AWA@TELL まいにち

南山大学で、日本語教育に携わる人材の養成を行っています。ホームページも是非ご覧ください。

情報弱者

2011年03月20日 | 日本語教育
神戸の震災のときは、ちょうど博士課程受験の時期で、大変な状況になっていた神戸の街を広島大学受験のために歩いて横断しました。

あの風景を、自分の目で見ることができていたことを、今、改めて感謝しています。

東北を襲った地震と津波、神戸のそれとは性質の違うものですが、テレビの画面を通してみるだけではなく、自分の目で、耳で、そして花で、足の裏で感じたことを思い出すのです。

その震災時に日本語がわからないことで情報から切り離されてしまった人たちが多数いました。

外国人の人のために情報を提供するため、通訳者や翻訳者にアクセスすすることが実質上不可能だったため、死亡した方の割合は、日本人に比べ外国人のほうが多かったというデータがあります。

「総合演習」という授業や、今年度は担当しませんでしたが「日本語教育学入門」の授業で、僕は必ず「やさしい日本語」というテーマを取り上げています。

これは阪神大震災を反省し、情報提供が遅れがちだった外国の方向けに、わかりやすい日本語で情報を提供しようという考え方です。

弘前大学のこちらのページをご覧ください。

前任の徳島大学でも、留学生向けの緊急時マニュアルの書き換えを提案しましたが、愛知県安城市の防災マニュアルにも、うちの院生さんがかかわりました。

日本語が通じないとひとくくりにするのではなく、どの程度の日本語なら通じるのかを考えてみることが大切。

日本語の表現や単語を言い換えていくのは、母語話者である私たちにとっては難しいことではありません。

英語が話せないから、と、困っている外国人に声をかけるのを躊躇する必要もあまりないのです。
だいたい、日本に来ている外国人で、英語が母語並にわかる人はほんのわずか。

中国、韓国、ブラジル、ペルー、フィリピン、そういった国から来ている人がほとんどです。

英語で話しても通じません。

今回の地震のニュースをアメリカで聞きながら、日本語教師というのは、こういう震災の場でどんな役に立つのだろうか、と考える時間がありました。

私は人より体力があるわけでもなく、サバイバル技術にたけているわけでもありませんから。

ご一緒していた東京学芸大学の先生とお話ししながら、マイノリティの立場に立った活動を提案していくことは可能だろうと、また、「やさしい日本語」での情報提供というのは、お手伝いできることなのではないかと思うようになりました。

直接被害にあわなかった方で、このページをご覧になっている方。

自分たちがまきこまれた際に、この「やさしい日本語」での情報提供と伝達、ちょっと意識してみてはどうでしょうか。

日本語教育について学んだことのある方であれば、初級前半の表現や語彙、文型だけで何とか伝えられる方法を、今から考えておいてもいいかと思います。

一人でも多くの方が一日も早く今の状況から抜け出せることを祈っています。
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