ツカサの運転するホンダライフが目的地に着く前に、寄り道をしたのは言うまでもない。ツカサは行為の間も、再び走り出した車の中でも、考え続けていた。葛藤していた。
姫は姫なのだ。
が、姫は姫でいることが、辛いという。
では、私の、いや、俺の姫は何処にいるのか。
俺が傷つけたのは、姫だったはずだ。
が、姫はヒトミさんだ。
俺はヒトミさんを傷つけたのか。
ヒトミさんの命を奪おうとしたのか。
ヒトミさんと姫は同じではないのか。
答えは出なかった。しかし、その葛藤の始まりが、洗われたツカサの脳を少しづつ正常な状態にもどしていくことになった。切れた神経細胞が再び、繋がり始めた。が、その時、確かに認識できたことは、知りすぎた身体、知られすぎた身体、切っても切れない絆が二人の間にあるということだけだった。
市川市に入った車は川沿いを走った。そして、その明りが見えた。
「ねえ、ここで少し待ってて。」
「姫。」
「ううん。ヒトミで、いくの。ヒトミが、昔の仲間に会いに行くの。」
「ヒトミさん。」
「うれしい。そう呼んでくれて。」
「何かあったら、大声で。」
「大丈夫、昔の仲間に会いに行くんだから。」
新しい「ベース」はミサキの作り出した農場がその建物を取り囲んでいた。緑の香りがそこかしこから、立ち上り、一瞬、眩暈を覚えるほどだった。武闘派の格好をしてきたことが良かった。スニーカーでなければ、土手から「ベース」に向かう道で転んでいただろう。
土手を下りたあたりから、音が聞こえていた。リズムが響いていた。ヒデオの車があった。懐かしかった。あのころとおなじ車だった。ベンベーもあった。ヒトミは涙が出そうだった。
玄関の鍵を開いていた。音は内容がわかる程度に聞こえるようになっていた。音のするほうへ、そう、「ベース」のルームへヒトミは向かった。
姫は姫なのだ。
が、姫は姫でいることが、辛いという。
では、私の、いや、俺の姫は何処にいるのか。
俺が傷つけたのは、姫だったはずだ。
が、姫はヒトミさんだ。
俺はヒトミさんを傷つけたのか。
ヒトミさんの命を奪おうとしたのか。
ヒトミさんと姫は同じではないのか。
答えは出なかった。しかし、その葛藤の始まりが、洗われたツカサの脳を少しづつ正常な状態にもどしていくことになった。切れた神経細胞が再び、繋がり始めた。が、その時、確かに認識できたことは、知りすぎた身体、知られすぎた身体、切っても切れない絆が二人の間にあるということだけだった。
市川市に入った車は川沿いを走った。そして、その明りが見えた。
「ねえ、ここで少し待ってて。」
「姫。」
「ううん。ヒトミで、いくの。ヒトミが、昔の仲間に会いに行くの。」
「ヒトミさん。」
「うれしい。そう呼んでくれて。」
「何かあったら、大声で。」
「大丈夫、昔の仲間に会いに行くんだから。」
新しい「ベース」はミサキの作り出した農場がその建物を取り囲んでいた。緑の香りがそこかしこから、立ち上り、一瞬、眩暈を覚えるほどだった。武闘派の格好をしてきたことが良かった。スニーカーでなければ、土手から「ベース」に向かう道で転んでいただろう。
土手を下りたあたりから、音が聞こえていた。リズムが響いていた。ヒデオの車があった。懐かしかった。あのころとおなじ車だった。ベンベーもあった。ヒトミは涙が出そうだった。
玄関の鍵を開いていた。音は内容がわかる程度に聞こえるようになっていた。音のするほうへ、そう、「ベース」のルームへヒトミは向かった。