早紀と美幸がステージに上がった。黒の革ジャンで決めた四人の男が後ろに並んだ。リハの進み方は同じでも、バンドによって、音のつくり方が違った。
ルシファーズアイの中心はリードギターの人だった。平井さんと話すのもリードギターの人だけだった。サウンドチェックを済ませるとギターの爆音が響いた。男っぽい演奏が会場を満たした。
二人が歌いだした。二人の声は非常にポップだった。アイドル歌手を思わせるような声だった。演奏とのアンバランスが面白かった。ギターが演奏をやめると全員が止まった。ギターはメンバーに厳しい口調で指示し、おなじ曲を最初から始めた。演奏が歌を聞こえなくすることもあった。
「平井さん、いつもどうり、ヴォーカル、ギリギリでお願いします。」
「いいけど、今くらいが限界だよ。」
「もう少し・・・。」
「ちょっとハウるけどいい。」
「その辺はよろしくお願いします。」
ギターの態度の豹変が面白かった。早紀と美幸は人形のような感じがした。リズムの取り方が硬かった。全ての曲の触りを試し、エンディングの曲の最後の部分を何度か繰り返した。
「そろそろいいかな。」
平井さんの声が響いた。
「あ、すみません。本番よろしくお願いします。」
マーが合図をして、全員が楽屋から楽器を持ち出した。すでに誰もいなかった。が、楽屋は機材でいっぱいだった。入り口で早紀と美幸にすれ違った。
「カッコイイジャン。」
マーが言った。
「まあね。楽しみにしてるわ。」
サウンドチェックが始まった。
マーは慣れていた。ヒカルは緊張していた。ベースのボリュームを上げるのを忘れていた。ラインインのボックスにシールドを繋げず、アンプに直接繋いだ。
「ベースさん、ベースさん。ここじゃないんだけど。」
恵美子さんに言われてドキッとした。
「す、すみません。ど、何処に入れたらよいのですか。」
「ここよ。」
恵美子さんが直した。マーのチェックが終わり、ヒカルの番になった。音がでなかった。
「どうしたの。ベースちょうだい。」
平井さんの声が響いた。
「恵美子。」
「大丈夫、ですけど。」
恵美子さんはハッとして、ヒカルに近づいた。ヒカルの正面に回り、ベースのボリュームに触った。音が出た。ヒカルは頭を下げた。
ヒカルは緊張の頂点に達していた。力が入り、弦を切るほどの勢いで押さえ、音が狂うほどの力で引いた。歪んだグシャという感じの音が響いた。マーがヒカルを呼んだ。ヒカルは気付かなかった。マーはドラムを離れ、ヒカルの前に来た。ヒカルはびっくりした。
「深呼吸しようよ。」
マーが言った。マーのリードで二人は深呼吸をした。少し落ち着いた。それでもヒカルの弾けたのは四弦の五フレットを押さえ、おなじテンポではじくことだけだった。リズムに入っても同じだった。だがマーのドラムがヒカルを支えた。
緊張は伝染していた。
マサルもがガチガチだった。ディストーションとコンプレッサーだけなのにセッティングができなった。アンプの音もうまく作れなかった。それでも焦って、ガチャガチャ弾いた。
「ハイ、いいよ。解った。」
平井さんの声が響いた。
マサミは緊張はしていたが、マサミだった。メヌエットを崩して弾いた。
「オッケーでーす。じゃあボーカルください。」
ハルもミサキも困った。
「上手の人から」
二人で声を出した。
「そうじゃなくて、ギターのほうに立っている人からね。」
ミサキだった。
「あー、あー、あー。」
顔が真っ赤だった。
「はい、はい、解った。じゃあ、隣の人。」
ハルは何とか、格好をつけた。
「ワン、ツー、ワン、ツー、アー。」
「チェック、チェック。」
「ハイ、オッケーです。じゃあ、全体でください。」
困った。何をやっていいか、解らなかった。
「あッ、すみません。」
マーが言った。
「このマイクのチェックもいいですか。」
ドラムの横に置かれた台の上の目覚まし時計をならした。目覚まし時計の音が響いた。と同時にマーが仁のテーマのリズムに入った。反応には少し時間がかかった。三度目のマーのフィルインから全員が入れた。
「ジン、ジン、ジン、オーイェー。」
おなじパターンの繰り返しになった。マーの強引なフィルインで何とか、エンディングに持っていけた。が、ヒデオとアキコは直立のままだった。
「こんな感じなんですけど・・・。」
「大丈夫ですか。」
「ええ、まあ。」
「よければ、スタンバイに入りますけど。」
それ以上なにかできる状態ではなかった。
「はい。本番、ほんとによろしくお願いします。」
ルシファーズアイの中心はリードギターの人だった。平井さんと話すのもリードギターの人だけだった。サウンドチェックを済ませるとギターの爆音が響いた。男っぽい演奏が会場を満たした。
二人が歌いだした。二人の声は非常にポップだった。アイドル歌手を思わせるような声だった。演奏とのアンバランスが面白かった。ギターが演奏をやめると全員が止まった。ギターはメンバーに厳しい口調で指示し、おなじ曲を最初から始めた。演奏が歌を聞こえなくすることもあった。
「平井さん、いつもどうり、ヴォーカル、ギリギリでお願いします。」
「いいけど、今くらいが限界だよ。」
「もう少し・・・。」
「ちょっとハウるけどいい。」
「その辺はよろしくお願いします。」
ギターの態度の豹変が面白かった。早紀と美幸は人形のような感じがした。リズムの取り方が硬かった。全ての曲の触りを試し、エンディングの曲の最後の部分を何度か繰り返した。
「そろそろいいかな。」
平井さんの声が響いた。
「あ、すみません。本番よろしくお願いします。」
マーが合図をして、全員が楽屋から楽器を持ち出した。すでに誰もいなかった。が、楽屋は機材でいっぱいだった。入り口で早紀と美幸にすれ違った。
「カッコイイジャン。」
マーが言った。
「まあね。楽しみにしてるわ。」
サウンドチェックが始まった。
マーは慣れていた。ヒカルは緊張していた。ベースのボリュームを上げるのを忘れていた。ラインインのボックスにシールドを繋げず、アンプに直接繋いだ。
「ベースさん、ベースさん。ここじゃないんだけど。」
恵美子さんに言われてドキッとした。
「す、すみません。ど、何処に入れたらよいのですか。」
「ここよ。」
恵美子さんが直した。マーのチェックが終わり、ヒカルの番になった。音がでなかった。
「どうしたの。ベースちょうだい。」
平井さんの声が響いた。
「恵美子。」
「大丈夫、ですけど。」
恵美子さんはハッとして、ヒカルに近づいた。ヒカルの正面に回り、ベースのボリュームに触った。音が出た。ヒカルは頭を下げた。
ヒカルは緊張の頂点に達していた。力が入り、弦を切るほどの勢いで押さえ、音が狂うほどの力で引いた。歪んだグシャという感じの音が響いた。マーがヒカルを呼んだ。ヒカルは気付かなかった。マーはドラムを離れ、ヒカルの前に来た。ヒカルはびっくりした。
「深呼吸しようよ。」
マーが言った。マーのリードで二人は深呼吸をした。少し落ち着いた。それでもヒカルの弾けたのは四弦の五フレットを押さえ、おなじテンポではじくことだけだった。リズムに入っても同じだった。だがマーのドラムがヒカルを支えた。
緊張は伝染していた。
マサルもがガチガチだった。ディストーションとコンプレッサーだけなのにセッティングができなった。アンプの音もうまく作れなかった。それでも焦って、ガチャガチャ弾いた。
「ハイ、いいよ。解った。」
平井さんの声が響いた。
マサミは緊張はしていたが、マサミだった。メヌエットを崩して弾いた。
「オッケーでーす。じゃあボーカルください。」
ハルもミサキも困った。
「上手の人から」
二人で声を出した。
「そうじゃなくて、ギターのほうに立っている人からね。」
ミサキだった。
「あー、あー、あー。」
顔が真っ赤だった。
「はい、はい、解った。じゃあ、隣の人。」
ハルは何とか、格好をつけた。
「ワン、ツー、ワン、ツー、アー。」
「チェック、チェック。」
「ハイ、オッケーです。じゃあ、全体でください。」
困った。何をやっていいか、解らなかった。
「あッ、すみません。」
マーが言った。
「このマイクのチェックもいいですか。」
ドラムの横に置かれた台の上の目覚まし時計をならした。目覚まし時計の音が響いた。と同時にマーが仁のテーマのリズムに入った。反応には少し時間がかかった。三度目のマーのフィルインから全員が入れた。
「ジン、ジン、ジン、オーイェー。」
おなじパターンの繰り返しになった。マーの強引なフィルインで何とか、エンディングに持っていけた。が、ヒデオとアキコは直立のままだった。
「こんな感じなんですけど・・・。」
「大丈夫ですか。」
「ええ、まあ。」
「よければ、スタンバイに入りますけど。」
それ以上なにかできる状態ではなかった。
「はい。本番、ほんとによろしくお願いします。」