ほつれる/加藤拓也監督
結婚はしているが、友人の友人という男性と気が合うようになり(彼も既婚者)頻繁に会うようになる。おそらく不倫関係なのだろう。ともかく彼とはお互いに気が合う関係で、また会う約束をするが、別れたすぐ後に事故に遭って、その彼氏はあっさり死んでしまう。救急車をとっさに呼ぶのだが、自分との関係を気にして、電話は切ってしまう。激しいショックと心残りがあり、さらに夫との会話もよく聞いてない状態になり、日を置いて、死んだ彼氏の墓参りに友人といく。しかしその日は、夫と新居を見に行く約束をしていたのを忘れていたのだった……。
状況は分かりやすいが、なんとなく行動がちぐはぐで、いったい本当に何をしたいのか分からない。夫との関係に不満があるのだが、しかし彼氏との恋愛は本物だったのだろうか。不倫だから付き合っていたようなふしもあって、相手もおそらくそんな感じだったのかもしれない。墓参りに行った際、彼氏の父親もそこにいて、後になんとなく関係も分かってしまう。そういう事にはガードが甘い。だから結局彼の妻とも会うことになる。それだからどうだという話でもなくて、最終的には夫との対話次第ということなのだろうか。
そうやって観ているうちに、あれ、ッと思ったら終わっていた。短い映画は大歓迎だけど、まあ、説明的にはあっけないのである。夫婦間の不満の映画だったともいえるし、不幸な男女のすれ違いだともいえる。夫との会話は終始不快感があるし、不倫を疑っている夫が嫌なことを言うのは当たり前である。しかし逆切れして嘘をつく。当たり散らす相手が違うのではあるまいか。まあ、そういうものかもしれないけれど……。
教訓として、交通事故は気を付けましょう、という映画ではない。しかし、そういう唐突感から取り残されてしまうと、結果的にそういう喪失感も、このような漠然としたものになってしまうのだろうか。事故の場面には居たわけで、この初期行動からすでに、僕には違和感があったとしか言いようがない。ふつうはやっぱり駆け寄って、状況をもっと確認するのではあるまいか。ヤバいから逃げたのなら、やっぱりその後も逃げ続けるのではないか。
もちろん、それも見方次第だろう。ちょっと不思議な雰囲気もあるので、そういうものを楽しむ物語だったのかもしれない。