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三浦綾子『銃口(下)』を再読する

 

 予定通り、三浦綾子の『銃口(下)』を新幹線の中で読みました(上巻はこちら)。この下巻は、主人公が警察に連行され、拷問を受け、教師を無理やりやめさせられ、召集され中国戦線の最前線に送り込まれ、そこで様々な人に出会い、そして戦争が終わり、故郷に帰ってくるという流れです。

 

 主人公は別に、左翼活動家でもなんでもなく、「天皇の赤子たる子供たちを、立派な臣民に育て上げること」を旨とする、当時としては普通の教師なのですが、そういう人物でも、適当に罪状をでっちあげられ、物が言えない国になだれ込んでゆく、その末がどうなったかは、既に明らかなとおりですよね。

 

 ところで、なぜ『銃口』と言うタイトルなのかですが、だれにも軍国主義の銃口が向けられている、でもだれ心の中にも、それに抗うそれぞれの「銃口」を持っているのだ、と言う様なことなのではないか思った次第です。

 

 あと、8月15日に敗戦を迎えて、2週間余りの8月末には、北海道・旭川の実家に戻る最終版のストーリーが、ちょっとリアリティーがないかなとも思いました。可能性としてはゼロではないのでしょうが、ちょっと急ぎ過ぎた展開ですね。まあそれで、この作品の価値がいささかも毀損するわけでは、もちろんありませんです。

 

 今度は、三浦綾子の『母』でも読んでみようかな、と言う今の心境です。

 

 

 

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