さあ、いまのうちにマリア様に祈っておけ。フェデリコ・ガルシア・ロルカがまた顔に唾を吐きかけると、侏儒はせせら笑いながら顔をぬぐった。そして拳銃をポケットから抜き、銃身をかれの口にねじ込んだ。平原にはピアノのメロディが流れていた。子犬がまた吠えた。ガルシア・ロルカはまたベッドに跳ね起きた。グラナダのロルカの自宅の扉をたたく銃床の音がなりつづけていた。
「詩人にして反ファシスト、フェ . . . 本文を読む
小学校に入ってから5年生の頃まで習字塾に通っていた。家からすぐ近くのSさんの個人宅で、そこの奥さんが先生である。昔ながらの二階建ての日本家屋で塀もあり、小さな内庭もあった。ご夫婦と姉弟の二人の子供、そしてお祖母さんの五人家族。弟つまりS家の長男は、私より一歳上だが遊び友達、成績優秀かつ運動もできたので、よき兄貴分といったところ。お父さんはデザイナーみたいな仕事をしていて、いつも家の . . . 本文を読む
前回のブログより続き
どちらかといえば無神論に近いと自認している。とはいえ神社仏閣に行けば、世間並みに祈り賽銭を投じる。結婚はキリスト教プロテスタント派教会でとり行い、親の葬式は仏教に依った。極めて無節操であろうが、誰かに咎められる筋合いのものではない。
今後、身辺に大きな変化が生じて、救いを求めるべくより強い宗教的な何かにすがりたくなったら、それはその時の流れ。無節操に輪をか . . . 本文を読む
キチジローをともなって密航でキリシタン禁制の日本に来た二人の神父。噂通りの現実を目の当たりし、苦渋にみちた顔で呟く。日本では何故、キリスト教が根付かないのか。
「日本は沼なのだ。種をまいても根は張らない・・」
西欧から来た聖職者たちの、日本人を見るまなざし。憐みと慈しみがない交ぜになったある種のやりきれなさ。キリストへの強い信仰をもって殉教する神父も、拷問に屈して棄教する神父も . . . 本文を読む
明治新政権の創成にあって、憲法とか教育勅語などの重要な文書を実質的につくったのは肥後(熊本)藩出身の井上毅である。その井上が若かりし幕末のころ、時習館という藩校の寮生であったが、余程の俊才であったのだろう、横井小楠から直々に教えをうけていた。その問答集が「沼山(ぬやま)対話」(講談社学術文庫「国是三論」)としてまとめられ、原文・訳文ともに読むことが出来る。
そこに . . . 本文を読む
トランプ、トランプ。右を見ても、左を向いてもトランプ。明けても、暮れてもトランプ。
見たら忘れられない、あの庇(ひさし)のような板状の金髪。怒っているのか、笑っているのか。それとも不貞腐れているのか・・。表情だけではうかがい知れない、強面の風貌。前回、トランプの就任式を絵空事として書いたが、なにか現実感が薄いのだ。私にとっては、トランプが絵空事の世界に留まってくれないかと願う。い . . . 本文を読む