30坪+20坪の菜園

BIG FARMの農事日誌です。

松ノ木沢ノ頭ー上越の春の雪山を歩く(3日目)

2010-05-04 | 登山

谷川連峰・松ノ木沢ノ頭 

最終日の3日目は単独で白毛門を目指した
松ノ木沢ノ頭から谷川岳東壁の眺めは圧倒的な迫力だ


松ノ木沢ノ頭手前の急斜面から谷川岳東壁

山行日 4月26日(月)
メンバー 単独
コース&タイム
共同通信・谷川保養所7:50=8:20水上駅8:25=8:39土合橋バス停-登山口8:55-10:10檜のムロ-11:35松ノ木沢ノ頭-12:30檜のムロ-13:35登山口の鉄橋13:55-14:00土合橋バス停14:05=14:26水上駅14:40=17:40上野駅=我孫子駅


最終日のこの日は単独で白毛門を目指したものの、途中の松ノ木沢ノ頭の露岩に腰かけて先へ進むべきか考えた。帰宅時間が気になる。時間切れと自分に言い聞かせて戻ることにした。松ノ木沢ノ頭は谷川岳東壁の絶好の展望台だ。その景色を眺めながら一人ぼっちで急斜面を登る爽快さと同時に雪崩の恐怖が付きまとった。真正面に見えるのは一の倉沢。多くの命を奪っただけに見るからに不気味で、稜線は音のない世界で静まり返っていた。

谷川での「春季合宿」は2日目で終わり、3日目の最終日は自由行動だ。3日間とも晴れの予報だったので、谷川の白毛門を単独で登る予定でいた。この日に自宅へ戻る。できるだけ早めに行動したい。水上駅から登山口となる土合橋へのバスの始発は8時25分だ。当初は朝飯を食べないで宿を出るつもりでいたのだが、これなら食べてからでも間にあう。私だけ15分ほど早く朝食を用意してもらった。

水上駅にはすでに谷川岳ロープウエー行きのバスが待っていた。車内にはすでに7,8人の乗客がいた。いずれも登山姿だがザックは小さい。このバスは上毛高原駅からのバス。新幹線で来た人たちだ。

登山口の土合橋バス停で降りたのは私ともう一人の男性。すぐに目の前が登山口となる駐車場だ。車が5台あった。一人が支度していた。この人は白毛門ではなく別の方向へ行った。車の数からして少なくとも4人は白毛門へ先行していると思ったのだが…。



ザックを軽くするため、余分な荷物をまとめて駐車場にデポした。段取りが悪く出発までに時間がかかった。同じバスで降りた人はすでに出た。駐車場の奥が登山口。沢を渡る鉄橋の手前に雪があったが難なく渡ることができた。

すぐにブナの林の急登になった。林床にはイワウチワが咲いていた。朝早いので十分に花が開いていない。思いがけないスプリングエフェメラルの贈りものだ。





体調がおかしい。イワウチワに気を良くしているのだから、ここはルンルン気分で急坂をぐいぐいと登ってもいいはずなのだが、足というか体がふらつく。体が揺れてバランスが悪い。急坂だから用心して登っていても、どうも危なっかしい足取りだ。どうしたんだろう。この2日2晩の暴飲暴食が原因だろうか。とにかく一歩一歩慎重に足を運ぶほかないようだ。この尾根は松の根がむき出しに縦横に走り、歩きにくいったらない。悪路である。

30分ほど歩くと先行していたバスで一緒だった男性が松の木の下で休んでいた。
「がっかりしました。イワウチワがまだ早かった。昨年はGWに来たときは終わりかけていたから、今年は少し早めに来たのに」
ザックには三脚があった。イワウチワを撮りに来たようだ。
「白毛門まで行くのですか」
「イワウチワが目的だから」
この人とはこの後に会うことはなかった。



ここが檜のムロ。この前後から雪道となる。いつアイゼンを着けるか。雪道が続くかと思ったら、その先は雪がなかったりして、そのタイミングがむずかしい。この尾根は細く、雪があると慎重にならざるを得ない。アイゼンをつけた。やはりその先に雪がなく、付けたり外したりしては面倒なのでそのまま歩く。歩きにくい。ようやく雪道になった。



左手には木の間から谷川岳東壁が見えている。木の枝に邪魔されて全貌が見えない。もう少しの我慢だ。しかし昼を過ぎると逆光になる。絶景が台無しになる。順光のうちに急がなければならない。お日さまがまもなく天辺だ。あせる。さあ急ごう。





松からブナに変わった。ここからまた急坂になった。



ブナの林をすぎると草木はすべて雪の下だ。さらに急斜面になる。アイゼンが確実に雪にくいこむ。歩きやすくなる。

振り返るとふもとが見える。上の写真も下の写真も見た目には急斜面には見えないが実際は、ここで滑ったらもう止まらないだろうなと思えるほどだ。緊張して登っている。先行者は少なくとも4人はいるものと思っているのだが、トレースはどう見ても一人だけだ。私の前後にまったく人影はない。しーんとすべてが静まり返っている。そこには、はあはあと息を弾ませている男が一人いるだけだ。



やっと松ノ木沢ノ頭が見えた。鎖場のある露岩だ。この時期は露岩の右手を行く。



露岩の手前からやっと谷川岳東壁が全容を見せた。さえぎるものがなくなった。急斜面に立って撮った。さすがにいい眺めだ。体を確保して見とれた。圧倒的な迫力だ。

ここまで休憩なしで来たから鎖場の露岩に腰かけて昼飯だ。食べながら、この先どうしうようかと考える。ここから白毛門まであと1時間だ。たぶん下山は4時前後になる。そこから家へ帰る。たぶん遅くなる。天候に恵まれ、谷川岳東壁のパノラマも十分楽しみ、この時期の白毛門の様子も分かった。「無理することもないか」とここから引き返すことにした。



白毛門は目の前だ・・・。



このルートの無雪期は悪路だが、雪が積もっているため下山はすいすいとはやかった。木々が谷川岳の眺めをしだいに遮るようになった。名残惜しく立ち止まっては目に焼き付けた。





アイゼンをはずす。この尾根は雪がなくなると下山にいっそう気を使う。まもなくイワウチワが姿を見せた。尾根伝いに咲いている。こんどは花を咲かせていた。



登山口手前の鉄橋下の沢でアイゼンを洗う。顔も洗う。下山は雪道のところは速く下ることができたのだが、雪がないところは慎重に下りた。意外に時間がかかってしまった。バスの時間まで間があるのでここでゆっくりした。川原に座っているとせせらぎの音と清明な空の色が、山国にやっと春が訪れようとしているのを教えてくれる。





土合橋バス停。奥が駐車場で登山口になる。このあたりのソメイヨシノはまだつぼみだった。結局は行きも帰りも一人だけの登山になった。ふだんはもっぱら単独登山なのに、団体登山が2日も続いたせいか、ひとりぼっちが心さびしくもあった。妙なものである。



3日連続の登山となった。欲張ったものである。3、4月は青春18きっぷを利用して連続登山をしていただけに体調は万全だった。そのため3日目も登ろうという意欲があった。春の雪山はすばらしい。天気がいいものだからなおさらそう感じる。
この2カ月の間は山を歩いてばかりいた。これが山歩きの効用というのか、きわめて心身ともにさわやかである。


                


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