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未知の素粒子発見!存在確立99.93%!現代物理学では定義できない粒子とは?

2011年04月14日 | 物理

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未知の素粒子発見!存在確立99.93%!現代物理学では定義できない粒子とは?

 物理学において素粒子とは、物質を構成する最小の単位のことである。100年前までは、原子が素粒子と考えられていた。

 ところが、原子は最小の粒ではなく、内部にさらに小さい粒子が発見された。それが、クォークやレプトンである。現在、素粒子は大きく2種類に分類され、物質を構成するフェルミ粒子、力を媒介するボース粒子に分かれる。物質を構成するフェルミ粒子は、クォークとレプトンに分類される。クォークやレプトンの大きさはわかっていないが、仮に有限の大きさがあるとしても陽子のスケールにおいても点とみなすことができるほど小さい存在だ。

 これらの粒子の中には未発見のものもある。例えば重力子(重力を媒介する)、ヒッグス粒子(粒子に質量を与える)、アクシオン(強い力を媒介する)、タキオン(超光速で動くと仮定されている粒子)などである。ところが、これまで予想もしなかった未知の粒子が見つかった。

 4月5日、米フェルミ国立加速器研究所(イリノイ州)は、同研究所の大型加速器テバトロンで、現代素粒子物理学の枠組みである「標準模型」で想定されない全く未知の粒子が見つかった可能性がある、と発表した。自然界にある4種類の力以外の力の存在を示唆しており、確認されれば、私たちの自然観を変えるノーベル賞級の発見になるという。

続きはこちら → http://blog.livedoor.jp/liberty7japan/archives/3066993.html
参考HP Wikipedia 素粒子 ・キッズサイエンティスト素粒子の発見 

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新素材!柔らかなポリマーを使った「リチウムイオン電池」

2011年02月17日 | 物理

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 新素材!柔らかなポリマーを使った「リチウムイオン電池」

 リチウムイオン電池は、携帯電話やノートパソコンなどの情報端末、ポータブル液晶テレビ、ポータブルCDプレーヤー、MDプレーヤーなどの電化製品、最近はハイブリッド自動車用、電気自動車用のバッテリーとしても利用されている。現代科学技術に、なくてはならない電池だ。いったい何でできているのだろう?

 代表的な構成では、負極には炭素、正極にコバルト酸リチウム(LiCoO2)などのリチウムの金属酸化物が使われてきた。しかし、コバルトは高価であること、固く重くなることなどの欠点があった。

 今回、筑波大学の守友浩教授(物性物理学)らのチームが、現在主流の金属の酸化物ではなく、炭素や鉄などを結合させた、柔らかいポリマー(重合体)でも作製できる可能性が高いとの研究結果を2月3日発表した。ポリマーを使えば、リチウムイオン電池を柔らかい素材で作ることや、磁石など電池以外の多彩な機能を持たせることもできるという。(毎日新聞 2011年2月4日)
 

 続きはこちら → http://blog.livedoor.jp/liberty7japan/
 参考HP Wikipedia「リチウムイオン電池」・Spring8「ポリマー型電池材料の構造解明 

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これはすごい!暗闇でも色がわかる!暗視カラー撮像技術開発!

2011年02月10日 | 物理

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 これはすごい!暗闇でも色がわかる!暗視カラー撮像技術開発!

 真っ暗闇で、人の目はまったく物体をとらえることはできない。しかし、ネコなどのある種の動物では、人には捕らえられない赤外線の一部を感じ取ることができるという。これを利用してできたのが、赤外線暗視装置で、物体に赤外線を照射して反射した赤外線を捕らえて映像化する。しかし、その映像は単色だった。

 産業技術総合研究所(茨城県つくば市)は、肉眼では何も見えない暗闇の中の物体を、くっきりとカラーで動画撮影できる新システムを開発した。防犯カメラなどに応用が可能で、犯罪の検挙率の向上につながると期待される。(asahi.com 2011年2月9日 中村浩彦)


 続きはこちら → 
http://blog.livedoor.jp/liberty7japan/ 

 参考HP Wikipedia「ナイトスコープ」・産業技術総合研究所「暗視カラー撮像技術を開発

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夢の光!X線自由レーザー「XFEL」誕生!100兆分の1秒を観察

2010年11月15日 | 物理
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夢の光!X線自由レーザー「XFEL」誕生!100兆分の1秒を観察

 2010年9月17日、兵庫県上郡町に「X線自由電子レーザー(XFEL)」が誕生した。 X線自由電子レーザー(XFEL)は、X線のレーザーである。X線は波長が短く、1pm - 10nm程度しかない電磁波である。このX線のレーザーでどんなことができるのであろうか?

 これまで、世界有数の性能を誇ってきた大型放射光施設「スプリング8」より、10億倍強いX線が出せる。基礎科学だけでなく、新薬や電池の開発などに役立つという。10月に試運転を始める。

 石川哲也・理研播磨研究所長は「スプリング8ではできなかった、ナノの世界で物事が実際に働く様子を切り取ってみることが出来る」と話している。(asahi.com 2010年9月18日)

 続きはこちら → http://blog.livedoor.jp/liberty7japan/ 

 

参考HP Wikipedia「X線」「レーザー」・X線自由電子レーザー計画合同推進本部「XFELとは何か? 

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光ファイバーの原理 全反射・レーザーによるデジタル通信

2010年06月21日 | 物理

 光ファイバーの原理

 インターネットで使われる、光ファイバーとは何だろう?
 光ファイバーの素材はガラス(石英)の繊維で、0.1mmという超極細繊維。光の屈折率が違う繊維を束ねてケーブルにして、その中にレーザー光を通すことで信号を伝える。 

 最近では、そのガラス製ケーブルの繊維を原材料費が安いプラスチックに変えても、ほぼ同じ効果がでることがわかってきて、開発が進んでいる。従来ではケーブルといえば銅線が主流だったが、今では光ファイバーのケーブルがどんどん増えている。

 光ファイバーの原理は、いたって簡単。 光ファイバーの中で全反射が起こっている。 全反射とは、光が水やガラスなどの中を通って空気中に向かって進むときに起こる現象。

 光の入射角がある一定の角度以上になると、水やガラスの境界面を通過して分散することなく、すべて反射する。 この全反射を光ファイバーのケーブルで起こすことで、高速な通信を可能にしたのだ。

 光通信のしくみ
 光ファイバーではどのように通信を送っているのだろう?
 光ファイバーによる通信の仕組みは、まず映像や音声などの情報を電気信号でとらえられて、デジタル化する。そして次に、デジタル信号を光に変える。その光は普通の光が使われるのではなく、波長が整って増幅された光であるレーザーが使われる。

 レーザー光は、光ファイバーの中を高速に通っていく。距離が極端に長ければ、途中で光増幅器によって強くすることが必要となる。そして目的地に到着した光は、フォトダイオードで電気信号に変えられ、映像や音声にもどす。

 このようにして、光のスピードによる高速なデータ通信を可能にしている。

 全反射とは何か? 
 全反射全反射(Total internal reflection)は、物理学(光学)でいう反射の一例。 屈折率が大きい媒質から小さい媒質に光が入るときに、入射光が境界面を透過せず、すべて反射する現象を指す。

 入射角がある一定の角度以上の場合、全反射がおこる。この角度のことを臨界角という。水から空気への臨界角は約48.6度、ガラスから空気への臨界角は41~43度程度。この角度以上の入射角の場合、全反射が起こる。
 
 光ファイバーの構造
 光ファイバーはコア(core)と呼ばれる芯とその外側のクラッド(clad)と呼ばれる部分、そしてそれらを覆う被覆の3重構造になっている。クラッドよりもコアの屈折率を高くすることで、全反射や屈折により出来るだけ光を中心部のコアにだけ伝搬させる構造になっている。コアとクラッドはともに光に対して透過率が非常に高い石英ガラスまたはプラスチックでできている。

 また、被覆がないコアとクラッドのみの状態を単に「光ファイバー」と呼び、光ファイバーの表面をシリコーン樹脂で被覆したものを「光ファイバー素線」、光ファイバー素線をナイロン繊維で被覆したものを「光ファイバー芯線」、光ファイバー芯線を高抗張力繊維と外皮で被覆したものを「光ファイバーコード」とする呼びかたもある。複数の光ファイバー芯線に保護用のシースと呼ばれる被覆をしたものを光ファイバー・ケーブルと呼ぶこともある。

 2009年ノーベル物理学賞
 2009年のノーベル物理学賞はチャールズ・カオ博士の光ファイバー通信の研究と、ウィラード・ボイル、ジョージ・スミス両博士のCCD(電荷結合素子)開発に贈られる。ともに通信インフラやデジタル機器の基盤技術。基礎的な研究の芽は米英で生まれたが、性能向上と世界的な普及に大きな役割を果たしたのは日本企業だ。

 光ファイバー通信では、「カオ博士が現在広く普及する光通信の創始者。情報損失を抑制できることを理論的に予言した」(東北大学の中沢正隆教授)。米コーニングが情報損失が小さい光ファイバーを実際に開発、世界の企業の開発競争に火が付いた。

 しかし同社などが本格的な実用化にてこずる中、1980年代初めに当時の日本電信電話公社(現NTT)茨城電気通信研究所の伊沢達夫氏(現東京工業大学副学長)らが1キロメートルあたりの情報損失が世界最小の光ファイバーの作製に成功。石英の結晶から安く大量生産できる製造手法も開発した。その後、古河電気工業などが安価な大量生産技術を実現し普及を加速した。(2009年10月7日/日本経済新聞)

参考HP Wikipedia「光ファイバー」・光ファイバーBOX「光ファイバーのしくみ」 

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有機化合物の超伝導物質「ピセン」発見!いろいろな超伝導物質

2010年06月15日 | 物理
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 有機化合物が超伝導に?
 泥炭や原油を蒸留したときに出る残滓(ピッチ)の中に存在する「ピセン」という化学物質が、零下253度で電気抵抗がでゼロになる超伝導状態を示したことを岡山大大学院の久保園芳博教授(物性物理化学)と群馬大大学院の山路稔准教授(応用化学・生物化学)らの研究チームが発見した。有機物質の超電導として世界最高温度を更新した。3月4日の英科学誌「ネイチャー」に発表した。

 ピセンなど平面状の構造の有機化合物が超伝導状態になる最高温度は、これまで零下260度としてきたが、常温に近づいたものとしては画期的な発見となった。

 ピセンを合成的に得るためには、ナフタレン(2個のベンゼン環が1辺を共有した構造を持つ多環芳香族炭化水素)と1,2-ジブロモエタン(C2H4Br2)に塩化アルミニウムを作用させる方法、α-ジナフトスチルベンを熱反応にかける方法、コール酸から脱水素する方法などが知られる。

 山路准教授は、ジナフチルエタンという有機化合物に光触媒を加えて光線を照射することで、高純度のピセンを比較的容易に、大量に合成することに成功し岡山大大学院の久保園芳博教授(物性物理化学)グループはピセンにアルカリ金属のカリウム、ルビジウムを加え、常圧状態で磁場をかけて冷却したところ、超電導の性質を示した。

 低価格で、よく知られた有機物質で今回成功したことで、超電導を利用した磁石やモーターなどの軽量化が期待できるという。(財経新聞 2010年03月04日)

 ピセンとは何か?
 ピセン (picene) とは、多環芳香族炭化水素の一種で、泥炭や原油を蒸留したときに出る残滓(ピッチ)の中に存在する。シメンを溶媒として繰り返し再結晶させて得る。

 再結晶させたピセンは、青みがかった蛍光を示す無色の大きな板状結晶である。濃硫酸に溶かすと緑色を呈する。

 ピセンを合成的に得るためには、ナフタレンと1,2-ジブロモエタンに塩化アルミニウムを作用させる方法、α-ジナフトスチルベンを熱反応にかける方法、コール酸から脱水素する方法などが知られる。

 酢酸中でピセンにクロム酸酸化を施すと、キノン、カルボン酸を経て、最後は縮合環構造が分解したフタル酸に変わる。

 イドリア石(Idrialite)というピセンを主成分にした鉱物がある。

 超伝導とは何か?
 金属は温度が下がると電気伝導性が上がり、逆に温度が上がると伝導性は減少する。これは温度の上昇に伴って伝導電子がより散乱されるためである。この性質から、絶対零度に向けて金属の電気抵抗はゼロになることを検証する過程で、超伝導が1911年にヘイケ・カメルリング・オネスによって発見された。

 超伝導となる温度(臨界温度、Tc)は金属によって異なり、例えばニオブは9.22K、アルミニウムは1.20Kとなる。

 特定の物質が超低温に冷やされた時に起こる現象は「超伝導現象」(Superconductivity phenomenon)、超伝導現象が生じる物質のことは「超伝導物質」(Superconductor)、それが超伝導状態にある場合は「超伝導体」と呼ばれる。

 液体窒素の沸点である-196℃(77 K)以上で超伝導現象を起こすものは高温超伝導物質(Cuprate superconductor)と呼ばれる。

 超伝導物質とは何か?
 超伝導物質には、「金属系」、「銅酸化物系」、「鉄酸化物系」のほか「有機化合物」がある。超伝導物質の存在が確認されるきっかけとなったのが金属系物質。1911年にオランダの物理学者カメリン・オンネスが水銀を約4K(-269℃)まで冷やしたときに、電気抵抗がゼロになることを発見した。

 銅酸化物系は、1986年、ドイツのベドノルツとミュラーが、ランタン、バリウムを含む銅酸化物系のセラミックスが30Kで超伝導状態になると報告したのが始まり。電気抵抗がゼロになる温度「臨界温度」(転移温度、Tc)が高かったことから、高温超伝導研究ブームの火付け役となった。

 2006年、東京工業大学の細野秀雄教授らのグループが、鉄を含む化合物(LaFePO;オキシニクタイド)が6Kで超伝導物質になると発表した。この鉄酸化物超伝導体の登場は、手詰まり感があった高温超伝導に新たな息を吹き込んだ。というのも、磁性元素の鉄を含む物質は超伝導にはならない、という常識を覆すものだったからである。オキシニクタイドは、世界中で今、注目されている物質である。

 一方、金属ではない有機化合物系では、1991年、米国ベル研究所のグループが、炭素原子が60個連なるサッカーボール状の構造をもった「C60」(フラーレン)に金属をドーピングした物質が、18Kで電気抵抗がゼロになることを発見した。同じ年、NEC基礎研究所のグループは、C60にルビジウム、セシウムを注入した「RbCs2C60」で臨界温度が、常温で33Kまで高められることを確認した。その後、高圧下で、「Cs3C60」が40Kまで高くなることもわかってきた。ほかにグラファイトなどの超伝導物質も報告されている。

 Cs3C60が常温では超伝導現象がみられないのに、なぜ高圧下で超伝導現象が起こるのか、他のフラーレンと異なる性質の解明を進めると同時に、新たな有機超伝導体を模索していた。その中で出てきたのが、化学合成が比較的簡単な「ピセン」(C22H14)。ピセンは、ベンゼン環が5つ連なった簡易な構造で、電子デバイスとして使えると思っていたところに、思わぬ超伝導現象が見つかった。

 相転移の不思議
 物質が超伝導状態になるということは、水が氷になるように、まったく新しい相へ移行すること(相転移)を意味する。このため超伝導相に移り変わる温度を、(超伝導)転移温度という。超伝導に転移する前の相は常伝導という。

 超伝導体には電気抵抗がゼロになる他にも、物質内部から磁力線が排除されるマイスナー効果と呼ばれる現象が起こり、磁力線が超伝導体内部に侵入出来ないために、「磁気浮上」現象を起こす。

 この磁力線の強度を高めた時の応答の違いから第一種超伝導体(Type I superconductors)と第二種超伝導体(Type II superconductors)とに分類される。第二種超伝導体では磁力線の内部への侵入を部分的に許すことで高強度の磁力に対してもマイスナー効果を示す。第二種超伝導体では、ピン止め効果によりゼロ抵抗を維持している。

 ボース・アインシュタイン凝縮
 超伝導という現象はきわめて魅惑的なテーマのひとつである。電子が2個ずつペアを組み、これがボース・アインシュタイン凝縮したものが超伝導状態であり、このようなボース凝縮という量子力学的な現象が極微ではなく巨視的な物体で起きているために、電気抵抗がゼロという性質が発生する。

 光が粒子としての性質と、波としての性質の2面性を持っていることはよく知られているが、光だけでなく、物質をつくる原子・分子も、粒としての性質と波としての性質の両方を持っていることをボース・アインシュタイン凝縮は示している。

 その証拠に物質を冷やしていくと起きる、超伝導・超流動などの不思議な現象は、物質を原子・分子などの粒として考えると説明できないが、波としての性質だと考えれば理解できる。

 2001年度ノーベル物理学賞は史上初めて、ボース・アインシュタイン凝縮体を実現させた、コロラド大学のエリック・コーネル、カール・ワイマンとマサチューセッツ工科大学のヴォルフガング・ケターレに贈られた。

 さまざまな物質を調べれば、ボース・アインシュタイン凝縮により、重力を遮断する現象も起きるかもしれない。この原理を使えば、空中を自由に走行する夢の乗り物も開発される可能性がある。 

 何しろ相転移というのは物質の波としての性質であり、そこに何があるか人類はまだよくわかっていないのだ。

 

参考HP Nature「新しい有機化合物の超伝導物質を発見!」 ・東京大学「世界初の芳香族有機超伝導体

ボース‐アインシュタイン凝縮から高温超伝導へ

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宇宙の謎を地球で再現!J-PARC世界最強度のミュオン発生

2010年03月26日 | 物理
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 映画「2012」
 映画「2012」を見た。マヤ暦による2012年終末説を題材につくられた映画。地球滅亡を目の前になすすべもない人々が、巨大な自然災害から必死に逃げまどう姿を描く。人類の大半が本当に命を落とす大災害の凄まじい描写をはじめ、従来のディザスター映画が描かなかった部分に踏み込んだ力作だ。CGを使った、通常では考えられない自然災害の迫力ある描写が見事であった。

 さて、自然災害がどうして起きるのか、その科学的根拠に興味がわいた。ドロドロした意味不明の古代の予言が出てくるのかと思ったが、スッキリした最新科学を根拠にしているところに、好感が持てた。

 この作品では2012年に予想されている、太陽活動の極大期を災害の原因とした。現在は太陽黒点の極小期にあたっているが、これから太陽黒点が増え、2年後に急激に活動することを想定している。

 さらに2012年、観測史上最大の太陽活動が起き、大量の太陽ニュートリノが地球を襲う。その結果、ニュートリノがまるで電子レンジのように、地球のコアを過熱させる。やがてその熱で緩んだ地殻が一気に崩壊をはじめ、わずか3日で地表のすべてが海中に没するという設定である。

 電子レンジの原理
 電子レンジは携帯電話にも使われる、マイクロ波(極超短波)という電磁波を食品に当てて加熱する調理器具である。その波長は1cm~100cmと大きい。電子レンジは「電子」を使っているわけではない。

 大きさ約1.0×10-16 cm、9.1093826×10−31kgである「電子」よりも、はるかに小さく、軽いニュートリノ(電子の約1/25000)が、電子レンジの代わりになるとは考えにくい。通常は大部分のニュートリノは地球を通り抜けている。

 ということで、実際には起こりそうもないと思えるも現象であるが、科学的には興味深い。宇宙には大量の素粒子が飛び交っていて、素粒子が集まったり分かれたりして不思議な現象が起きているからだ。

 宇宙の常識と日常の常識
 例えば陽子はアップクォーク2個と、ダウンクォーク1個が結合して作られている。これらばらばらのクォークは軽いが、結合して陽子などの「ハドロン」になると、なぜか重さ(質量)が100倍くらいになっている。1+1+1=100!? なぜそうなるのか、よく解っていない。

 また、陽子(p)-陽子(p)-中性子(n)から構成されている原子核に、K中間子を埋め込むと、その直径が縮むのではないかと予想されている。この時にはたらく「強い相互作用」で、原子核の密度がグンと上がり、地球上では無いような高い密度の物質が作り出せる。それが宇宙にたくさん発見されている、中性子星やブラックホールなどだ。

 このように宇宙という現実の中では、日常という常識は当てはまらない、不思議な現実がたくさん起きている。そういう意味では、たかだか数千年の歴史で起こらなかったことが、地球上で初めて起きても何ら不思議ではない。

 J-PARC世界最強度のミュオン発生
 茨城県東海村にある、大強度陽子加速器施設(J-PARC)が世界最強度の「パルスミュオン」発生に成功した。 J-PARCは、文字通り「陽子」を光速近くまで加速させる装置である。これをグラファイト(炭素)の標的にぶつけることで他の様々な粒子を発生させることができる。

 これらの様々な粒子として知られているものに、クオークやレプトンがある。今回、大量発生させた「ミュオン(μ粒子)」はレプトンのなかま。ミュオンを0.04秒間隔で周期的に発生させたので「パルスミュオン」と呼んだ。これまで最高だった英国のミュオン実験施設で得られた1パルス当たり約3万個を上回る18万個のパルスミュオンが発生していたことを確認した。

 ミュオンは、湯川秀樹博士が存在を予言したパイ中間子が崩壊してできる寿命の短い不安定な素粒子。J-PARC では光速近くまで加速した陽子ビームをグラファイト(黒鉛)の標的に照射してパイ中間子をつくり出し、さらにそのパイ中間子からミュオンを発生することができる。

 今後、強力なミュオンビームを利用し、物理学の基礎的研究のほか磁性材料、超電導材料、燃料電池材料などさまざまな応用分野、産業の発展につながる物質・生命科学研究の成果が期待されている。(サイエンスポータルnews 2010年3月16日)

 クオークやレプトン
 クオークやレプトンは原子をつくっている素粒子。ラザフォードらが原子の研究をしているうちに、原子は最少の粒子ではなく、原子の中に原子核という別の粒子が存在することを発見した。さらに、放射線の発見によって、原子核も崩壊し、中性子や陽子などの粒子に分かれる核分裂反応が発見され、さらに、陽子や中性子もクオークやレプトンなどの粒子が結びついてできていることが、発見されていくことになった。

 現在知られているクオークは アップ、ダウン、チャーム、ストレンジ(サイドウェイ)、トップ(トゥルース)、ボトム(ビューティ)の6種類。現在までに知られているレプトンは、電荷を持つ電子・ミュー粒子・タウ粒子、そして電荷を持たないニュートリノである電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノの6種類。

 陽子はアップクォーク2個とダウンクォーク1個、中性子はアップクォーク1個とダウンクォーク2個が「強い相互作用」で結びついていることが分かっている。

 宇宙は素粒子実験室
 これらのクオーク・レプトンなどの素粒子が私たちの日常に何の関係があるの?と思う人もいるかもしれない。たまたま地球上のこの空間では、素粒子が目に見えて反応することが少ないので、考えずにすむだけであって、宇宙空間に出たとたん、飛び交う素粒子の嵐に身を置くことになる。

 また、初期の宇宙は、クォークなどがまるでスープのような状態で自由に飛び回っていたが、ビックバンから約1万分の1秒後に、クォークは陽子や中性子という粒子の中に閉じこめられた。今の世界にいる私たちは、自由に飛び回るクォークを見ることはできない。

 その後、陽子などが集まって原子核を作り、原子が生まれ、さらに星が、そして地球が作られてきた。宇宙の始まりから現在までの長い間には、まだ解明されていない謎がたくさんある。私たちをつくる素粒子は原子ではなく、クオークやレプトンである。私たちのルーツを探る旅は、まだ始まったばかりである。

 

参考HP Wikipedia「レプトン・クオーク」「ミュオン」・J-PARC「原子核素粒子研究」  

ビックリするほど素粒子がわかる本 クォークはどうして姿を見せないのか? ニュートリノはなぜ地球を突き抜けるのか? (サイエンス・アイ新書)
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「J-PARC」から「スーパーカミオカンデ」へ!ニュートリノ振動の謎を追う

2010年02月27日 | 物理

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 スーパーカミオカンデ 
 1987年、岐阜県飛騨市にある「カミオカンデ」で超新星SN 1987Aの 爆発によるニュートリノが初めて観測された。ニュートリノ天文学の記念すべき第一歩である。ニュートリノの飛来した方向、時刻、エネルギー分布が詳細に分析されたのはこの観測が初めてであった。この成果によって東京大学名誉教授の小柴昌俊博士が2002年にノーベル物理学賞を受賞した。

 2010年、2月24日新しくなった「スーパーカミオカンデ」で、茨城県東海村で人工的に作られた素粒子「ニュートリノ」を検出することに初めて成功した。この実験では、ニュートリノが飛行中に別の種類のニュートリノに変わる「ニュートリノ振動」という現象を調べることを目的としている。果たして、ニュートリノ振動は観測されたのだろうか?

 人工ニュートリノを検出
 高エネルギー加速器研究機構(KEK)や東京大宇宙線研究所など国内外の研究者で組織する「T2K実験グループ」は25日、茨城県東海村で人工的に作られた素粒子「ニュートリノ」を約295キロ離れた岐阜県飛騨市で検出することに初めて成功したと発表した。

 ニュートリノは物質を構成する最小単位、素粒子の一種。詳しい性質が未解明で、人工的にニュートリノを発生させ、遠くに飛ばしてその振る舞いを検出する実験が各国で行われている。

 今回は、昨年4月にニュートリノ発生に成功した東海村の大強度陽子加速器施設「J-PARC」から、飛騨市の検出器「スーパーカミオカンデ」に向けてニュートリノを発射。24日午前6時、スーパーカミオカンデ側で検出が確認された。今後、発射を増やし、研究を進展させる。(毎日新聞 2010年2月25日)

 ニュートリノとは何か?
 物質を構成している最小の粒子を素粒子と言う。現在では、最小の粒子は原子ではない。原子核の陽子や中性子を構成する粒子の仲間(クオーク)と電子の仲間(レプトン)が素粒子と考えられている。レプトンのうち、電気を持たない粒子をニュートリノと呼び、電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノの3種類がある。

 ニュートリノの存在は、放射性物質のベ-タ崩壊(物質中の中性子が電子を放出して陽子に変わること)のとき、放出されるエネルギーの量が理論的な値より少なく、どこへ消失したのかが問題になったことで、考え出された想像上の粒子であった。

 ニュートリノの発見
 1930年、オーストリアのW.・パウリがベータ崩壊では中性の粒子がエネルギーを持ち去っているという仮説を公表。これが後に「ニュートリノ」になる粒子だった。

 1932年に中性子が発見されたのをきっかけに、エンリコ・フェルミはベータ崩壊のプロセスを「ベータ崩壊は原子核内の中性子が陽子と電子を放出しさらに中性の粒子も放出する」との仮説を発表。この粒子を「ニュートリノ」と名付けた。

 1956年、アメリカのライネスらによって、原子炉から生まれるニュートリノが初めて発見された。

 1969年、アメリカのデイビスが太陽ニュートリノの観測を開始。観測を重ねた結果、ニュートリノは理論からの予想の1/3程度しか発見されなかった。このことは、「太陽ニュートリノ問題」と呼ばれた。

 1987年、超新星SN 1987Aの 爆発によるニュートリノが初めて観測された。ニュートリノ天文学の記念すべき第一歩と紹介される。ニュートリノの飛来した方向、時刻、エネルギー分布が詳細に分析されたのはこの観測が初めてであり、ニュートリノ天文学を大きく飛躍させた。この成果によって東京大学名誉教授の小柴昌俊博士が2002年にノーベル物理学賞を受賞した。

 ニュートリノに質量はあるか?
 ニュートリノに質量があるかという問題は、これまでの物理学では解決していなかった。ところが質量があるときにしか現れない「ニュートリノ振動」と見られる現象が次々と明らかになったことで、ニュートリノに質量があることがわかった。

 1998年6月にスーパーカミオカンデ共同実験グループは、宇宙線が大気と衝突する際に発生する大気ニュートリノの観測から、ニュートリノ振動の証拠を99%の確率で確認した。 また、2001年には、太陽からくる太陽ニュートリノの観察からも強い証拠を得た。

 ニュートリノ振動とは何か?
 ニュートリノには、電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノの3種類があるが、いつもひとつの性質を保つわけではなく、飛んでいるうちに互いに入れ換わっている。

 太陽からやっていくる太陽ニュートリノや宇宙線が大気にぶつかって発生する大気ニュートリノが、その道のりの途中で他の種類のニュートリノに移り変わるのが「ニュートリノ振動」である。

 加速器で100%純粋なミューニュートリノを作っても、距離と共にある割合で別のニュートリノに変化する。これは、ニュートリノが重さをもち、世代間の混合がある場合に限り起きる現象である。

 

参考HP Wikipedia「ニュートリノ」「ニュートリノ振動」・KEKプレス「スーパーカミオカンデでJ-PARCからのニュートリノ初検出 

ニュートリノは何処へ―宇宙の謎に迫る17の物語
ジョン グリビン
シュプリンガー・フェアラーク東京

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別冊日経サイエンス164 ニュートリノで輝く宇宙(カミオカンデから始まった物理学の革新)

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RHIC 宇宙創成直後 4兆度再現!あなたの知らない超高温の世界

2010年02月19日 | 物理
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 温度計ではかれる温度
 身の回りの温度計、何度まではかることができるのだろう?

 日常目にするものは100℃までのものがほとんどである。天ぷら用の温度計で約200℃まで、このあたりまでなら市販されている。しかし、それ以上高温となると一般では手に入らない、特殊な温度計が必要となる。高い温度を正確に測定するのは現代でも難しい課題だ。

 そんなに高温なんて、日常ほとんど使わないから関係ない?ちょっと待ってほしい。高温の世界には重要なことがたくさんある。

 例えば、物が燃える温度は発火点といって、物質によって違う。燃え出す温度を発火点と言って、紙の発火点は450度、木の発火点は400~470度位。マッチに使われている赤リンは発火点がとても低くて260度位。マッチは燃え始めは低い温度だが、火が付いた瞬間のマッチの温度は何と2500℃にまで上昇する。

 あなたの知らない高温の世界
 よい鉄をつくるには、正確な鉄の融点 1,535 ℃の測定が欠かせない。広島に落ちた核分裂原子爆弾の1秒後の温度は 3,027 ℃ 爆心地にいた人は一瞬で蒸発してしまい影だけが残った。

 5,507 ℃ は太陽の表面温度。私たち人類が生きるためには、太陽エネルギーがなくてはならないが、太陽の中心温度は約1400万℃、核融合反応の起きるためには、温度が最低でも約1000万℃は必要だという。

 人類がこれまでに核融合実験でつくった最高温度は、約5億℃だ。1億℃を越えると、3つのヘリウム原子核がトリプルアルファ反応により核融合を起こし、炭素が生成され始めるという。 

 宇宙の始まりビッグバンから30万年後にはまだ宇宙は 5,927℃高温だったという。ビッグバン後10,000 年後の宇宙の平均温度では 24,727 ℃。もっと遡って宇宙の誕生直後はどのくらいあったのだろうか?

 熱力学の第3法則により、温度の正体は原子のエネルギー状態に等しいから、高い方に上限はない。「温度0=エネルギー0」の状態は理論的にはあるが現実にはない世界。

 宇宙創生直後の超高温状態再現
 そんな不思議な熱・温度の世界であるが、理化学研究所と高エネルギー加速器研究機構は2月16日、金のイオン同士を衝突させ、約4兆度という実験室で実現した温度としては最高記録を達成したと発表した。

 実験は、米ブルックヘブン国立研究所の相対論重イオン衝突加速器(RHIC)を用いて行われた。4兆度は太陽中心温度の10万倍も高く、また、これまで理論計算法を用いた大規模計算機シミュレーションで得られた宇宙創生直後の温度推定値約2兆度をはるかに上回っている。

 このような高温を直接測る温度計はない。衝突の結果、バラバラに壊れた粒子の一部が瞬時に熱的光子に崩壊する現象を利用し、熱的光子の発生量とエネルギー分布を正確に測定することで温度を割り出すことに成功した。

 約4兆度という高温では、陽子や中性子を構成するクォークとグルーオンがプラズマ状態になっていると考えられている。宇宙ができた直後の数十万分の1秒の間、宇宙はクォークとグルーオンのプラズマ状態で満たされていた。その後宇宙が冷えて、クォークとグルーオンは陽子や中性子に凝縮、さらにその後、原子核や原子とそれらが集まってできる星がつくられたという。

 どうしてこのような研究の意味があるのかについて理化学研究所と高エネルギー加速器研究機構は、宇宙創生直後の宇宙の状態をより詳しく研究できることに加え、素粒子の基本作用の一つである「強い相互作用」とその理論である量子色力学の性質を解明できる、と説明している。(サイエンスポータル 2010年2月17日)

 熱的光子で分かる超高温
 衝突初期に発生する光の粒子である光子は、高温物質から熱的に放射されるため、熱的光子と呼ばれる。熱的光子は、その周りに作られている高密度物質によって乱されることなく外部に放出される。その発生量とエネルギー分布は、衝突初期の温度とその後の時間発展を反映している。このため、この熱的光子を測定することで、衝突初期の温度を直接的に測定することが可能になる。
 
 しかし、この熱的光子の測定は非常に困難。RHICの金原子核同士の衝突では、衝突1回あたりに数千個もの崩壊した粒子が発生(生成)するが、これらの粒子の中には、発生後瞬時に光子に崩壊するものも多く、それが測定したい熱的光子を隠すバックグランド(雑音光子)となり、測定を難しくする。雑音光子の発生量は、熱的光子の発生量の約10倍もあり、しかも雑音光子と熱的光子を直接区別する方法はなかった。
 
 研究グループは、高エネルギーの光子の一部が、電子とその反粒子である陽電子の対(電子・陽電子対)に変換することを利用して、熱的光子を雑音光子から分離し、その発生量とエネルギー分布を測定することに成功した。アインシュタインの有名な質量とエネルギーの関係式 E=mc2 に従って、光子(エネルギー)は物質(電子・陽電子対)に変換。光子が電子・陽電子対に変換する割合は、理論により正確に計算することができるため、光子自身ではなく、電子・陽電子対を測定することで、もとの光子の発生量を求めることができる。

 雑音光子を物質から算出
 研究グループは、電子・陽電子対の測定領域を適当に選ぶことで、雑音光子の量を約5分の1に減らした。残りの雑音光子成分については、その元になる親粒子の生成量を測定し、雑音光子の発生量を計算して差し引くことで、余剰光子成分を算出した。
 
 陽子同士の衝突では、高温物質を生み出すエネルギーに達することがないために、熱的光子は発生しない。また、金原子核衝突の場合と異なり、余剰光子成分はほとんど残らず、わずかに残った余剰光子も、反応初期に高エネルギーのクォークとグルーオンが衝突した結果生ずる光子として説明できた。

 従って、金原子核衝突で観測した余剰光子は、その大部分が金原子核衝突で作られた高温物質から生じている光子、すなわち熱的光子と考えられる。
 
 こうして求めた、熱的光子の発生量とエネルギー分布を、理論予想と比較することで、反応初期の高温物質の温度を推定しました。その結果、理論計算から求められたクォーク・グルーオン・プラズマへの転移温度である約2兆度をはるかに超える、4兆度程度と推定された。

参考HP Wikipedia「核融合」・Panasonic Kids School「熱の不思議」 ・理化学研究所「重イオン衝突型加速器「RHIC」で4兆度の超高温

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手軽に安全に!紫外線殺菌する「ダイヤモンドLED」とは何か?

2010年02月14日 | 物理
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 紫外線とは何か?
 紫外線とは波長が10~400 nm、すなわち可視光線より短く軟X線より長い不可視光線の電磁波である。紫外線は波長 200–280 nm以下だと殺菌効果が高くなる。生体に対する破壊性も強くなる。これを利用して殺菌灯がつくられる。
 
 身近に紫外線を発光するものといえば、蛍光灯なのはご存じであろうか。蛍光灯は電子が水銀蒸気に当たることで、紫外線を発する。これが蛍光塗料に当たることで光っている。蛍光灯には水銀蒸気が低圧で入っているので水銀低圧灯ともいう。

 蛍光灯の蛍光塗料をなくしたものが水銀殺菌灯である。ただ、普通のガラスは紫外線をカットするので、水銀殺菌灯には石英ガラスを使っている。

 有用なLED紫外線殺菌
 新型インフルエンザなど世界的な流行性疾患の増大傾向から、社会や生活の中での殺菌の必要性が今後ますます増している。殺菌手段の中でも紫外線による殺菌はドライ方式で多くの場面で使われており、水銀灯による紫外線が利用されている。

 しかし、環境に好ましくない水銀を使うことや装置が大掛かりなことから、水銀フリーで手軽に殺菌できる紫外線LEDの開発が望まれている。LED照明はクリスマス電飾など省エネ的な光源として利用が広まっているが、紫外線発光するLEDはまだ実用化していない。水銀を使わない紫外線LEDの開発ができれば、どこでも簡便に使える殺菌灯として応用できる。

 産総研では究極の半導体と呼ばれるダイヤモンド半導体の高品質化を進め、電子デバイス応用を目指した研究開発を進め、励起子と呼ばれる状態を使った新原理で235 nmの波長をもつ紫外線の光を発するLEDの開発を進めている。

 安全・安定したダイヤモンドLED
 今回、ダイヤモンドの品質の向上とデバイス構造を改良することにより、0.3 mWという実用化に近づく発光出力を持つダイヤモンドLEDの開発に成功し、実際に大腸菌を殺菌することを確認した。この成果は、どこでも使える殺菌灯としての実用化に道筋をつけるものである。

 現在広く使われている窒化ガリウム系材料を用いたLEDでも紫外線を発光するLEDの開発が進められているが、波長が短くなるほど技術的に困難で、350 nm以下の波長のLEDは市販されていない。

 ダイヤモンドは半導体としての性質でも優れた性質を持っていることは知られていたが、高品質化や加工が困難であったため、シリコンのように応用されることがなかった。産総研の研究グループはダイヤモンドの作製技術から電子デバイスに必要な技術やダイヤモンドの物理に関する知識を蓄積してきた。

 その積み重ねに基づいて、ダイヤモンドの最初の電子デバイス実用化を目指して、ダイヤモンドに特徴的な励起子と呼ばれる状態を使って高効率の紫外線発光に成功した(2006年8月28日プレス発表)。この新原理LEDの光は波長235 nmであり殺菌に有効な紫外線である。今回、ダイヤモンドのさらなる高品質化とデバイス構造の改良により、発光効率の向上に成功し、殺菌に有効なことを実証した。

 関連するニュース
 殺菌能力持つダイヤモンドLED開発


 紫外線を発する発光ダイオード(LED)を産業技術総合研究所の研究グループが開発した。紫外線照射は殺菌の有力な手段となっているが、現在広く使われている水銀灯は装置が大がかりな上、環境に有害な水銀を使用するという欠点を持つ。紫外線発光ダイオードは水銀灯に代わる殺菌装置として実用化が期待されている。

産業技術総合研究所の山崎聡・主幹研究員、牧野俊晴・研究員らが開発したのは、ダイヤモンドLEDで、0.3ミリワットという実用レベルに近い高出力の紫外線を発光する。

紫外線は菌のDNAに直接作用することで菌の増殖を抑える効果があり、DNAが吸収しやすい波長260ナノメーター前後の紫外線が特に殺菌効果が高い。現在254ナノメーターの紫外線を出す水銀灯が広く使われているが、LEDでは波長の短い光を出すのが難しく、350ナノメーター以下の波長を出すLEDはまだ実用化されていない。(サイエンスポータル 2010年2月9日)

 

参考HP 産業技術総合研究所プレスリリース「ダイヤモンドLEDで殺菌を確認」・Wikipedia「紫外線」「紫外線殺菌灯」 

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次世代高速半導体 「ダイヤモンド半導体」とは何か?

2010年02月13日 | 物理
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 半導体とは何か?
 半導体は、トランジスタや集積回路(IC・LSI)など、「産業のコメ」と言われるほど様々な電気製品を産み出している。半導体とは何だろう?

 文字通りの説明としては、半分導体の物質である。つまり、電気を良く通す良導体や電気を通さない絶縁体に対して、それらの中間的な性質を示す物質である。

 重要なのは電気を通すときの性質だ。まったく電気を通さないときは絶縁体と変わらないが、電気を通すとき様々な能力を発揮する。すなわち、電流の整流作用や電流の増幅作用をはじめ、レーザー光や紫外線を発したり、さまざまな波長の光を発するものもある。また、太陽電池のように光を電流に変える半導体もある。

 半導体というと、このような半導体を使用した「半導体デバイス」を指す場合が多い。今日数多く利用されているものには、トランジスタ、サイリスタ (SCR)、ダイオード(整流器)・発光ダイオード (LED) ・レーザーダイオード・フォトダイオード・太陽電池等の半導体素子やこれらの素子を組み合わせた集積回路(IC・LSI)などがある。

 ダイヤモンド半導体とは?
 ダイヤモンド半導体(Diamond semiconductors)とは、人工ダイヤモンドを使用した半導体のことである。現在主流のシリコン半導体に比べ、ダイヤモンドは物理特性に優れており、究極の半導体になると言われているが、1980年代後半、米国では研究を断念し、その実用化は技術的に実現不可能と思われてきた。

 この理由は、天然ダイヤモンドには不純物を含むものが多く、純粋な物質に微量の不純物をドープ(混ぜて)してつくる半導体には、不向きだったからである。

 しかし、近年産業技術総合研究所などの日本の研究グループや日本国内の企業などで高品質ダイヤモンド薄膜の合成に成功するなど、基礎技術が大いに発展がしてきたことにより、実用化の可能性が開かれてきている。

 現在、日本国内にて複数の研究機関、大学等で開発が進められているが、結晶サイズが1mm未満の多結晶ダイヤモンド薄膜が利用されている。今後は、この結晶サイズを大きくすることや、コストを抑えての更なる高純度化技術の開発が望まれる。

 また現在、ホウ素イオンなどをドープし、p型n型といった半導体物性を発現している。しかし、ダイヤモンド格子に不要な欠陥を与えずにこれらのイオンをドープする技術の開発が課題である。

 電極などの他の物質との接触部で、ナノレベルの不要な界面構造が生じる。これを完全に抑える事は困難である...などの問題もある

 ダイヤモンド半導体の開発
 産業技術総合研究所ダイヤモンド研究センターの大串秀世・副センター長がダイヤモンド半導体の本格的研究に取り組んだのは、1995年から。開始1~2年後、高温高圧法で比較的短時間に、基板全体が原子レベルで平坦な、単結晶シリコン並みの高品質ダイヤモンド薄膜の合成に成功した。

 高温高圧法で合成した約4mm角の人工ダイヤモンド基板の上に、マイクロ波プラズマCVD(化学気相堆積)法で、メタンを分解して生じた炭素を雪のように降り積もらせた。この技術をベースにホウ素添加で作ったp型ダイヤモンド薄膜は、世界最高の電荷移動度を示した。

 さらに、こうして作った高品質(結晶性、電気光学的特性、簡単な電子デバイス特性が従来のものより一桁以上優れた)ダイヤモンド薄膜に室温で電子ビームを照射すると、波長235ナノm(1ナノmは10億分の1m)の紫外線を発光することを発見した。ダイヤモンドが紫外線デバイスに使えることがわかった。

 これまでの研究でダイヤモンド薄膜の室温紫外線発光は、ある電流値から急激に増大することから、高密度なエキシトン(負の電荷を持つ電子と正の電荷を持つ正孔を合わせ持ったもの)によるダイヤモンド固有の現象であることが分かった。

 今後、紫外線発光の出力を高めるために、エキシトン密度を高めることが重要で、それには素子を出来るだけ小さくすることが課題である。


参考HP 科学技術振興機構(JST)「夢ではないダイヤモンド半導体」・Wikipedia「半導体」「ダイヤモンド半導体」 

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第20回ノーベル物理学賞 ギヨームの「インバー合金の発見」

2010年01月31日 | 物理

 合金とは何だろう?
 合金とは何だろう?...そう、種類の違う金属と金属を混ぜ合わせたものである。では、どんな合金があるのだろう? 

 ステンレス鋼(Fe-Ni-Cr)、黄銅(しんちゅう:60Cu-40Zn)、青銅(Cu-Sn)、白銅(Cu-Ni)、赤銅(Cu-Au)、ジュラルミン(Al-Cu)、はんだ(Pb-Sn)...などおなじみの合金はたくさんある。

 では、なぜいろいろな金属を混ぜて合金にするのだろう?

 合金は純金属に他の元素を添加したもので、こうすると、もとの性質が変化したり、いままでなかった性質が現れたりする。例えば、さびやすい鉄がさびにくくなったり、融点、磁性、機械的強度、耐食性などが大きく変化する。組成を調節することで、様々な用途に応じた性質を持つ合金が生産・利用されている。

 さまざまな合金例
 ステンレス(Stainless steel)は、さびにくくするためにクロムやニッケルを含ませた合金鋼である。黄銅(brass)は適度な強度、展延性を持つ扱いやすい合金として、約350年ほど前から広く利用されるようになった。日本では5円玉で使われている。

 青銅(bronze)は、銅Cu を主成分としスズSn を含む合金である。青銅には、適度な展延性と、鋳造に適した融点の低さや流動性があり、鉄が、銅よりも安価かつ大量に供給されて普及する以前には、もっとも広く利用されていた金属であった(青銅器時代)。紀元前3000年頃、初期のメソポタミア文明であるシュメール文明ですでに発明されていた。鉄とともに日本に伝わったのは紀元前4世紀頃である。

 白銅(cupronickel)は、銅を主体としニッケルを10%から30%含む合金である。日本の100円硬貨、50円硬貨などに使用されている。海水に対する耐食性が高く、海水淡水化の設備や船舶関連の部品に多く使用されている。

 黄銅(brass)は、銅 と亜鉛の合金で、特に亜鉛が20%以上のものをいう。真鍮と呼ばれることもある。日本で現在発行されている五円硬貨の素材がこの黄銅である。適度な強度があり、展性に優れる。日本では、多くの金管楽器などにも多用されている。

 電子回路でよく使われる「はんだ」は、鉛と錫(スズ)を主成分とした合金である。合金にしたことで融点が低くなり、使いやすくなった。スズの割合が63%のとき、融点が184℃で最も低い。金属同士を接合したり、電子部品をプリント基板に固定するために使われる。

 熱膨張しないインバー合金
 このような様々な合金の中で、インバー(invar)は常温付近で熱膨張率が小さい合金である。ニッケル36%、鉄64%。Invarという名称はInvariable Steel(変形しない鋼)から名づけられた。日本語では不変鋼とよばれる。温度によって寸法が変化しないので、精密機器、精密測定器、時計や実験装置、LNGタンカーのタンク、ブラウン管のシャドーマスク等に用いられる。

 1897年にスイス人物理学者シャルル・エドゥアール・ギヨームがFe-36Ni合金でインバー特性を発見した。ギョームはこの功績によって1920年にノーベル物理学賞を受賞した。磁気歪みによる体積変化と通常の格子振動による熱膨張が相殺しあって、ある温度範囲での熱膨張が小さくなるのを利用するものである。

 1920年ノーベル物理学賞の受賞理由は「インバー合金の発見とそれによる精密測定の開発」である。
 
 シャルル・エドゥアール・ギヨームとは?
 シャルル・エドゥアール・ギヨーム(1861年~1938年)はフランス系スイス人の物理学者である。室温付近の温度変化に対して、体積膨張の小さい合金インバー(アンバー)、弾性係数変化の少ないエリンバーを発明した。1920年に「インバー合金の発見とそれによる精密測定の開発」によりノーベル物理学賞を受賞した。

 スイス、ジュラ地方のフルリエに生まれた。祖父はフランス革命時にロンドンに亡命し時計製造を始めた家系であるが、シャルルの父親の代にフルリエに移住した。チューリッヒ工科大学で学位を得たあと、パリの国際度量衡局に職を得た。1896年にインバーを開発した。このニッケル合金は室温付近で熱膨張が他の金属に比べてきわめて小さいので、サーモスタットや天文用時計の振り子などの精密機器の部品の材質として用いられた。

 国際度量衡局の局長をつとめ、温度測定について研究し、ジュネーブ大学、ヌシャテル大学、パリ大学から名誉博士号を送られた。(出典:Wikipedia)

参考hHP Wikipedia「合金」「シャルル・エドゥアール・ギヨーム」 「インバー」

見方・考え方 合金状態図
三浦 憲司,小野寺 秀博,福富 洋志
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金属における拡散-純金属および合金における拡散の基礎,理論,現象 (World physics selection:monograph)
Th.ホイマン,H.メーラー
シュプリンガー・フェアラーク東京

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「ヒッグス粒子」と「ダークマター」は同じもの?新宇宙理論誕生!

2010年01月07日 | 物理
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 世界の成り立ちに挑む
 物質を細かくしていくと分子や原子になることは誰もが知っている。原子は、さらに原子核と電子に分かれる。原子核は陽子と中性子に分かれ、陽子や中性子はクォークとレプトンでできている。ここまでは聞いたことがあるかも知れない。

 さらに先端科学では、なぜ、世界にはたらく力には3種類あるのか。なぜすべての物質に重さがあるのかという問いに答を出そうとしている。これらを説明する粒子としてグルーオンやウィークホゾン、ヒッグス粒子などを考えだした。このうちヒッグス粒子だけは未だに発見されていない。

 普通の人にとっては、どんな力があろうと、質量があろうがなかろうが、どうでもいいことかも知れない。しかし、この世界の成り立ちに関係するしくみを、人が考えられることが素晴らしいことであり、日本人の得意な分野で、ノーベル物理学賞で何人も受賞者を生み出したのが、この素粒子物理学の世界なのだ。

 自発的対称性の破れと相転移
 2008年にノーベル物理学賞を受賞した、南部氏の受賞した研究「自発的対称性の破れ」によると、質量が生まれたのも自発的対称性が破れて相転移が起きたからだという。

 もとはクォークもレプトンも質量はなかったが、ビッグバン直後に現れたヒッグス粒子が崩壊してヒッグス場をつくると、これにクォークやレプトンは反応して、質量が生じ、動きが遅くなる。ただ光子のみがこれに反応せず、質量はないという。

 例えて言えば、百メートル12秒で走れる人でも、プールの中では水の抵抗を受けてゆっくりしか走れない。この水の役割をするのがヒッグス粒子だ。

 「自発的対称性の破れ」では、このように一見、常識では考えられない現象が起きる。これを「相転移」というが、身近な例をあげると、磁力のない鉄が、磁界の中で突然磁力を持つようになったり、物質を低温にすると、超伝導現象が見られたりするのが「相転移」である。

 ヒッグス粒子とダークマター
 さて、未だに発見されていない、ヒッグス粒子とともに、発見されていないものとして、宇宙の1/3を占めるといわれるダークマターがある。 

 先日、大阪大の細谷裕教授が、ノーベル賞を受賞した南部陽一郎博士の理論からその存在が予測されたヒッグス粒子が、宇宙を満たす謎の暗黒物質(ダークマター)と同じものであるという新理論をまとめた。

 “二つの粒子”は、物理学の最重要テーマで、世界中で発見を競っている。暗黒物質は安定していて壊れないが、ヒッグスは現在の「標準理論」ではすぐに壊れるとされており、新理論はこれまでの定説を覆す。証明されれば宇宙は私たちの感覚を超えて5次元以上あることになり、宇宙観を大きく変える。

 ヒッグス粒子は崩壊するか?
 ヒッグスは、質量の起源とされ、普段は姿を現さないが、他の粒子の動きを妨げることで、質量が生まれるとされる。

 一方、衛星の観測などから宇宙は、光を出さず安定した暗黒物質で満ちていると予想されている。細谷教授は、宇宙が時間と空間の4次元ではなく、5次元以上であると考え、様々な粒子が力を及ぼしあう理論を考えた。その結果「ヒッグスは崩壊せず、電荷を持たない安定した存在」となった。

 欧州にある世界最大の加速器(LHC)では最大の課題としてヒッグスの検出実験が行われる。ヒッグスが不安定なら、崩壊時に観測が可能だが、細谷理論のように安定だと観測できないという。ただ、新たな実験手法で検証は可能という。

 一方、暗黒物質候補も2009年末、「発見の可能性」が報告されたが、細谷理論と矛盾しないという。

 細谷教授は昨年8月に欧州の物理学誌に新理論を発表。秋に来日した南部博士にも説明した。南部博士は「今まで誰も気づかなかった見方で、十分あり得る」と評価したという。

 小林富雄・東京大教授(素粒子実験)の話「美しく素晴らしいアイデア。数年で新理論を検証できる可能性がある」(2010年1月5日  読売新聞)

 ヒッグス場とヒッグス粒子
 ヒッグス粒子とはヒッグス場を説明するために考え出された。ヒッグス場とは、1964年にエディンバラ大学のピーター・ウェア・ヒッグスによって提唱された、素粒子の質量獲得に関する理論に現れる場についての仮説である。ヒッグス場によって質量を獲得するメカニズムをヒッグス機構と呼ぶ。

 ヒッグス機構では、宇宙の初期の状態においてはすべての素粒子は自由に動きまわることができ質量がなかったが、自発的対称性の破れが生じて真空に相転移が起こり、真空にヒッグス場の真空期待値が生じることによってほとんどの素粒子がそれに当たって抵抗を受けることになったとする。

 これが素粒子の動きにくさ、すなわち質量となる。質量の大きさとは宇宙全体に広がったヒッグス場と物質との相互作用の強さであり、ヒッグス場というプールの中に物質が沈んでいるから質量を獲得できると見なすのである。

 ヒッグス粒子と加速器LHC
 光子はヒッグス場からの抵抗を受けないため相転移後の宇宙でも自由に動きまわることができ質量がゼロであると考える。では、ヒッグス場は本当に存在するのだろうか?

 電磁場が存在すれば光子があるように、ヒッグズ場が存在すればヒッグス粒子が最低1種類あるはず。ヒッグス粒子の性質は理論でよく予言されているので、どのような方法で発見するかはわかっている。

 これまでの実験でまだ発見されていないので、ヒッグス粒子は114 GeV より重いはず。理論の予言もまた間接的実験結果も、ヒッグス粒子は 1000 GeV (1兆電子ボルト)より低い領域に存在すると強く示唆している。

 とくに 200 GeV より低い事がかなりの程度の確率で示唆されている。このエネルギー領域には次世代の加速器LHC(スイスで建設、2009年11月再開)やILC(計画中)で到達できるので、ここ10年以内にヒッグス粒子は発見される可能性が非常に高い。

 標準理論とは?
 素粒子物理学の三つの基本的な力すなわち強い力、弱い力、電磁力を記述する理論である。正確には、強い力の量子色力学と、弱い力、電磁力のワインバーグ・サラム理論、南部博士の理論、小林・益川理論を合わせたものなどが基礎になっている。

 それは場の量子論的方法で記述されているため、量子力学と特殊相対性理論の両方と整合している。今までのところ、三つの力に関するほとんどすべての実験結果は標準模型による予言と一致する。ただし、ニュートリノは質量ゼロの粒子として定義しているため、ニュートリノ振動などの実験結果を説明するためには修正が必要である。

 したがって、標準理論は基本的な力の完全な理論ではない。その理由として、先の三つの力の統一ができていない(大統一理論、超対称大統一理論を参照せよ)ことがあげられる。さらに、重力について何も記述していないことも大きな問題である。


参考HP Wikipedia「ヒッグス粒子」・キッズサイエンティス「やさしい物理教室 

場の量子論とは何か―統一理論へ近づくための根本原理 (ブルーバックス)
和田 純夫
講談社

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宇宙を支配する暗黒物質(ダークマター)とは何か!?―人類起源から量子論まで、解かれざる謎に最新科学が挑む (PHPビジネスライブラリー)
大浜 一之
PHP研究所

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