小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

夏の明るい寂寞かな

2023年08月15日 | エッセイ・コラム
枇杷の実は熟して百合の花は既に散り、昼も蚊の鳴く植込みの蔭には、七度も色を変えるという盛りの長い紫陽花の花さえ早や萎れてしまった。梅雨が過ぎて盆芝居の興行も千秋楽に近づくと誰も彼も避暑に行く。郷里へ帰る。そして、炎暑の明るい寂寞が都会を占領する。 永井荷風の随筆集(岩波文庫)にある『夏の町』の冒頭の書き出しである。荷風がほぼ5年間の洋行(アメリカ、フランス)から帰って2年後に書いた随筆だ(発表は . . . 本文を読む

柳原義達について、もう少しの話

2023年08月09日 | 芸術(映画・写真等含)
前回の続き ジェルメーヌ・リシエについてIT検索していたら、興趣をそそられることが多々あった。ちょっと驚いたのは、後期の作品『蟻』(1953)が約3億3千万円で売買されていたこと。所蔵者は東京国立近代美術館、落札者は民間の美術関係会社。超高額だが、世界基準のリシエ評価としては、さもありなんと類推できる。そのほかの美術品の入札についても、想像をめぐらすこと多し。 ▲リシエ作『蟻』(1953) . . . 本文を読む

女性彫刻家ジェルメーヌ・リシエが遺したもの

2023年08月05日 | 芸術(映画・写真等含)
ジェルメーヌ・リシエ(1902~1959)とは、フランスの女性彫刻家であり、ロダン(1840~1917)の高弟であったアントワーヌ・ブールデル(1861-1929)のそのまた愛弟子である。ブールデルは日本各地で巡回展が催されたこともあるが、ロダンほどには馴染みがないかな? いや、「弓を引くヘラクレス」をはじめ多くの彫刻やレリーフなどが各地の美術館に所蔵され、目にされた人は多いのではないか。 また . . . 本文を読む