噂では聞いていたが、IMAX(アイマックス)というシステムを完備した映画館でみる『ゴジラー1.0』は、やはり想像を超えるド迫力だった。この齢でIMAXを経験しないのは悔いが残る。そんな✖✖な、笑わせるなという人はいるだろうが、正直にいえば、死ぬまでには一度観て体感したかったことは確かだ。当然のごとく、小津安二郎をIMAXで見るのはお門違いだ。今回の『ゴジラー1.0』はまさにIMAXを前提にした映画製作であり、もちろん作品のストーリー性、役者たちの渾身の演技も素晴らしく、存分に楽しめたことは言うまでもない。
まずは、海外版予告編や映像クリップ集というの見つけた。ここに紹介するのは問題ないと思うが、ストップがかかり削除の憂き目にあうかもしれないので、お早めにどうぞ。『ゴジラー1.0』を、湾曲した大スクリーンと12Chドルビーサラウンドで体感するとどうなるか、ご想像にお任せするしかない。通常の予告編よりも3分も多い、ダイナミックかつスリリングな映像クリップが盛り沢山ということだ。
なお、一切のネタバレはするつもりはなく、これ以上の詳述は避けたい。ともかく1954年の『ゴジラ』を世に送り出した精神を尊重し、なおかつIMAXを採用した最高の映画づくりをめざしたという。ハリウッドムービーと遜色ない高水準のCGのせいだろうか、12月初旬にアメリカで公開されるやいなや全米で大ヒット、ゴジラファンはじめ多くの人の度肝を抜いた。(追記:血しぶきやグロテスクな映像をみせないアメリカ基準をしっかり踏襲している)
Godzilla Fight Scene | GODZILLA MINUS ONE (2023) Movie CLIP 4K
20年ほど前になるのだが、この企業の中枢にいた人と縁があり、映画館のあり方を見直して抜本的にインフラを再整備するのだ、と熱く語っていたことを思い出した。女性ではあるけれど、その思いの丈は力強く、説得力に満ちていた。当時の男性幹部をリードするほどの手腕を発揮したに違いない。なにせ、今も最上層で辣腕をふるっているのだから・・。
〇IMAXという映画システムを一般向けに解説したコピーを紹介する(メリハリをつけるために、勝手にちょっと文章を変えた)。
■驚異的な鮮明さ 映像の細部、深部まで鮮明かつクリアに表現する優れた再現力。IMAXならではの大スクリーンでこれまでにない高精細なリアリティを実現。
■群を抜く明るさ レーザー光源の採用で、従来の水準を超える高彩度を実現。IMAXの大スクリーン一面に鮮やかで生き生きとした 2D&3D映像を映写。
■強く深いコントラスト 高品質基準をはるかに上回る優れたコントラスト特性を発揮。これまでにない深みや強い印象力を再現し、想像を超える映画の世界へ。
■豊饒な色彩表現 これまでの映画製作にはない豊かでリッチな色彩表現を可能し、驚くべき豊かさと色鮮やかな映像の世界を大スクリーン上に再現。
■驚異の12ch音源 針が床に落ちる極小音から、腹に響くほどの火山噴火音まで、独自設計の12chSDシステムが実現する驚異の臨場感とリアル体感。
〇その他のゴジラ関係のスピンオフ余話
『ゴジラ-1.0』を観る前日、EL&Pのライブのために九州から友人が来訪した。近々映画ゴジラを観に行く話に及んだ時、その友人は言った。観ましたよ、どうせ観るならIMAXがお薦めです、と。
何処にするかあれこれ迷走したが、池袋のグランドサンシャイン劇場に決めた。11月初旬に公開されたせいか、今は夕方1回だけの映写なのに観客はなんと1,2割の入りだった。もっともIMAXを観るには割高な料金を支払う(+800)。で、お金にシビアな若者たちは、通常の映画館で楽しんでいるのであろうか。こっちはシルバー割引を利用しても一人2100円。しかしそれだけの価値はあった、元は取ったという大いなる満足感はある。
ゴジラ生誕70年。1954年の記念すべき封切りの時は4歳だったが、たぶん見ていない。それでも、子ども時代に映画館で『ゴジラ』を見た第1世代だと思う。5,6歳の頃、月に2回の縁日には、ゴジラグッズがどこにも並んでいて、釘付けになったことは覚えている。どうしても買ってもらえず、泣いて駄々をこねても「駄目なものは駄目」と拒絶された。親への憎しみをおぼえたのは、これが最初のときだったのか。
その後、成長するにつれ友だちと一緒に、冒険のような感じで喜び勇んで観に行った。近所に東宝系映画館はなく、大体が上野へ行った。有楽町に行ったときは、母や伯母たちに連れられての特別の日だ。わざわざお出かけといった服を着て、女たちがゴジラを話題に楽しんでいる。しかし、彼女らのお目当ては、併映する映画「社長漫遊記」とかクレージーキャッツの「無責任男」、加山雄三の「若大将」シリーズだ。こちらの方も面白く、大人と一緒に笑って楽しんだ記憶がある。
最後に観にいったのは、『三大怪獣 地球最大の決戦』(キングギドラ、ラドン、モスラ幼虫)だった。検索したら1964年、中2だから観てはいないが、その後、従弟の見守りといった感じで浦和の映画館で観たことを思い出した。そのゴジラは70年間、全部合わせると30本、海外製作も何本かあるという。
ゴジラ出自の経緯、登場するときの音楽(伊福部昭)、威嚇する時の叫び声、青白い放射能ビーム、二足歩行しながらの暴れぶり、これらは鮮烈な印象として定着している。ゴジラのこれらの特長は、怪獣映画の原型であるとともに、戦後世代にとってのPTSD的な軽いトラウマともいえ、戦争を知らない世代にも得体の知れない恐怖感をあたえたかもしれない。
口幅ったいことは書きたくないが、戦争ではアメリカに徹底にやられ、なおかつ原子爆弾を落とされるという、それこそ国民的トラウマを叩きこまれた。すべてが消失したなかで、戦後の混乱期に放射能で異常変異した「怪獣」に、さらに追い打ちをかけて日本が叩き潰されるのである。ゴジラはなぜ、東京を目がけて南方から上陸して来たのか? 東京タワーや国会議事堂もターゲットにして狙ったのか? ゴジラはなんのメタファーなんだろうか? ゴジラは私たちに何を訴えているのか、戦争の悲哀か、罪深い人間の業か、善悪の根源か?
いやー映画って面白い。もし、アメリカで『ゴジラ+α』を、イスラエルかイラン篇で製作したらカオスになるだろうな。
▲九州から来た友人が撮影したもの。『ゴジラー1.0』では重要な役割を担う、特攻機「震電」。福岡で開発、試作された。これはそのレプリカである。
▲沢山のお土産をわざわざ九州から持ってきていただく。心から感謝です、ありがとうございます。記念に掲載させていただく。
▲池袋グランドサンシャインIMAX、現在は中央部がもっと奥に引っ込み、大スクリーンが湾曲している。