寄りそってとか寄りそいながらとか今どきの言葉なんだろうかよく聞くフレーズですね新しい天皇さまも国民に寄りそいながらと決意をのべていらしゃった
寄りそっていくのはたいへんなことだと思うだって片時も離れないってことちょっとの間もそばから離れないちゃんと見守っていますってことトイレのときはまあしょうがないけど
僕には寄りそってくれる人がいないそれはしょうがないことだしはなからあきらめている犬だったら . . . 本文を読む
いつでも行けるところに行かないのは変わってほしくないからだいつでも見られる空を見ないのは雲に流れてほしいからだ
水玉模様のワンピースを着た少女が歩いている真っ直ぐに歩かないのはじぐざくに歩くのが面白いからだあんまり暑いから面白くないだからゆらゆら歩きたいのかなあ
炎天のしたのなじみふかいところに坐る懐かしさは優しさ 厳しくもあるここだけは風が通る葉っぱの匂いがする数えきれな . . . 本文を読む
この本の帯には、たぶん編集担当だろうが、『名井島』の一端を紹介する、簡潔で暗示的な文章が載せられている。
用済みになった人形やアンドロイドが余生を送るサナトリウムの島。過去―未来を貫いて、精妙にスタイルを変容させながら、多層的に織り上げられた、言語の島をめぐる探求の地誌。
時里二郎の作品を最近になって読みはじめたものとして、あれやこれやと論評する資格はないことは自認している . . . 本文を読む
もう11年も前のことになる。金子光晴と妻の森美千代、そして長男乾(けん)の3人の手になる私家版詩集についてブログに書いた。「父とチャコとボコ~戦中未発表詩」という題名の、Eテレのドキュメンタリーを観てからの感想で、その記事の一部とはいえブログに引用するのは気恥ずかしい。ともあれ、以下のように書きはじめている。
金子光晴の私家版詩集が古書店で売りに出された。それは光晴自身が戦時中に . . . 本文を読む
「森のことば、ことばの森」というブログに偶然にもアクセスし、詩人時里二郎の存在を知ることになったのは、ほぼ一年前だろうか・・(詩人としての作品を読むようになったのは、正確には昨年の暮れあたりで、情けないが陳謝して訂正します。ということは、この半年あまりで、愚生の読書環境およびスタンスが劇的な変化があったわけで、我ながら驚愕している)。
恥ずかしながらそれまで、現代詩そのものは、長田弘、昔は吉岡実 . . . 本文を読む
世界のなかで最も利己的で、他者に対する関心がない民族は、無念にも日本人(※1)
データは事実に則し、さもあらんと隠された相貌の極みを見せるから不思議
他人様の貧しさ、生きることの困難を感じとり、唾を呑みこむように腹におさめよ
追いつめられた人の能力を笑い、努力を怠ったと責任論でなじるのは浅ましい
結果に基づく解決策を、金持ちや優秀な人に託しても、確かな収束は覚束ない
潔さ . . . 本文を読む
なんという僥倖、光栄に浴すことができたのか・・。今となってみれば、身のほど知らずと誹りを受けるやも知れぬ。まず、「そもそも」を書く。
詩人、時里二郎のブログ『森のことば、ことばの森』にめぐりあったこと、その因果あるいは経緯の記憶は定かではない。
ブログを辿って飛び込んできたのは、言葉ではなくむしろ、切りとられた美しい写真の数々だった。そのビジュアルの画質の高さは、もちろんスキルにもよる。しかし . . . 本文を読む
先日、鹿島茂の『吉本隆明 2019』という記事を書いた。その最後のほうに、古書木菟さんの奥様との約束めいたことを書いた。ご友人の井手ひとみさんという詩人の詩集を借り、読んだ感想を述べることの、まあこちらが勝手に申し合わせたようなものだった。
その後一読して、自分なりの感想をどう言ったらよいのか考えた。で、一言でいえばライトヴァースの云々、そして印象批評のような文言が浮かんだのだが・・。詩集全体の . . . 本文を読む
路ばたに結ぶ草の実に無限な思ひでの如きものを感じさせるものは、自分の中にひそむこの「幻影の人」のしわざと思われる。 西脇順三郎『旅人かへらず』の、はしがきより
▲装丁の柄澤斎は、小説家でもあった。美術ミステリ『ロンド』は「このミステリーがすごい!」のBest10に入っていた!
宮沢賢治は、童話を書いていたとき、一つひとつの文字が躍るように「向こう側」からやってきて、それをそのまま書き . . . 本文を読む
憶測を抹殺せよ。想像力を排除せよ。
人形のように糸に操られていないか。
目の前の現象を注視せよ。他者の変化を認識せよ。
運命とか偶然に任せてはいないか。甘い記憶に癒されていないか。
お前には味方がいない。樹や水、土や風、自然の素材とほぼ同じだと見なそう。
苦しくないのか お前の笑いは人に見せるだけのものだ。
信じることと、従うことはほぼ等しいと思え。
水の上の枯れた . . . 本文を読む
貨幣はかつて、富を表象するものであり、人間の体内に流れる血液のメタファーだった
すなわち、貨幣はいかように使われようとも、人間の共同体を循環し、成長をうながした
貨幣は人を選ばず、万民に愛されて世界を循環し、そして交換も可能になった
この世界に存在する稀少な金属が、やがて貨幣を保障し、交換をも裏づけた
貨幣と金属との、その親和性を無視し、成長と富の増大を願った人が忽然とあら . . . 本文を読む
花が語ったこと
紫陽花が囁いていた気をつけたほうがいいよ人は美しいものをお金に換える多くの言語を操って嘘をつく知識を貯めて隣人をもたぶらかす
タンポポは嘆いていた黙っていると踏みしだかれるとエリートたちは人を選んでいる美しい人たちは内輪だけで褒め合う身体を自慢するものは身体しか見ない
薔薇は祈っていた問うてもなぜか答えてくれない雨が降り 風が吹き 光が差し . . . 本文を読む
たいせつに仕舞って
最初に目にしたときの愕きやがてうれしさに変わり歓びというものの意味をさぐりこころの淵に芯のような種ができるたいせつに育もうと願いながら記憶の引き出しにしまうかけがえのないイノチの行く末は痛みや虚しさをともなってひそかに消え入ることもおおくいつまでも奥ふかく劃される幽(かそけ)し蕾はまだかなとのぞみたかくむすめの風をにほい抱きしめてたしかな生きる手ごたえを感 . . . 本文を読む