秘境という名の山村から(東祖谷)

にちにちこれこうにち 秘境奥祖谷(東祖谷山)

菜菜子の気ままにエッセイ( 突然ですが検査のお時間です・後編))

2019年06月21日 | Weblog


15分かけて一杯目をゆっくりと飲み干した頃に、爽やかショートボブ女史が、部屋をノックする。
「大丈夫ですか~?ムカムカとかありませんか?」
「大丈夫です~ありがとうございます」

「変わったことがありましたら、遠慮しないですぐに呼び出しボタンを押して下さいね~」
「はいっありがとうございますぅ」
「テレビとか点けて、ゆっくりして下さいね」
「ありがとうございます。テレビは余り見ないんです」
そうですか~と爽やかに微笑んで女史が去る。

2杯目を注いで、外の景色を見る。
部屋の中は静かだ。
ドア越しに僅かに聞こえるのは、胃の内視鏡検査の方々の、廊下を歩く音と看護師の声。
今朝検査室前のロビーに座っていたオッチャン達が、大腸検査の本日の受診者かな?
と思って一瞬、ゾッとしたのだった。

あの見知らぬ数名のオッチャン達と同じ空間に座り、同じ便座を共用しなければならないの?…
日々の仕事で利用者の便は、慣れては?いるけれど、まだ元気そうな?
見知らぬオッチャン達の異臭を、半日浴びなければならないのは、ちょっと辛い。※相手も同じだろう。

晴天の空の下。窓の外に映る、見知らぬ方々の千差万別の日常。
次から次へと車が走って行く。何の打ち合わせもしないのに、みんな上手に追走してる。
家がある。会社がある。壁がある。

その四角い空間の中で、みんな何と格闘しているの?
誰と戦っているの?
幾つの煩悩と戦っているの?自分自身…。
そう…ワタシ

私は、今、下剤と向き合っているの。
15分かけて、2杯目を飲み干す。
味が不味く思えてきた。
ちょっとテレビを点ける。

今日も車が歩道に乗り上げたと、報道されている。
「60代の女がアクセルとブレーキを間違えて○△○△~~」リポーターが声を張り上げている。
で、思い出した。元院長は、なぜあのように沢山の経歴を並べられて報道されたのか!

なんで、あのオジイサンだけが、元院長って連呼されたの?
それなら60代の女って云わずに、せめて、女性って言えよ。
加害者に無職とか、テロップが流れるのは何故?

70才無職って、普通に当たり前なのに、わざわざ無職って報道するなよ!
などと、一人で怒りながら、テレビを消して、三杯目四杯目を飲み干し、最後の五杯目を飲み干す。
1時間が過ぎ、一リットルの下剤との戦いは無事に終了した。

次はお待ちかねの、ガスコンの登場だ。
10ミリリットルの少量のガスコンを持ち、看護師さんが説明してくれた。
これを飲んでから、500ミリリットルのお水(お茶でもOK)を、ゆっくり飲んで下さいね。
その頃には便意を皆さん催すみたいです。

ガスコンをクリアし、数回の排泄を終え、最終の排泄物が、薄めたオロ○ミンCみたいな色になり、腸の洗浄は終わった。
最終確認に看護師さんがやってきた。
「キレイになってますね。検査出来ますよ」※排泄物を誉められる、へんな快感。そして再び、看護師さんがやってきた。
「12時40分から先生が検査しましょうとの事なので、この服に着替えて於いて下さいね」

丈が長めの病衣に、穴の空いた紙パンツ。
遂に決戦の時間だ。イザッ着替えて看護師さんの後ろから検査室に入って行った。
時刻は12時40分っ。
検査室に入ると、若い看護師さんと、先生が迎えてくれた。

「お願いします」
と女の先生に深々とお辞儀をした。
「お願いします」
と先生も頭を下げて下さった。
「上手な女の先生がおるんよ」
その口コミだけを頼りに、ここまで来た。
私の浅はかさ。
ずっと夢見が悪かった意味が解った…

私が想像していた女医と違う!
今私の目の前にいる小柄な先生は、昔の町の産婦人科にいた、婦長さんみたいなタイプ。愛想はいい。
愛想はいいが、早い話が、ベテラン過ぎて、少し高齢で、お化粧も濃くて…
このベテラン先生…ポリープ切除出来るの?

そうか、見かけじゃなくて、その道に熟練した先生なんだ。
まてよ…もし、今日に限って手が震えて、ポリープから出血とか?
穴の空いたブルーの紙パンツを履き、ベッドに横になりながら、これ迄の人生が、走馬灯の様に過った。

「娘達よ、元気で暮らしなさい。母ちゃんは本当に本当に満足な人生でした。ありがとう」
心の中でキッチリと覚悟した。最期の姿がブルーの穴あき紙パンツなのは、無念であった。
確かに女の先生だった。
女の先生に違いはないが、オバアサンに近い?先生じゃあないの…
不安を払拭する様に、深く息を吐いた。

若い看護師が、スーと部屋を出た。
検査室の中には、先生とワタシだけになった。
「大丈夫?ゆっくりチカラを抜いて下さいね。今からもう一度、血圧計りますからね」
大丈夫って、こっちが聞きたかった。
「先生、今日は手は震えていませんか!?」
聞ける筈なく、検査室は一瞬、不気味な位、静かになった。


「○○さん、もう少ししたら、先生が来られますからね、ちょっと待っていて下さいね。」
「えっ!!?」
検査室のドアが開いたっ。清楚で綺麗な40代の女医が、颯爽と現れたっ!
「○○さん、お待たせしました。お願いします」
ワタシは思わず起き上がった。女医が突然舞い降りた女神様に見えたっ!

左側には、さっきまで先生だと思っていたオバチャンが、ニコニコ顔で立っていた。
オバチャンは、検査の助手さんだったのだ。
検査が済むまで、私の左肩をずっと優しく撫でてくれ、ついでに髪の毛も引っ張ってくれていた。検査より痛かった。
ポリープは良性で、無事に検査は終了した。

ありがとう。スペシャリストな女医様。
本当に楽な検査でございましたっ。
受付番号26番っ 御礼申し上げます!
草 々





































































コメント
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