iPhone13出足低調、販売「12」の6割弱 品薄響く
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24日で発売から1カ月となった米アップルの新型スマートフォン「iPhone13」の出足が国内で低調だ。調査会社のBCN(東京・千代田)によると、累計販売台数は2020年発売の12シリーズの57%にとどまる。機能面での目新しさが少ないうえ、部品不足などで生産が間に合わず、手元に届くまで1カ月以上かかるケースが多い。入手困難な新品に代わり、足元では割安な中古品の流通も活発になっている。
BCNがビックカメラやエディオン、アマゾンジャパン(東京・目黒)など、全国の主要家電量販店やECサイトのPOS(販売時点情報管理)データを基に集計した。12シリーズ4機種の発売1週間の合計販売台数を「100」とすると、13シリーズ4機種の発売1週間(9月24~30日)の販売は55にとどまった。9月24日~10月21日の4週間合計値は126で、12シリーズの実績値より43%少なかった。
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12から大幅に減った原因について、BCNの森英二アナリストは「13シリーズの商品が不足していることが影響しているのでは」と話す。大手家電量販店のサイト上では「在庫なし」などと表示される商品が多く、アップルの直販サイトも25日現在、高機能品の「Pro」と「ProMax」は1カ月先まで入手できない。
「在庫は枯渇し、11月以降の入荷のメドもたっていない」。ある携帯販売代理店の幹部は嘆く。新型iPhone発売直後は、毎年他社から顧客を獲得する好機だが、今年は「客の3割近くは入荷待ちを理由に購入に踏み切らない。販売機会を逃している」
店頭での品薄は、カメラ部品や半導体不足など、供給面の問題が原因とみられる。BCNのデータに予約は含まないため、今後の状況次第で12シリーズの実績値との差が縮まる可能性はある。ただ、広告宣伝を強化する発売直後の出遅れは、大きな売り逃しにつながる懸念もある。
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アップルは通常のiPhone13に加え、小型の「mini」、高機能の「Pro」「Pro Max」の計4機種を発売した。13はカメラ機能が12から向上したものの、基本性能は踏襲した部分が多く、目新しさに欠くとの声も多い。価格も年々高価格になっている。直販で8万6800~19万4800円と、10年前から2~3倍に上昇。NTTドコモなど通信会社経由で購入するとさらに割高になる。
割安な中古iPhoneの取引は活発に
iPhoneは国内スマホ市場で出荷の半数を占め、愛好者も多い。品薄や高価格化で新製品が手に入りにくくなるなか、過去に発売したモデルや割安な中古品の取引が活発になっている。
東京・秋葉原の中古店「イオシス アキバ中央通店」では、9月下旬の13発売前からiPhone買い取りの依頼が増えた。発売後1カ月の売買数は昨年の12発売後より4割多い。副店長の宮田智広さんによると、「13への買い替えを検討していたが、魅力が少ないので12を中古で安く買うような客も多い」という。
消費者の多くはこれまで通信契約とセットで新しい端末を購入していた。政府は通信料の高止まりにつながるとして、解約時の違約金の撤廃を通信会社に求めるなど、消費者が通信会社を乗り換えやすい仕組みを整えてきた。消費者は通信会社に縛られず、割安な中古スマホを選んで購入しやすくなった。
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大手量販店のソフマップでは中古iPhoneの売上高は5年前から7割、前年比でも3割増えた。個人向けでは18年発売の「XS」「XR」、法人向けでは17年発売の「8」シリーズが人気という。同社は「特に若い年代を中心に3~4年前のスマホでも気にせず買う人が増えたことで、中古品の流通量が増加し、販売価格も以前より下がっている」と話す。
MM総研によると、20年度の中古スマホ販売台数は前年度比13%増の185万台と過去最高だった。25年度には268万台とさらに45%増える見通しだ。国内でシェアが高いiPhoneの新品購入をためらう人が増えれば、結果的に中古取引の拡大が加速しそうだ。
(伴正春、平岡大輝、湯浅太周)
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