恵美子だった。
恵美子は、世田谷の屋敷でヒトミの入浴の世話をする係りだった。ヒトミの身体を洗い、髪を流した。ヒトミの背中を流す時、恵美子の指が震えた。ヒトミの背中を斜めに走る傷跡は生々しかった。そこを洗うときの恵美子の指の震えをヒトミは快感とともに愛おしく感じた。
そんな恵美子をヒトミは好きになった。小柄で、顔立ちも歳のわりに童顔で、しぐさもどことなく幼かった。いつも、身体を拭き終わると恵美子は深々と頭を下げ、退室した。
あるとき、ヒトミは、その手を取った。
「後で、お部屋にいらっしゃい。」
「えっ。」
驚いた表情が、徐々に崩れ、これ以上ないという笑顔で恵美子は肯いた。
その夜、ヒトミは希釈した「命の水」をビールに入れて、恵美子と二人で飲んだ。広いベッドの上で、二人は身体を寄せ、身体を確かめた。道具は使わず、指と、唇と、舌で身体の全ての部分を確かめた。二人は女性でしか知ることの出来ない部分で感じた。至福のときを過ごした。
朝日が眩しかった。
全裸でヒトミは目覚めた。ベッドの横に恵美子はいた。衣装をつけ、正座していた。ヒトミの目覚めに気付くと、スッと立ち上がった。
「おはようございます。姫。」
「おはよう、エミちゃん。」
「そっ、そんな・・・。」
恵美子は顔を赤らめた。それでも、身体を起こしたヒトミの肩に、サッと薄い部屋着をあてがった。
「ありがとう。ねえ、よかった。」
ヒトミは悪戯っぽい眼差しを恵美子の向けた。
「はっ、はい。」
「また、あそぼ。」
「そっ、そんな。いえ、ありがとうございます。」
ヒトミは立ち上がり、窓をあけた。太陽の眩しさを称えるような青の空が広がっていた。
恵美子は「流魂」に異変が起きていることはわかった。成城の、かつてヒロムが書斎にしていた部屋にツカサが幽閉されたとき、恵美子は、まだ、成城に詰めていた。武闘派の頂点と思っていたツカサの幽閉を目の当たりにしてから、この異変が普通ではないことを感じた。
一度だけ、ツカサに食事を出す指示を恵美子は受け、ツカサと対面した。
「エミちゃん。」
恵美子は驚いた。
「ヒトミさん、いや、姫から君の事を聞いたことがあるよ。もし、姫に何かがあったら、力になってあげて。そして、もし、姫と話をすることが出来たら、「ベース」へって伝えて・・・。」
「はい。」
そのとき、恵美子は意味もわからずに答えた。
それから、武闘派の混乱と、指揮系統の変更、姫付きの女子の武闘派の転属、あわただしくことは運んだ。大政奉還の儀式の時、恵美子は館内警備にまわされた。その時、はじめて、奈美江を見た。
そして、この儀式が姫を・・・・
下部の隅々まで、統率が取れているわけではなかった。だから、恵美子は走った、あの幕の中の出来事を見るために。担がれて、うなだれたヒトミを見た。
その二日後、恵美子は成城の屋敷に向かった。
恵美子は、世田谷の屋敷でヒトミの入浴の世話をする係りだった。ヒトミの身体を洗い、髪を流した。ヒトミの背中を流す時、恵美子の指が震えた。ヒトミの背中を斜めに走る傷跡は生々しかった。そこを洗うときの恵美子の指の震えをヒトミは快感とともに愛おしく感じた。
そんな恵美子をヒトミは好きになった。小柄で、顔立ちも歳のわりに童顔で、しぐさもどことなく幼かった。いつも、身体を拭き終わると恵美子は深々と頭を下げ、退室した。
あるとき、ヒトミは、その手を取った。
「後で、お部屋にいらっしゃい。」
「えっ。」
驚いた表情が、徐々に崩れ、これ以上ないという笑顔で恵美子は肯いた。
その夜、ヒトミは希釈した「命の水」をビールに入れて、恵美子と二人で飲んだ。広いベッドの上で、二人は身体を寄せ、身体を確かめた。道具は使わず、指と、唇と、舌で身体の全ての部分を確かめた。二人は女性でしか知ることの出来ない部分で感じた。至福のときを過ごした。
朝日が眩しかった。
全裸でヒトミは目覚めた。ベッドの横に恵美子はいた。衣装をつけ、正座していた。ヒトミの目覚めに気付くと、スッと立ち上がった。
「おはようございます。姫。」
「おはよう、エミちゃん。」
「そっ、そんな・・・。」
恵美子は顔を赤らめた。それでも、身体を起こしたヒトミの肩に、サッと薄い部屋着をあてがった。
「ありがとう。ねえ、よかった。」
ヒトミは悪戯っぽい眼差しを恵美子の向けた。
「はっ、はい。」
「また、あそぼ。」
「そっ、そんな。いえ、ありがとうございます。」
ヒトミは立ち上がり、窓をあけた。太陽の眩しさを称えるような青の空が広がっていた。
恵美子は「流魂」に異変が起きていることはわかった。成城の、かつてヒロムが書斎にしていた部屋にツカサが幽閉されたとき、恵美子は、まだ、成城に詰めていた。武闘派の頂点と思っていたツカサの幽閉を目の当たりにしてから、この異変が普通ではないことを感じた。
一度だけ、ツカサに食事を出す指示を恵美子は受け、ツカサと対面した。
「エミちゃん。」
恵美子は驚いた。
「ヒトミさん、いや、姫から君の事を聞いたことがあるよ。もし、姫に何かがあったら、力になってあげて。そして、もし、姫と話をすることが出来たら、「ベース」へって伝えて・・・。」
「はい。」
そのとき、恵美子は意味もわからずに答えた。
それから、武闘派の混乱と、指揮系統の変更、姫付きの女子の武闘派の転属、あわただしくことは運んだ。大政奉還の儀式の時、恵美子は館内警備にまわされた。その時、はじめて、奈美江を見た。
そして、この儀式が姫を・・・・
下部の隅々まで、統率が取れているわけではなかった。だから、恵美子は走った、あの幕の中の出来事を見るために。担がれて、うなだれたヒトミを見た。
その二日後、恵美子は成城の屋敷に向かった。