秘境という名の山村から(東祖谷)

にちにちこれこうにち 秘境奥祖谷(東祖谷山)

(菜菜子の気ままにエッセイ・ジャガイモと鎌と私と時々おら)

2019年05月13日 | Weblog


昨日全国的に 母の日の日曜日。
山の上に住む、いつものお婆ちゃんを訪ねた。
いつだったか、オバチャンが 何気なく私に言った。
「菜菜美さんよ~不思議なことがあったんじゃわ!?」
「不思議なこと?って」
「あのの、前にもろた、よう切れたカマがの、なしんなったんじゃわ」
「誰かに盗まれたん!?」

「盗む人間もおらんわの~わたししか、このメグラにはおらんわの~」
「なんで、なしんなったん?どっかに落としたん?」
「それがの~あの上で茅を切っての~カマを木の枝に掛けとったんじゃわ~そしたら明くる日には、なしんなっとったんぞよっ!」

「へえ~」
「あのカマには赤いテープ貼っとったんじゃわ~」
「へえ~」
「わたしゃあ、猿が取っていったんじゃと思うんじゃわ~」
「猿が…カマを?」
「まあ!?この赤いのは何だろう?珍しいきん持っていんでみようって持っていんだんじゃと思うんじゃわ」
「そんなこと?あるかなあ?」

「ある・ある」
と言いながら、おばちゃんは 私の顔をじーーと 見た。
「あのカマはよう切れた。菜菜美さんが買うてくれて、大事に使いよったのに」オバチャンは祈るようなお顔で、私を見ていた。

それから…月日は勝手に流れ。
そして本日。母の日。
値の張る高級鎌を持参した。

オバチャンは、庭に張り付く様に座り、低い草を抜いておりました。
「オバチャン、こんにちわ~」
「まあ、菜菜美さんかぁ、元気にしよったか」
「うん、元気にしよるよ~」
「オバチャン、今日は母の日じゃけん、新しい鎌を持ってきました~軽くて使いやすいよ~従姉と私からの気持ちですっ」
「まあ~すまんの~」

「使えるものが一番だと思って、ゴメンよ、カマで」
「使えるもんが一番じゃわ!菓子は食うたらなしんなるけんど、カマならなしんならんわの~」
※無くなったから、持参したのだよ

オバチャンは嬉しそうに、縁側に鎌を置いていた。
「菜菜美さんよ~あの畑の芋を見てくれえや~今年は芋はミョウになったわ!太らんのじゃわ~」
オバチャンの指差す方向の畑を見ると、種芋から育てたジャガイモの苗が、勢い良く育っていない。
葉っぱが小さい。

発芽していない場所もあって、ド素人の私が見ても、貧相な畑になっている。
「こんがな芋は見たことないわ~ジャガイモ食えんかもわからんわ~どしたんだろのうや~」
「今年はいつまでも寒いし、雨も少ないし、そんなのが原因かもなぁ」
深刻な顔のわたし。

オバチャンのジャガイモが絶えるのは、考えなくない。
「ナスビの苗も、この前の霜にやられて、全滅じゃわ!」
※オバチャンは、全滅と言う言葉をどこで習得したんだ!?前は全滅と言わないで、わやになったわ~って言っていたではないか!
もしかして、デイサービスで習得したのか?

そして、オバチャンは熱く話す。
「めぐらには誰もおらんし、若いしもんても仕事ないし、久○は、なしんなるっ」※久○は集落の名
「オバチャン、久○だけじゃあないよ、なしんなるのは」
「菜菜美さんよ、ワタシは思うんじゃわ、これは日本のエライしの責任じゃわ!こんがなことになっての!」
「うん…うん…」
「おらだって、わざとに歳とったんじゃあないわの~ひとりでに歳とるきん、しよないわの~」
※オバチャンはワタシになったり、おらになる。
※その現実を後期高齢者社会とお国が言うのだよ。

今 祖谷は お茶摘みの真っ盛り。
手伝っていたプチ高齢者達も、正真正銘の高齢者に成長し、みんな老体にムチを打ちながら、頑張っている。
みんな、頑張ろう。
私は想い出を糧にして、
頑張ります。
そしてその領域は、誰にも侵されない。永遠に私の宝物だ。

草 々
追伸
エッセイを書いている間に、フキの佃煮を大量に焦がしてしまった。これをお国では、モノワスレと呼ぶ。









































コメント
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