ハラリの『サピエンス全史』を持ちだすまでもなく、農業と定住生活は不可分の関係にある。食糧を安定的に確保できるのは、支配者・権力者にとっても都合にいいことだ。だからこそ、古代の権力者は、奴隷を土地に縛りつけ「農民」に仕立てあげた。
ジェームス・C・スコットという歴史人類学者の『反穀物の人類史』という著作にも、古代国家の成立は農業生産こそが重要な基盤だとしていた。
メソポタミア、エジプト、インダス . . . 本文を読む
緊急事態宣言が明日解除される。東京では1か月ぶりか、連日300人を超える感染者数が出ているにもかかわらずである。PCR検査の実情も、死者数の現状もそれほど注目されなくなった。いまやそれが「ニューノーマル」と言われる時代らしい。(フクシマ原発のときの緊急事態宣言が、10年間もいまだに解除されていない。人々の話題にもならない。アブノーマルでさえも日常化してしまう、これが日本人なんだろう)
コロナ禍が . . . 本文を読む
敬愛する竹下節子さんのブログにジャン・ギャバンとシモーヌ・シニョレが共演した映画『猫』(1971年のフランス映画)を観た感想が書かれていた。監督はピエール・グラニエ・ドゥフェールである。この名前が、かつて観た『離愁』を想いだした。作品として強烈な既視体験はあるが、恥ずかしながら映像シーンのほとんどを覚えていない。実のところ、女優のロミー・シュナイダーの凛とした表情しか思い出さない。
その前になぜ . . . 本文を読む
3月10日の今日、76年目となる東京大空襲の日。つまり、明日は10年目の3.11ということになる。風薫る季節が来ると、忌まわしい記憶が滲み出てくるようで、心は落ち着かない。
過去のことを考え、掘り起こすという作業は大切だけれど、吉兆かなんかの拍子で記憶を忘れることはできないものか。いやいや、実際に体験された方にとって、それができるなら祈りも願いもいらない。嗚呼、心をふさぐ二日間になるのかなあ・・ . . . 本文を読む
篠田桃紅さんがお亡くなりになった。107歳、老衰による逝去。見事である。女性が長生きだとしても、その仕事というか芸術的営為のエネルギーの放出は半端ない。健康のことなんか考えたことはなかった人だ。自由に、個性的に生きるのは、実は二の次で、筆による至高の美しさを表現することだけに心血を注いだ。モノクロの世界から色彩を採りいれたバリエーションは、表現のさらなる高みへの志向か・・。
とにかく、作品を作り . . . 本文を読む
駒込あたりまで散歩し、東洋文庫に足を伸ばしたら『大清帝国展完全版』をやっていた。小生、清時代のことは詳しくはしらず、高校世界史の域を出ないどころか、大半を忘れている。「完全版」と銘打つかぎり、これまでとは違う何かがありそうだ。
素人である小生が、まず清の建国で覚えているのは、漢民族ではない北方系の、男が辮髪を習慣とする民族が、明のガバナンスの空白を衝き、北京等華北を占拠したこと。明王朝の皇帝一族 . . . 本文を読む