仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

それがライブというものさⅩ

2009年08月17日 17時33分57秒 | Weblog
 ヒカルとマサルが楽器を片付けだした。恵美子さんがギタースタンドのあることを教え、そこに置くように指示された。恵美子さんにマーがスタートの連絡をするので楽屋を出ないでくれと言われた。
「はい、解りました。」
 楽屋に戻った。緊張。それは仕方のないことだとは思っていた。
 マーは楽屋に戻ると、アキコに衣装のこと聞いた。衣装はまだ車の中だった。マーとハルとマサルは恵美子さんにスタンバイと開演時間を聞き、車に走った。墨汁とバケツとハケとボディストッキングとバスローブ。楽屋に戻ると、マーは提案した。
「一人づつ、皆でしようよ。」
「誰から。」
「もちろん、俺から。」
ハルが笑った。
「用意、はじめ。」
ハルのノリのよさがはまった。皆は笑いながら、マーの服を剥ぎ取り、ボディペイントを施し、極部が黒で判別できないようにし、ボディストッキングを装着した。エムの字のマー。
「次は、ハルだー。」
皆はほんとに楽しくなった。
「ベース」での衣装合わせのときを思い出した。エムが四つ、エイチが三つ、エイが一つ。身体全体にその文字はかかれ、エムのとんがったところが極部を、エイチとエイの横線が極部を、黒く隠した。女子の乳房には文字より細い線で横線の二重線が施された。緊張はかすかに和らいだ。
 マーは言った。
「もう、始まっているけど、ほんとに集中できてから始めようよ。」
「え、」
「ステージに上がってから、ほんとうの集中ができて、音が見えたら、演奏を始めよう。エンディングの時間はそのときセットするから大丈夫。それまで音だけに集中しよう。」
やっとマサルが元気になった。
「オーケー。」
マーが手を出し、皆がその手に手を絡めた。皆でキッスをして、円陣に座り、最初の集中に入った。恵美子さんがノックした。
「ハイ。」
「まだ、お客さんが少ないんだけど。十分くらいは押せるから・・・どうする。」
「もう、そんな時間なんですか。」
「ええ。」
「すみません。十分押しで。あ、それと僕らがステージに出たら。ビージーエムは下げてください。」
「解った。」
「しばらくはスタートしなくても、そんなスタイルなんで、お願いします。」
「平井さんに言っとく。」

二度目のノックの音がした。