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テレコネクションの1つ「太平洋10年規模振動」とは何か?

2010年02月23日 | 気象
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 テレコネクション
 ようやく暖かくなってきた。今年は北極震動の影響で、思わぬ積雪が全国で見られた。一方、気象庁は向こう3か月はエルニーニョ現象の影響で、日本南海の亜熱帯高気圧が強くなり、南から暖かく湿った空気が入りやすいため、全国的に気温は平年より高くなる見通しだという。

 6~8月は、同現象が終息に向かい、日本付近への高気圧の張り出しが弱くなると予想され、北日本では冷夏になる可能性があるという。6~7月の梅雨時期(沖縄・奄美は5~6月)の降水量は北日本で平年より多くなるほかは、ほぼ平年並みの見通し。

 北極振動やエルニーニョは北極やペルー沖など、日本から遠く離れた場所で起きたことが、日本の気候に影響を与える現象で「テレコネクション」と呼ばれている。この他にはダイポールモード現象やマッデン・ジュリアン振動などがある。

 太平洋十年規模振動を再現
 今回、テレコネクションの1つである「太平洋十年規模振動(PDO)」の再現に国立大学法人東京大学気候システム研究センター,独立行政法人海洋研究開発機構,及び独立行政法人国立環境研究所の研究グループが成功した。

 太平洋十年規模振動(PDO)とは太平洋各地で海水温や気圧の平均的状態が、10年を単位とした2単位(約20年)周期で変動する現象である。

 これにより,近未来(2030年頃まで)の地球温暖化傾向のゆらぎやその地域的な違いに対する予測性能が向上し,「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第5次評価報告書に大きく貢献することが期待される。

 国立大学法人東京大学気候システム研究センター(センター長 中島映至),独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏),及び独立行政法人国立環境研究所(理事長 大垣眞一郎)の研究グループは,大気海洋結合気候モデルMIROCを用いて10年規模の気候変動を予測するシステムを開発して,スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」上で気候予測実験を行い,環太平洋域における大気・海洋の顕著な変動である「太平洋十年規模振動(PDO)」の再現に成功した。

 PDOは,日本の東方海域と,それを取り囲むようなアラスカからカリフォルニア沿岸,赤道太平洋域の海面水温が10~20年規模でシーソーのように変動する現象。その動向を客観的にあらわすPDO時係数は,1977年頃に負から正へ大きく変化したことがよく知られていて,最近では2006年頃に正から負への反転が観測されている。

 PDOの物理メカニズムはまだ完全に解明されているわけではないが,海洋大循環(黒潮の強さや位置など)やアリューシャン列島付近の気圧,太平洋域の偏西風の変化を伴い,日本を含む環太平洋域の気温や降水量だけでなく、海洋生態系の変動にも10年規模で強く影響することがわかってきた。

 気候予測システム概要
 研究グループは,季節予報などに適用されている手法を応用して10年規模の変動を予測するためのシステムを開発した。このシステムでは,データ同化という手法を用いて1945年から予測計算スタート時までの水温と塩分の観測データ(いずれも海面から700m深まで)を気候モデルに教え込み,予測計算のスタート時の大気・海洋の状態(初期値)を決める。

 このようにPDOのような内部変動の初期状態を反映させた初期値を使い,地球シミュレータ上で気候変動予測計算を行った。また初期値をわずかに変化させて10通りの予測計算を行い,その平均値を予測結果とみなすこと(アンサンブル予測)によって,結果の信頼性を向上させた。

 2005年7月スタートの再現実験では,2006年頃に観測されたPDO時係数の正から負への変化の再現に成功し,2008年までの平均的な結果も観測値とよく一致しました。負のPDO時係数に伴って,日本付近は高温化しているが,赤道太平洋域の広範囲では低温化しているため,結果として地球平均気温は押し下げられる。長期的な地球温暖化傾向は変わらないが,PDOの影響によって2012~13年頃までは地球平均気温の上昇が一時的に緩やかな状況が続く可能性が高いと予想される。

 

参考  国立環境研究所「太平洋10年規模振動の再現実験成功」 

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今年は暖冬?冷冬? 「立春」各地で最低気温、梅前線は北上

2010年02月05日 | 気象

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 2月4日立春 各地で最低気温
 立春の2月4日、北日本から東日本の上空に強い寒気が流れ込んだ影響で、東京都心でも氷点下0.4度まで下がるなど、各地でこの冬一番の冷え込みとなった。気象庁によると、北海道では日高町で氷点下27.8度を記録するなど、4地点で観測史上最低を更新した。

 気象庁によると、栃木県鹿沼市では氷点下6.9度、埼玉県越谷市では同5.7度、前橋市では同4.3度、千葉市では同1.1度...などでもこの冬一番の冷え込みで、平年を2~5度程度下回った。

 日本付近は冬型の気圧配置となり、降れば平地でも雪になるような強い寒気が関東を覆っている。夜間に地表の熱が奪われる放射冷却現象も重なったという。

 北海道内では依然として強い寒気が居座り、上川管内占冠(しむかっぷ)村で氷点下34.4度まで下がるなど、各地で今季一番の冷え込みとなった。日高管内日高町(氷点下27.8度)、同浦河町(同26.7度)、釧路管内弟子屈町(同24.9度)、夕張市(同23.6度)の4カ所は観測史上最低気温を更新した。

 日本気象協会北海道支社によると、道内で氷点下30度を下回るのは2年ぶり。十勝管内陸別町でも氷点下30.9度、弟子屈町川湯でも同30.1度を記録した。厳しい寒さは6日まで続く見込み。



 今年は暖冬?冷冬?
 一方、1月5日は愛媛県松山市では、全国トップを切って梅が開花した。平年より1週間早い開花である。1月20日の「大寒」には、九州・山口の各地は3~4月並みの暖かい日となり、福岡県太宰府市の太宰府天満宮では神木の「飛梅」が小さな白い花を咲かせた。

 その後、2月に入ってからは、また寒気が南下して寒い日が続いている。しかし、梅の開花前線は北上を続け、ここ神奈川県でも、鎌倉の梅の見ごろは2月中旬~2月下旬ごろになりそう。現在全体的には3~4分咲きになっている。一部早咲きの紅梅が散り始めている。2月4日現在、荏柄天神社、光則寺、長谷寺などが見ごろ。

 小田原市の曽我の梅林では、早咲き(白梅)は7分咲きから満開で、見ごろを迎えている。紅梅は満開、しだれ梅は2分咲きから3分咲きである。 小田原梅まつりは曽我梅林、小田原城址公園を会場に1月30日(土)から2月28日(日)まで開催される。

 「立春」の2月4日、島根県内は日中の気温が上がらず、寒い一日となったが、松江市の松江城山公園では、約80本ある梅の木の一部で花が咲き始めており、昨年より約1週間早く、3月上旬に見頃を迎えるという。(2010年2月5日  読売新聞)こうして見ると、今冬は冷冬なのか暖冬なのか、どちらなのだろう?

 寒気の原因は「北極振動」
 昨年末から北米や欧州、アジアなど北半球を襲っている寒波は、北極圏の寒気の動き「北極振動」が強い寒気放出期になったのが原因とする分析を米雪氷データセンターが12日までにまとめた。

 寒気の蓄積や放出の大きさを示す指数は、昨年12月にマイナス3.41と1950年以降最も低く、寒気が強く放出されているという。

 同センターなどによると、北極振動は気圧の変動により大気の流れが周期的に変化する現象。今冬は北極圏の気圧が高く中緯度地域は低い北極振動指数がマイナスの状態で、北極圏から放出された寒気が中緯度地域に流れて気温が低くなる一方、北極周辺は気温が高い状態が続いている。

 年末から年始にかけて、米国や欧州、アジアでは記録的な寒さを記録。温暖な気候で知られる米フロリダ州で氷点下を記録、欧州では主要空港で航空便の遅れや運休が相次いだ。中国やインドでも記録的な寒さが続き、インド北部では300人近くが寒波の犠牲になった。(47NEWS 2010.1.13)

 はずれた長期予報
 当初、気象庁では「暖冬で日本海側の雪は少ない」(気象庁)と予想していたが、平年並みの寒さが続き、4年ぶりの大雪となっている。日本付近に寒気が流れ込みやすい上空の気圧配置が続いていることが主な原因で、気象庁は「予想外だった」と説明する。

 夏に発生したエルニーニョ現象が予想に反して顕著でないことも影響しているといい、「平成18年豪雪」以来の豪雪となる恐れも出てきた。

 気象庁によると、昨年12月の降雪量は平年比で北海道109%、東北日本海側80%、北陸131%。2008年までの3年間の12月は、北陸で平年の20%前後、東北日本海側で30~60%で、今冬は大幅に増えた。今月も日本海側ではまとまった雪が降る日が続き、積雪は各地で平年を上回っている。

 原因は上空の気圧配置だ。昨年11月末ごろから、北極付近で気圧が高く、日本を含む中緯度帯で低い状態が続き、北極付近の寒気が南下しやすくなっている。米国や欧州も先月中旬、寒波に襲われ大きな被害が出た。

 また、太平洋赤道域東部の海面水温が高くなるエルニーニョ現象が発生すると、日本は高気圧に覆われやすくなり、暖冬になる傾向がある。だが、今冬は同現象によって大気の対流活動が活発になる領域が通常より西側にずれているため、日本付近では高気圧が発達していないという。

 気象庁は、昨年9月発表の寒候期予報や毎月発表している3カ月予報で、今冬(12~2月)について「気温は平年より高く、日本海側の降雪量は平年より少ない」としていた。気象庁気候情報課は「上空の気圧配置がこれほど長く安定するとは予想外だった。北極付近の気圧が変動するメカニズムは解明しきれておらず、予測が難しい」と説明する。同庁は平成18年豪雪の冬も「北日本を除き暖冬」と予想し、大きく外れた。(毎日新聞 2010年1月7日)

 今後、しだいに温暖に?
 気象庁の予報では「2月10日から2月19日まで」において、関東甲信地方では、2月10日頃からの1週間は、気温が平年よりかなり高くなる確率が30%以上となっている。

 気温の上昇にともない、北部山沿いではなだれの危険があるという。また、関東甲信地方では、向こう1週間は気温がかなり高くなるが、その後は次第に気温は平年を下回る予想で、気温の変動が大きい見込みだ。

 どうやら、強い寒気も流れ込みやすい状況に変わりはないようだが、確実に春は近づいているようだ。

 

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今冬は寒い!30年ぶりの寒波をもたらした「北極振動」とは?

2010年01月19日 | 気象

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 久しぶりに10℃を越える
 厳しい寒さも一休み。関東地方は19日、冬型の気圧配置が緩んで広い範囲が高気圧に覆われた影響で、各地で気温が上昇、3月下旬並みの暖かさとなった。東京都内で気温が10度を超えたのは8日ぶり。

 気象庁によると、21日ごろまでは気温が平年を上回る日が続くが、その後は再び冬型の気圧配置が強まり寒くなるという。それにしても今年は寒い。暖かいとされるここ湘南でも、10℃を越したのは久しぶりだ。

 世界各地でも寒波が到来しており、ドイツでは大雪のため、交通網がマヒ、孤立化している村がある。また、暖かいスペインにも大雪をもたらした。フロリダでは寒さのため気絶したウミガメが、多数保護された。地球温暖化と言われるが、ここのところの寒さはどういうわけだろう? 

 30年ぶりの寒波
 気象庁は昨年12月半ばから欧州や北米、アジアなど北半球を襲っている寒波について、北極圏で寒気が蓄積と放出を繰り返す「北極振動」という現象が原因とする分析を発表した。

 ここ30年間で最も強い寒気の放出が1カ月以上続く状態で、日本にも大雪をもたらしている。寒気の放出は弱まってきているが、北極振動は予測が難しいといい、気象庁は引き続き注意を呼びかけている。

 気象庁によると、先月16日以降の最低気温は、ポーランド・ワルシャワ氷点下19.2度(平年値は氷点下5度)▽ノルウェー・オスロ同17.9度(同6.5度)▽ソウル同15.3度(同6.7度)▽ベルリン同14.4度(同1.3度)--など各地で30年に1度の異常低温となった。積雪はワシントンで41センチ、ソウルでは26センチを記録した。

 北極振動は北極圏で寒気が蓄積と放出を繰り返す現象。放出が続いているのは、北極圏の気圧が高く、中緯度帯の気圧が低い状態が維持され寒気が流れ込みやすくなっているため。寒気放出の強さは比較できる79年以降で最も顕著だという。

 北極振動のメカニズムは解明されておらず、寒気の放出が強まった原因ははっきりしない。今後について、気象庁気候情報課は「数日程度で寒気の放出は収まるとみられるが、その後再び放出される可能性もある」としている。(毎日新聞 2010年1月18日)

 北極振動とは?
 北極振動(ほっきょくしんどう、Arctic Oscillation:AO)とは北極と北半球中緯度地域の気圧が逆の傾向で変動する現象のことである。

 1998年にデヴィッド・トンプソン(David W. J. Thompson)とジョン・ウォーレス(John M. Wallace)によって提唱された。彼らは北半球の海面気圧の月平均の平年からの偏差を主成分分析して、第1主成分としてこのような変動が取り出されることを提唱した。

 この変動は冬季に顕著に現れ、日本など中緯度の気候と強く関連するため赤道側のエルニーニョ現象と並び近年注目されている。南半球においても南極と南半球中緯度の気圧が逆の傾向で変動する現象が見つかっている(南極振動(AAO))。

 北極の気圧が平年よりも高いときには中緯度の気圧は平年よりも低くなる。主成分分析の結果得られるこの偏差の程度を表す値を北極振動指数という。

 北極振動指数が正の時、北極の気圧が平年よりも低いことを表す。変動は複雑で数週間程度から数十年程度までのさまざまな周期を持つ変動が重なっていると考えられている。特に6~15年程度の周期の変動が顕著で準十年変動と呼ばれている。

 北極振動発見以前から知られている北大西洋振動(NAO)と北極振動の指数の符号は良く一致しているため、同一の現象(AO/NAO)として扱う場合もある。また、環状構造に注目して北半球環状モード(NAM)と呼ばれることもある。なおこの現象は地上付近だけでなく、成層圏にまで及ぶ大規模な現象である。

 北極振動の影響
 北極振動指数が正の時は北極と中緯度の気圧差が大きくなり、その結果極を取り巻く寒帯ジェット気流(極渦)が強くなる。この結果、極からの寒気の南下が抑えられユーラシア大陸北部、アメリカ大陸北部を中心に平年より気温が高めとなる傾向があり日本でも暖冬となる。

 逆に北極振動指数が負の時はジェット気流が弱くなるため極からの寒気の南下が活発となり、平年より気温が低めとなる。特に北極振動指数が負を示した2005年冬(同年12月~2006年2月)は日本でも寒冬となり、日本海側に記録的豪雪をもたらした平成18年豪雪の原因になったとされている。

 このように北極振動は北半球の冬季の気候に大きな影響を持っていると考えられている。また冬の気温の変化によって海氷や積雪の量が変化することにより中緯度の夏季の低気圧や高気圧の消長に影響し、夏季の気候にも影響を与えていることも指摘されている。日本付近では前の冬に北極振動指数が正であるとオホーツク海高気圧の勢力が増し、冷夏になるとされている。

 北極振動の原因
 北極振動より以前から知られている南方振動が海面水温の変動であるエルニーニョ現象と強く関連しているのに対して、北極振動への海面水温の影響は今のところはっきりしていない。

 しかし大気内部の現象は通常、数ヶ月程度しか続かないため準十年振動のような長期の変動は大気内部だけの現象とは考えにくく海洋の影響はあるものと考えられている。北極振動が始まる原因は現時点でははっきりしておらず北極振動自体も一つの物理的な現象なのか、NAOや太平洋・北米パターン(PNA)など複数の振動が重なりあって統計的に取り出された見かけ上のものなのかについても研究途上である。

 北極振動が変化する要因の1つとして太陽活動との関連が知られる。また、太陽活動は成層圏準2年周期振動(QBO:quasi-biennial oscillation)との関連も指摘されている。これら太陽活動と気候変動の関係を調べる研究は徐々に認知されてきており、北極振動における励起因子の解明の鍵となる可能性もある。

 1980年ごろから北極振動指数は正の値を示すことが多くなっているが、これについては地球温暖化との関連が考えられている。(出典:Wikipedia)

 

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冬の嵐、寒冷渦・極低気圧(ポーラーロー)とは何か?

2010年01月02日 | 気象
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 天気予報の当たる確率
 気象庁発表の天気予報の的中率は80%程度といわれる。現代科学をもってしても、未だに90%もいっていない理由の1つに、天気を立体的に捕らえにくいことがあげられる。テレビで見る天気図は、地上天気図であるが、これはあくまで地上付近の天気である。地上付近に低気圧があるか、高気圧があるかということが基準である。

 実際の天気はそう単純ではない。例えば低気圧1つをとってみても、温帯低気圧、熱帯低気圧、寒冷渦、極低気圧(ポーラーロー)などさまざまなものがあり、そのでき方も違う。これらの低気圧は立体的に考えないと十分に理解できない低気圧もある。

 温帯低気圧や熱帯低気圧では、まわりよりも温度が高いところに空気の上昇があり、それによって低気圧が発生し雲ができる、わかりやすい低気圧である。この場合、低気圧を縦に見ると、地上ではまわりより気圧が低くなるが、上空ではまわりより気圧が高くなる「高」「低」の二重構造になっている。

 寒冷渦・極低気圧の三重構造
 ところが寒冷渦、極低気圧(ポーラーロー)になるとできかたがまったくちがう。寒冷渦や極低気圧とは、天気予報でよく「上空に寒気を伴う低気圧」といういい方をする低気圧で、上空に寒気があってできる。なぜ上空に寒気があると低気圧ができるのだろう?

 北極圏やシベリアなどの寒気の一部が、ジェット気流の蛇行などで切り離されて日本付近にくることがある。それが日本海などの暖かい海面上にくると、上空の寒気は重いので下に下がろうとし、逆に海面付近の暖かい空気は上昇する。

 さらに、寒気の上の空気は寒気が下降気流になるので、逆に低圧となり、海面近くにできる上昇気流をさらに上部に引き上げるはたらきをする。こうして縦に見ると「低」「高」「低」の気圧の三重構造ができ、これが強烈な寒冷渦、極低気圧をつくり出し、時に台風並の低気圧に発達する。

 なお、寒冷渦と極低気圧(ポーラーロー)は同じ構造を持つ。比較的規模の小さいものを、極低気圧(ポーラーロー)というようだ。

 寒冷渦とは何か?
 寒冷渦は上空の寒気と低気圧の位置が一致した、順圧的構造(上の気圧が「高」下の気圧が「低」)を持っている。

 空気は冷たいほど重く、気圧はその空気の積み重なった重さの結果であるので、寒冷渦は上空に行くほど周囲に比べて気圧が低くなっている。そのため、寒冷渦は地上では低気圧が明瞭でなくても、500hPa面などの高層では低気圧になる高層の低気圧である。

 寒冷渦を立体的に見ると、寒気の上空の大気は気温が高く密度が低いため、気圧は周囲よりも低くなる。一方、寒気自体は温度が低いため、密度は大きく重いたく、地上付近では気圧が高く低気圧は明瞭でなくなる。

 寒冷渦では、上空に寒気が入り込むため、大気が不安定になる。この際に、下層が日射によって強く加熱されたり、下層に湿潤な大気の流入があると一層大気は不安定化する。大気が不安定化すると、対流活動が活発になり、積乱雲などの対流雲が発達する。

 よって、寒冷渦の周辺では、積乱雲等による気象現象である、降雹、短時間強雨、落雷、突風などの激しい現象が起こる可能性が高くなる。一般に、低気圧に向かって南からの温暖湿潤な空気の流れ込みやすい寒冷渦の南東側で、大気の不安定が強く対流活動が活発になり、スコールラインを形成することもしばしばある。

 また、高層天気図からわかるように、寒冷渦の中心はジェット気流の弱い領域に位置している。そのため、寒冷渦は動きが遅く日本を通過するのに2~3日ほどかかる。 (参考 小倉 義光著「一般気象学」)

 

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