ザ・ホエール/ダーレン・アロノフスキー監督
極度の肥満症のため歩行器などを使ってしか移動ができない体になってしまった男いて、しかし東洋系の看護婦が世話をしてくれたりして、なかなかにモテる様子だ(この人は、元恋人の妹だったのだそうだ。なるほど)。ウェブで文章指導の講師をしていて、糊口をしのいでいる。男には何か問題があって引きこもりに至った訳だが、ある日疎遠になっていた娘が訪ねてきて、一方的に罵倒されるなどするが、その関係を修復しようと努力するものの、肥満のために病状が悪化しており、残りの寿命が短くなってもいるのだった。
非常に評価の高い作品なのだが、結論を先にいうと、まあ、実際はたいしたことのない愚作である。それらしい雰囲気を持っていることと、実際の肥満男を演じている俳優の社会問題などが絡んでいて、それを周りの人間が持ち上げたために作品自体を見誤ってしまう結果になったのだろう。まじめに映画を観る目があれば、どうってことのない甘えた作品なのである。アメリカは病んでいる、とは言えることかもしれないが。
さらに、それでも努力はしていて、精神的な痛手があるがために、うまく行かずに食べ続けなければならない、ということになっている。特殊メイクがあるのだろうと思われるが、病的に太りすぎているので、本当にその姿が痛ましい。それは映画的な狙いだが、同時にそれが見にくいがために見誤ることも想定しているわけだ。そうして家族は実際にこの男のことを理解していない。彼は滅びの道を歩む以外に方法を持たないのだ。
要するにそういうところが甘えだと思うが、病気なら仕方がないということになるのだろうか。僕には元奥さんが悪いようにしか見えないが、現実には俳優にはセクハラが悪いということのようだ。それは後にネットで知ったことだが、だからそういうのは映画的には、少し関係のない話である。残念だがアメリカのゴシップを肌で知っていないことには、この素晴らしさには到達できないのかもしれない。