)
タイ国際航空 Airbus A380 (HS-TUB)
タイ国際航空 Airbus A380 (HS-TUC)
タイ国際航空 Airbus A380 (HS-TUD)
タイ国際航空 Airbus A380 (HS-TUE)
タイ国際航空 Airbus A380 (HS-TUF)
A380の早期退役或いは運休を表明しているエアラインも数社ある
タイ現地からの報道
タイ航空、破綻招いた放漫と利権 新型コロナで国民の怒り頂点に日経ビジネス飯山 辰之介バンコク支局長2020年5月21日新型コロナウイルスの感染拡大と、これを封じ込めるために各国が取った封鎖措置により、人々は国境を越えて移動することが困難になった。そのあおりを受けた航空産業が危機に直面している。既に世界では民間の航空会社を中心に破綻が相次ぎつつあるが、淘汰の波はついに政府系のナショナル・フラッグ・キャリアにも押し寄せた。
5月19日、タイ政府は51%の株式を保有するタイ国際航空について、破産法に基づく会社更生手続きを裁判所に申し立てることを決めた。旅客需要の急減に耐えることができず、タイ航空の資金繰りが急速に行き詰まったためだ。旅客需要の急減によりタイ国際航空は実質的な破綻に至った(写真:AP/アフロ)
アジア太平洋地域では4月に民営のヴァージン・オーストラリア航空が破綻し、同月の現地報道によれば、ベトナム航空は保有するカンボジア・アンコール航空の49%の株式を中国系企業に売却した。そして今回、タイ航空の法的整理により、政府系航空会社も新型コロナによる再編や淘汰から免れないことが明らかとなった。
「航空産業が危機を乗り越えるのに少なくとも2~3年はかかる」。タイ大手銀、カシコン銀行傘下のカシコン・リサーチ・センターで航空産業に詳しいシワット・マネージングディレクター代理はこう指摘する。
今年中に新型コロナの感染が収束に向かったとしても、航空産業は人の移動の停滞や感染防止策の徹底といった、いわゆるニューノーマルに対応せざるを得ない。その結果、「事業展開にかかるコストは増加する」とシワット氏は見る。体力に乏しい航空会社を中心に、再編・淘汰の波が拡大していく恐れがある。
政府の救済に反発の声
もっとも、今回のタイ航空破綻の原因を、新型コロナによる旅客需要の急減という事業環境の変化だけに求めることはできない。そこに至った経緯を追うと、別の問題が見えてくる。
経営危機に直面したタイ航空は当初、運転資金を確保するため政府に540億バーツ(約1800億円)のつなぎ融資を求めた。政府も約2万1000人の従業員の30~40%を削減するといった再建計画の実施と引き換えに、これに応じる姿勢を示していた。
一方、政府のタイ航空救済に対する国民の反発は大きかった。
「タイの多くの人にとって旅行はぜいたくなもの。大半がタイ航空など使ったこともないのに、なぜ自分たちの税金が救済に使われないといけないのか」「これは国民を救うのではなくて、一部の特権的な地位にある人々を救うだけだ」──。こうした批判のコメントがSNS(交流サイト)上には並んだ。あるバンコクの会社員も「自分の税金をタイ航空には回して欲しくない」と拒否反応を示している。
放漫経営が招いた危機
なぜ反発の声が広がったのか。タイ航空は2019年12月期までに3期連続で最終赤字を計上しており、慢性的な経営不振が続いていた。負債資本倍率(DEレシオ)は17年12月末の5倍から19年には12.5倍に高まっている。急速に台頭した格安航空会社(LCC)が仕掛ける価格競争に巻き込まれたことが不振の理由の一つではある。ただ最大の問題は同社の放漫経営と、これを見過ごしてきた政府にあるとの見方が強い。
「長い間、汚職とネポティズム(縁故主義)がまん延してきた国営企業」。タイ英字紙バンコク・ポストはタイ航空をこう痛烈に批判している。同紙によれば、タイ航空は軍や官僚の主要な天下り先の一つで、経営幹部の多くは財務省と運輸省に影響力を持つ一部政治家により選ばれてきたという。実際、現在の会長と副会長は空軍出身者と財務省出身者で占められ、彼らを含む8人の取締役会メンバーのほとんどが政府や軍、国営企業との関係が深い人物で占められている。
経営に精通しているとは言えない幹部の下、タイ航空には「利益誘導型の文化がはびこり、一部の特権的な人々が同社を搾取してきた」ともバンコク・ポストは指摘している。英ロールス・ロイス社からの航空機エンジン調達をめぐり、1991年から2005年の間、複数回にわたって巨額の資金がタイ航空や当局関係者に渡っていたというスキャンダルも報道されている。
醜聞はこれだけにとどまらない。タイ語メディアのターンセッタキック紙などによれば、タイ航空は大部分のチケットを自ら販売することができず、政治家や軍と癒着した代理店にその業務を独占されていた。政府に所属する政策アナリストや航空業界の関係者によれば、政府や軍の高官とその家族は無料でタイ航空を利用できたという。タイ語メディアのワークポイントニュースによれば、所得税の補填、医療費や子どもの教育費に対する補助が一部あるなど、一般企業に比べ従業員の待遇も手厚かった。
「業績を立て直す力も意思もないが、潰れもしない会社」。ある航空業界に詳しい関係者はかつて、タイ航空をあきれ顔にこう表現していた。放漫経営を改めない限り、タイ航空が激化する競争に勝つ見込みはない。だが軍や有力政治家をはじめとした既得権層との関係が深く、しがらみだらけの国営企業であることから、政府は抜本的な対策を打てない。そして手をこまぬいているうちに、新型コロナ危機がやってきた。
タイ航空は誰のためのものか
社会が平穏であれば、政府のタイ航空に対する公的支援は批判に晒されつつも実現していたかもしれない。だが新型コロナに苦しむ国民はこれを許さなかった。
多くの人々が新型コロナにより経済的な打撃を受けている。タイ政府は3月、失業者300万人に対し1カ月あたり5000バーツを支給する取り組みを始めたが、希望者が殺到し、後に対象を1600万人まで拡大することを迫られた。もっとも、バンコク・ポストによればタイには生活が不安定な非正規部門の労働者が2000万人以上いるという。
新型コロナで失業し、生活が立ち行かなくなっている人がどれほどいるのか、実態は分からない。政府の支援の手は行き届いてはおらず、タイ国家経済社会開発委員会(NESDC)が4月半ばに全国約9000人に対して実施した調査によれば、9割が政府からいずれの支援も受けていないと答えている。
多くの人が経済的な打撃を受け困窮しているのに、なぜ放漫経営を続けたタイ航空が救われなければならないのか。タイ航空の関係者や株主など「一部の特権的なグループを助けようとしているとの批判の声が高まった」(上述の政府所属の政策アナリスト)。タイ航空の労働組合が人員削減や分社化、民営化を伴う再建策について反対の姿勢を示したことも人々の怒りを買った。
労組をはじめとするタイ航空関係者の反対姿勢により再建策は固まらず、一方で巨額の公的支援に対して国民からは強い反発を受ける。政府は方針を変えることを余儀なくされ、公的支援を実施せず裁判所への更生手続きの申請を決めざるを得なかった。
タイ航空破綻の引き金になったのが新型コロナであることは明らかだ。ただ新型コロナはタイ航空の経営問題を浮かび上がらせるだけでなく、タイに根強く残る社会的・経済的な格差や、特権的な階層に対して一般の人々が抱える強い不満もあらわにした。
危機に直面してなお、特権的な人々が利益を享受し続ける仕組みを政府が温存しようとしたことに国民は怒り、それがタイ航空を破綻に向かわせたと見ることはできるだろう。プラユット首相は会見で「タイ航空は我が国の繁栄を支えるために存在している」と話した。だが多くの人は「一部の人々の繁栄を約束するために存在していた」と見ている。
裁判所の管理の下でタイ航空は再建を模索する。債務の返済は停止され、政府は保有比率を50%以下にする計画だ。ただカシコン・リサーチ・センターのシワット氏によれば、株の売却はわずかにとどまり、政府は依然としてタイ航空の大株主であり続けるという。「結局のところ体制は大きくは変わらず、古くからある構造的な問題を解決するのは難しいのではないか」と同氏は危惧している。裁判所の管理の下でも抜本的な再建策を打ち出せず、一部の人々が得をする体質が残るようであれば、国民の怒りは収まらないだろう。
夕方便の思い出シーン