舞蛙堂本舗リターンズ!~スタジオMダンスアカデミーblog

ダンス(フラ・ベリーダンス他)と読書と旅行とカエル三昧の日々を綴る徒然日記。

Watching is Studying

2009-07-14 01:12:33 | ダンス話&スタジオM
ミヤ・ヒーリングスクールの校長先生から「ろまんちっく村でレッスン前の待ち時間に流す用のフラのイメージ映像はないかしら」と頼まれまして、今年のメリーモナーク映像をお持ちする事にしました。
で、このさいだからオススメチームを生徒さん達にご紹介しようと思い立ち、さっき会場で描いた野鳥の会記録をめくりながら映像を見返しました。

会場で見るとどうしても衣装やフォーメーションなど「パッと見で目立つもの」に意識が生きがちですが、映像で間近に観ると、それぞれのチームやダンサーの踊りが非常に良~く見えます。
ためになるなぁ。こりゃ、ますます生徒さんに観ていただかなくちゃ。

最初に観たのはケアリイ・レイシェルさん(しかし司会の方の声を聞くと「ライシェル」と発音されていますね)の輩出したミスのチェリッサさんの映像でした。

そして、会場で思ったとおり、今回のミスは「ミス」たる資格が十分にある実力の持ち主ですね。
何が素晴らしいって、ただただ踊りがシンプルな事に尽きます。

フラをシンプルに踊るのは決して簡単な事ではありません。
一見単純であるが故に、「フラは簡単」と誤解される素人さんがとても多いのですが(いえ、確かに取っ掛かりとしては高度な運動神経も必要とせず、踊りの素養がなくても始めやすいのは事実ですが)、さて、これを上手に素敵に踊ろうとした時、フラのシンプルさはむしろ「世の多くの踊りよりも難しい技術」となります。

シンプルさが求められているからといって、無味乾燥な動きをしているのではないという事も、難しい点ですね。
たんに「ムダな装飾を外すべき」なのであって、じゃあエアロビとかラジオ体操みたいな余韻・遊びのない動作をすればいいという意味ではないのです。
シンプルでありながら、優雅に丁寧に。...けっこう難しい注文ですよね(笑)。

しかし、ミスになったチェリッサさんは、指先まで神経の行き届いた繊細な踊りを踊っていながら、ムダな所は一切動いていません。
それは決して「無理くり固めている」ワケではなく、私が常日頃から理想に掲げている身体に真っ直ぐな芯の通った「ブレない踊り」なのです。
もちろん頭の動きも静かです。よく見るとダウンする動作もけっこうしているし、肩だって使っているのですが、それらに嫌らしさが一切なく、とても自然な流れの中で行われているので、見る人が見なければ気づかないほどです。

良いのです、それで十分なのです。「上下してる」「肩を使っている」なんて気づかれる必要はないのです。逆に、それらのスパイスが流れの中に完璧に溶け込んで注意深く包み隠され、スパイスの存在すら分らないような踊りこそ、フラにとっての「美しい踊り」なのです。

こんな風に言うと、「フラって難しいやん」と敬遠されてしまうでしょうか。
でも、そんな心配は一切無用です。今私が言っている事は大変な高等技術なので、ミス・アロハフラに出るような年代(というより、フラのキャリアですね。出場者紹介の時にそれも表示されます)ではとてもそこまで達してない方が多いです。
ミスに出られるのは25歳までと決まっていますから、ほとんどの出場者の場合フラ歴が20年を超えている事は稀で、そのように短いキャリアで身につけられる事は限られています。
今回のミスのチェリッサさんのように、この若さで身についている事の方がむしろ貴重な例外なのです。

したがって、彼女の踊りをじっくり観たとき、「まるで老成したダンサーのようだ」と私は感じます。
私が「老成」「老練」と言った時はそれは褒め言葉です。私自身、老成したダンサーになりたいと思っており、自分の踊りをチェックしていて一番憤りを感じるのは、己の踊りに若さを感じた時です(言うまでもなく、私が踊りの技術を語る上での「若さ」にはマイナスの意味しかありません。演技で若々しさを演じるなら良いけれど、本当に「技術が若い」のは恥ずかしいだけです)。
そのためには、ほんの25年ごときの短いキャリアでは足りないと思う一方で、25年のキャリアに相応しい踊りを踊らなければいけないと、いつも責任を感じています。

閑話休題。
日本にはなかなかキャリア25年って人はいないでしょうから、私が自分の踊りに課している基準を、他の人にまで押し付ける事はしません(もちろん、相手が自称先生やプロだってんなら話は別ですよ)。

では、フラが上手くなりたい人にまず何をお勧めするかというと、それは「シンプルさ」を追求する事です。
どうしても動いている部分に目がいきがちですが、そこをグッとこらえて、思うように動けないと思っても、まずはとにかく「ムダを省くこと」を心がける事をお勧めします。

ムダがないように心がけていれば、必然的に動きが丁寧になるはずです。
丁寧にしようという部分で、みだりに装飾を付けない事も大切です。
シンプルに丁寧に踊ってさえいれば、自然な腰の揺れも優雅な手の動きも必ず身につくのです。

フラは塗り重ねる事で完成に近づける油絵ではなく、削れば削るほど完成に近づく彫刻型の踊りです。
もし、削るべき部分に余計なものをくっつけてしまったら、そこを削り落とす所から始めなければなりません。
また、くっつけてしまったものの種類によっては、落ちない染料が染み込んでしまって綺麗に削り取れなくなる事だってあります。錆のように、本来の素材を浸食する危険さえあります。
だから、最初から余計なものをくっつけない事が上達への最重要条件なのです。

ま、ここでつべこべ並べ立てるよりも、じっさいの映像をご覧いただいた方が遥かに良いですよね。
いつも言っているとおり、質の高いものを観て見る目を養う事が非常に大切です。
というわけで、ろまんちっく村のフラレッスンにいらっしゃる方は、あの大画面で流す「ホンモノのフラ」をとくとご堪能くださいませ。
お見せする踊りの質に関しては保証しますので、是非、先程述べたような観るべき箇所をしっかり観察していただければ、きっとものすごく有益なはずです。

ブログランキング参加してみました。クリックして頂けると幸甚の至りです。