カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

スープを飲んだ思い出

2024-11-19 | 

 ある映画を観ていたら、一定の食事のシーンが度々出てくるのだが、彼らが集っての食事の風景に、よくスープを飲んでいたのだ。スープなんて僕らだって飲むのは間違いない事だが、特にかしこまった食事の風景でもないのに、スープを飲んで話をしたりする。いわゆる平べったい感じのスープの皿に、具材までははっきりとわからないが、豆か何かを一緒に煮たような、液体のものをスプーンでしきりにすくって食べている。時々パンをちぎって食べたりもしているようだが、主にスープを食べる時は、忙しくスプーンを口に運んでいる。さらに金属のスプーンがこすれるように当たる音はするが、基本的にすする音は無いし、ちょっとだけ口をもぐもぐさせてもいるくらいで、黙々とスープをすする食事をしている。おそらくは昼食で、スープのほかにはパンとかチーズがあるんだろうか。たまに大鍋のようなものから、スープを継ぎ足している者もいるように見える。まさに日常の食事の風景で、彼らは日常で昼間にスープを飲んでいるようなのだ。
 僕がまだ小学校に上がる前のことだと思うのだが、それというのもその絵本を読んでくれたのが他でもなく母であった。僕はまだ字を読めなかったのだ。そうしてその絵本でも、熊の親子が、一緒にスープを飲むのだった。熊の子供は何度でも母熊にスープをねだり、そうしてスプーンを使ってスープを頂くのだ。僕はその場面が大好きだった。
 しかし翌朝になって僕らが食べるスープは、他でもなく味噌汁で、スプーンを使って食べることはしない。僕は箸を使うのはそこまで得意ではなかったけれど、朝ご飯は箸で食べていたのではなかろうか。幼稚園だか小学校だったのか記憶がはっきりしないが、学校の給食で、いわゆる先割れスプーンを初めて見て、そうして多くのおかずはそのスプーンを使って食べることになって、なんだかとても不思議な気分になったものだ。とにかくわざわざ使いにくい道具を使って食事をする訓練をする。いちおう給食は楽しく食べようということになっていて、それにその頃は特に何を食べても文句は無かったが、甘いジャムと変な味で中途半端に柔らかいパンをちぎりながら食べ、先割れスプーンで特にスープとは限らないおかずを食べる。食後には肝油なんかをつまんで、牛乳で流し込むのだ。お代わりをすると女の先生が喜ぶのでそうしていたが、特に本当に腹が満たされていなかった訳ではないように思う。たいして美味しくない食事でも、子供だから食べられたのだ。
 僕は絵本に出てくるようなスープを食べたいと、母親にせがんだかもしれない。後にクノールスープのようなものが売り出される前のことで、おそらくだが鶏のだしをとったものに、ベーコンか何かを刻んだものが入っていたり、ジャガイモが入っているようなスープだったと思う。僕はこれを夢中で食べたものだ。いっぱい食べてもあんまり腹が膨れなくて、しかし鶏の出汁のきいたスープは飽きることが無い。僕はその時はすっかり子熊の気分になって、たくさんのスープを啜ったのだった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする