《本記事のポイント》
- コロナ死39人から6万人へ──中国疾病予防管理センターの怪しい数字訂正
- 上海市火葬数から推定される異常なコロナ死数
- 北京大学や海外調査会社が大きなコロナ死者数を算出するも実態には及ばない?
よく知られているように、中国共産党の発表する数字には、しばしば粉飾がほどこされている。
コロナ死39人から6万人へ──中国疾病予防管理センターの怪しい数字訂正
例えば、2023年1月14日、中国疾病予防管理センターは、北京大学の報告を引用し、12月7日から1月11日までの全国コロナ感染率は約9億人(約64%)で、感染による死亡者数は6万人弱(正確には、5万9938人)だと公表した(*1)。
それ以前、同センターは、2022年12月7日から2023年1月8日までコロナ死を39人と発表していた。それが数日間で、突然39人から6万人弱と、数字を大幅に訂正している。中国当局の数字がいかに信憑性に欠けるかを示す証左ではないだろうか。
また同センターは、コロナ罹患での死亡率はわずか0.003%だというが、これはすべて病院での死亡である。つまり家でコロナ死した人はカウントされていない(一説には、習近平政権が医師にコロナで亡くなったという死亡診断書を書かせないという)。
実は、過去7日間における香港のコロナによる平均死亡者数は1日67.3人、平均死亡率は0.676%である。この数字は、中国本土の死亡率より200倍以上も高い。
一般的に、香港の方が中国よりも医療体制が整っているはずである。それにもかかわらず、中国の死亡率が香港と比べて異様に低い。やはり中国当局の数字には大きな疑問符が付くだろう。
上海市火葬数から推定される異常なコロナ死数
さて、上海市のある葬儀社では、ご遺体が毎日約400~500体焼却されたが、そのほとんどがコロナ死だったという(以前は1日最大90体までだった)。
仮に、1日のご遺体焼却を(自然死[老衰、病死、事故死等]を除き)300体とすると、1カ月に最低約9000体となる。上海市には合計15軒の葬儀社があるので、(自然死を除く)13万5000体となるだろう。
他方、北京市内の火葬場(北京市周辺[同市を取り囲む河北省等]の葬儀場は除く)だけで36日間に12万9600体が火葬されたという。
ちなみに、北京市の全葬儀社の1日の火葬能力は3600体である。そして、自然死の死亡者数は1日平均約330人だという。ならば、コロナ死のご遺体は1日約3270体だと推計できよう。すると、1カ月当たり、コロナ死で約9万8100体が焼却されている。
上海市(人口約2489万人[2021年])と北京市(人口約2189万人[同])の人口合計はおよそ4700万人である。中国全体の人口が13億人~14億人とすれば、両市の約28~30倍という計算になるだろう。
仮に、両市合計でコロナ死が1カ月で約23.3万人とすると、全国ではおよそ652万人~699万人が死亡した可能性がある。
北京大学や海外調査会社が大きなコロナ死者数を算出するも実態には及ばない?
次に、北京大学が発表した訃報の件数をここ3年で比較してみよう。例えば、昨年12月には一昨年の8件から4倍程度(約32件)増加している(*2)。
ネット上で拡散されている北京大学発表の訃報件数の推移グラフ。
中国では年間1000万人余りの高齢者・病人等が自然死する。月平均83万人余りが死亡する計算となるだろう。
けれども、現在の疫病蔓延下では、昨年12月だけで、例年の3倍の約249万人がコロナ死したと推測できる(今年1月が昨年12月と同じような厳しい状況にあるとすれば、たった2カ月で500万人近くが死亡した計算となるだろう)。
前述の通り、上海市と北京市、両市葬儀社から求めたコロナ死者数と、北京大学の訃報から求めたコロナ死者数では大きな相違がある。おそらく、前者の方が、今の真相に近いのではないだろうか。
ところで最近、英国の調査会社、エアニフティは、昨年12月1日以降、中国での累積死亡者数は10万人に達し、感染者数は1860万人に達する公算が大きいと発表している(*3)。
同社は、中国のコロナ感染は1月13日に最初のピークを迎え、1日当たり370万件に達すると予想した。また、1月23日、1日当たり2万5000人の死亡でピークを迎え、12月からの累積死亡者数は58万4000人に達すると推計している。そして、4月末までに中国全土で170万人のコロナ死を推測した。
しかし、同社の予測は実態とは遥かにかけ離れているのではないだろうか。
(*1) 1月14日付中国瞭望
(*2) 1月7日付中国瞭望
(*3) 2022年12月30日付ロイター