仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

それがライブというものさ13

2009年08月26日 17時21分12秒 | Weblog
恵美子さんはミサキにキーボードを渡すと早紀と美幸を探した。
「ルシファー、スタンバイちょっと待って。少しインターバル入れるから。いいね。」
返事はなかった。
「だいじょうぶ。ほとんど、ルシファーのお客だから、ステージに上がれば、引っ張れるわ。だから、少しだけ、ね。」
そう言い残し、ドアを閉めた。
 マーは殺気に満ちた視線を感じた。振り向くとルシファーのギターが睨みつけていた。視線を合わせ、ゆっくりと皆のほうに戻した。
「出番の邪魔になるよ。」
そういい、最初に陣取った場所に皆を誘導した。ビーエスエイトは興奮していた。皆は言葉にはできないが、震えるような感覚の中にいた。とは言うものの自分たちが何を演奏したか。どう客が反応したかはわからない状態だった。マーを除いて。
 早紀がマーに近づいた。
「何してくれるのよ。私たちの前座のくせに。」
皆が同時に早紀を見た。
「なによ。」
半分トランスに入っているような視線に早紀はそれ以上何も言えず、ルシファーの場所に戻った。
 マーが振り向いた。革ジャンのギターが早紀と美幸に何か、話していた。ノックの音がした。
「そろそろ、行こうか。」
恵美子さんがドアを開けていった。ルシファーの革ジャン四人がステージに向かった。一曲めのイントロが聞こえた。
「負けないからね。」
そういうとビーエスに向かって黒い物を投げつけた。皆の頭の上に黒い物が落ちてきた。マーが手に取った。黒のブラジャーとパンティーだった。フッと早紀と美幸の目をやるとほとんど体が丸見えのシースルーの衣装を着ていた。二人は手を握り、ステージに向かって駆け出した。バタンとドアが閉まった。ウオーというすごい歓声がハウスを満たした。皆はビクンとしてやっと我に返った。
「着替えようか。」
マーが言った。
「そうだな。」
ヒデオだった。皆はボディーストッキングを剥ぎ取り、黒く塗られた身体のまま、服を着た。