仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

目覚める時の空のように4

2010年09月06日 16時33分07秒 | Weblog
 奈美江の演説が始まった。武闘派の女子が娘を抱いた。内容は宰を頂点とした組織の再編成だった。最期に奈美江は言った。
「宰、お言葉を。」
ヒロムはゴモゴモ口を動かした。
「聞かれよ。宰は嘆きの中でお言葉を無くされた。執行部が宰の意志を理解し、宰を敬愛していたのなら、宰がここを離れることは無かった。
わたくしの非力で宰をお助けすることが出来るとは思わなかった。
宰は新しい命を望まれた。
そして、ここに宰の意志を受け継ぐものが生まれたのだ。
我が子、そして宰の子、我らが子が生まれたのだ。
 宰、お言葉を。」
ヒロムの口はまた、モゴモゴ動いた。奈美江は耳をヒロムの口元に当てた。
 オマエハホントニヤナオンナダ
奈美江はヒロムの目を見て、薄笑いを浮かべた。
「命の名は、恒久の誉人、真愛弥様。」
また、耳をヒロムの口元に近づけた。
 オレヲナンダトオモッテイルンダ
「宰の意志は、真愛弥様の意志であり、真愛弥様の意志は、この奈美江の意志であるといわれている。」
パラパラと拍手が起こった。それにつられるように拍手の輪が広がった。執行部全員、武闘派全員が手を叩いていた。