ウロコのつぶやき

昭和生まれの深海魚が海の底からお送りします。

雨の金沢ひとり旅・3

2010-07-31 12:59:00 | 大人の修学旅行
前回の続き。金沢編これでラストです。

2日目、雨足は大分弱くなり、しとしと霧雨の降るお天気に。
午前中は、今回ここに来た一番の目的であるプリンスアイスワールドin金沢に。
感想になってない感想はこっち。拍手コメントへのお返事はこっちの最後で書いたので、ここではスケートの話は飛ばして観光に行きます!

***

アイスショー終了後、広小路でバスを降りてにし茶屋町へ。
金沢にはにし茶屋町・ひがし茶屋町・主計町と3つの花街が残っているそうです。ひがし茶屋町や主計町の方が観光地として整備されているみたいですが、場所的に来やすかったんですよにし茶屋町。


この一角はきれいに整備されていて、かつての花街の雰囲気を伝えてくれます。
お昼ご飯がまだだったので、とりあえずこの写真の右に見えてるおそば屋さんに入りました。

蕎麦桐や

やたらプッシュされていた五福そば1575円なり。色んなお蕎麦がちょっとずつ食べられて楽しい。
冷たいお蕎麦につゆを上からかけて食べるのって珍しいと思ったんですが、この辺では普通なんでしょうか?


こちらは金沢市西茶屋資料館。入場無料でお茶屋のお座敷等が見れます。
お茶屋遊びのサワリだけちょこっと体験できるツアーもあるそうですが、ガイドさんが「高いですよー」と言ってました。本格的なお茶屋遊びとなると更に「高いですよー」。庶民には中々手の届かない世界のようでございます。

ちなみに、今回私は行きませんでしたが、ここの近くには妙立寺(別名:忍者寺)もあります。まだ行った事のない方は是非一度!(要予約)。なんで私が行かなかったかと言うと、ここも既に過去2回来てたから。そして一度足を踏み入れると、簡単には出て来れないから(笑)。楽しいですよー!!

***

その後、ちょっと思いつきで、犀川に沿って歩いてみました。

こういう、普通の場所にやけに風情があったりする。右側の石垣は年季が入ってそうだと思いました。


この石段とか、いつ出来たんだろう。


これが犀川。最終的にこの向こうに見えてる橋の所まで歩きました。


橋のたもとにはこんなカクカクした階段が。


「石伐坂(江戸時代、石行為の職人町があったから)」別名「W坂(みたまんま)」。
なんでここが「観光名所」なのかよく分からなくて気になってたんですが、


井上靖の小説に登場していたらしい。

なんとなく、昔の地形の名残が残ってるみたいで面白いと思ったんですが、毎日ここを通れと言われると確かにちょっと辛いかも知れない。

***

橋を渡った対岸には、川に沿って「犀星の道」と呼ばれる遊歩道が整備されています。


途中に句碑とか詩碑とかが立ってて、所謂「文学の小路」的な感じ?


街灯が大正ロマンな感じ。背景に見える犀川大橋もレトロ。

***

後は金沢駅に帰るだけ…なのですが、ガイドブックに載ってた手鞠のお店に寄ってみたいと思い、更にてくてく歩いていると。


藩祖前田利家公を祀った尾山神社を発見。
不思議な形の神門は国の重要文化財だそうです。

これも何かの縁と思い、拝殿だけでも参拝して行く事に。

茅の輪くぐりの輪っかが設置されていたので、これもくぐっておきましたよ。


犬千代様はこちらにいらっしゃったのですね。
仙台の政宗様の時にも思ったんですが、城下町を見て回ると、戦国乱世を生き延びて『藩祖』になり、地元の文化の礎を築いた人の凄さを再認識させられます。
ちなみにここには、利家の正室お松の方も合祀されていますが、祀られたのは意外と最近の平成10年。大河ドラマの影響力ってすごいですね。

***

ちなみにお目当てだったお店はこちら。
「加賀てまり 毬屋」
加賀指ぬきがちょっと欲しかったんですけど、完成品は最低でも3500円くらいするので、諦めて手作りキットの方を購入。
細かい手作業で作られていることを思えば納得の値段なんですけどね、加賀指ぬき。まだ工場で大量生産されていない伝統工芸。次に来た時こそは完成品を手に入れたいものです。

***

一通りの目的を達成して金沢駅へ。
金沢百番街でお土産を買ってあとは帰るだけ。


お麩屋さんの経営する不室屋カフェで生麩の入ったあんみつを食す。

この後、再びサンダーバードで大阪へ。

***

楽しかったです、金沢。
なんかまだまだ行きそびれた所や買いそびれたものもあるので、また何かあったら是非行きたいですね。

雨の金沢ひとり旅・2

2010-07-28 09:58:00 | 大人の修学旅行
※金沢PIWの感想になってない感想はこっちで。
※拍手コメントへのお返事はこっちの最後で。

ここにはスケートの話はありませんです念のため。

***

前回からのつづき。
香林坊からバスに乗って金沢21世紀美術館
今回の旅の『本命』のひとつ(あともうひとつは当然PIW)。

よく考えると加賀百万石四百年の歴史と伝統と明治文学の薫り漂う金沢にあって、一際異彩を放つ現代的なスポット。
私が以前金沢に来た時にはまだ出来てなくて、金沢と言えば兼六園一択!みたいな雰囲気でした。久しぶりに来てみてびっくり、ガイドブックの一番最初に兼六園より先に紹介されてるんですよ。人気のスポットとは聞いてたけどこれほどとは。


『アートに対する敷居を低く!』というコンセプトで設計された(らしい)建物。塀のない平屋建て&ガラス貼りで中の様子が見えるので、確かに「楽しそう、入ってみよっかな?」という気持ちにさせられます。
『アート=高尚・難しい』ではなく、『アート=おしゃれ・ユニーク』という感じ。
余談ですが、この建物を設計した妹島和世さんが、海外で大きな賞を受賞したそうです。

プリツカー賞:受賞で妹島・西沢両氏が9月に記念講演--金沢21世紀美術館 /石川


部分拡大。屋根の上には、常設展示の「雲を計る男」が。


庭には触って遊べる作品が展示されています。天気のいい日に来たら楽しそう。

***

現在、美術館で開催されているのは↓これ。
Alternative Humanities ~ 新たなる精神のかたち:ヤン・ファーブル × 舟越 桂

ちなみに私、舟越 桂さんもヤン・ファーブルさんも今回初めて知りました。
あと、ヤン・ファーブルさんが昆虫記で有名なアンリ・ファーブルのお孫さんだという事実は、一昨日調べて初めて知りました(汗)。

このファーブルさんの作品が、なんていうか『濃い』んですわー。
昆虫の羽をびっしり貼付けた作品とか、動物の骨を輪切りにしてくっつけて形にした作品とか、色々変わった事をしているんですが、見ている内にじわじわと…この人が何をやろうとしているのかが見えて来ると、何とも言えないエグい気持ちになって来ます。
何て言うかこの人、情け容赦なく『死』のイメージを突きつけて来るんですよ。いや、本気で『生』に向き合おうとするなら、本気で『死』にも向き合わなきゃならんと頭では思うけど、やっぱり怖いよー見たくないよー。私はまだまだ覚悟が足りん、と思い知らされました。

単にファーブルさんの作品を展示するだけじゃなくて、東西の古典作品とコラボさせることでその意味を立体的に浮かび上がらせたり、色々と面白い試みがなされていましたが、深く考えるとやっぱり怖い。

そして、虫が嫌いな人にとってはきっと別の意味で怖い(笑)。
私はキレイな虫は好きなので(こういう所が小3男子)、玉虫の羽根がびっしり貼ってある作品に関しては、逆に『作品』よりもその素材を観賞するモードに入ってしまいました。
あんなに大量の玉虫を使うなんてなんて贅沢なんだ!でも茶色い筋が入ってないから日本の玉虫とは違う種類みたいですね。どこの国のどんな種類の玉虫なのか。そしてどうやってあれだけ大量に調達したのか気になります。

玉虫の羽ということで、玉虫の厨子を連想した人も多いみたいですが、かく言う私も、子供の頃にNHKか何かの番組で玉虫の厨子を知ったせいで、この虫に対して変に思い入れが出来てしまったクチです。

***

一方の舟越 桂さん。
永遠の仔の表紙などで有名な方ですが、永遠の仔読んでなかったので知りませんでした(汗)。
ファーブルさんの、秘められたものを剥き出しにするような表現とは対照的に、想いを深く内に秘めて、表面はあくまで静かで美しいという印象。中にひとつだけ、すごく感情をあらわにした表情の作品があって、その表情がどうにも忘れられません。

***

で、そんな中に、ある意味一番人気(?)の常設展示『スイミング・プール』が。
これ、上からは無料で見えるけど、中に入るには有料ゾーンに入らなければならないのです。


中にいる人が基本的にみんな笑ってました。妙に楽しい気分になります。


水面に降る雨…が頭の上にあるという不思議な感覚。


こちらは「ブループラネット・スカイ
切り取られた空もこの日は雨模様。
ていうか、部屋に入ったらいきなり室内に雨が降ってたのがなんかシュールでした。

***

この後、余裕があったら兼六園の方も回ろうかと思ってたんですが、段々雨足が強くなり、この時間帯にはほぼ滝のような状態に。
兼六園は過去に2度見に行ってるのであっさり断念し、ミュージアム内のカフェレストラン「Fusion21」でお茶する事に。


「ヤン・ファーブル(ベルギー)」と「舟越 桂(日本)」にちなんだ和洋折衷デザートプレート。盛り付けもお洒落。真ん中のお醤油のアイスクリームが特に美味しかったです。金箔が乗っかってるのが金沢っぽい。

この後ミュージアム・ショップでお買い物したり(「金スマ」で大ちゃんが投げていたパーソナル・ダイスと同じ商品も売ってました。買わなかったけど)、「金沢・クラフト広坂」(美術館の庭先くらいの位置にある)を覗いたりした後、バスに乗ってホテルに向かいました。

…で、反対側のバスに乗ったり色々ありましたが、何とかホテルに辿り着いて1日目は終了。

ちなみに晩ご飯はここで食べました。
「旬のダイニング 十二の月」
飲みとしてはお手頃な価格で美味しかったけど、こういうお店は流石に友達と一緒に来た方が楽しいかなと思いました。

***

引っ張ってすみません。2日目に続きます。

***

拍手コメントへのお返事

□2010/7/29 13:08
こっちにもコメントありがとうございます。雨が降っても風情があるのがこういう古都の良い所…ですが、次は晴天の時に遊びに行きたいです(汗)。「アメリ」はあの暗さがたまりませんよね。

雨の金沢ひとり旅・1

2010-07-26 23:36:00 | 大人の修学旅行
※金沢PIWの感想になってない感想はこちらからどうぞ。
※このエントリーは観光旅行ネタオンリーですが、最後に拍手コメントのお返事は入ってます。

***

……という訳で、そろそろ一ヶ月前になりますが、金沢に行って来ました。


大阪からは特急サンダーバードで3時間くらい。意外と簡単に行けるというか、仙台や長野のことを思うとかなり楽ですね。

 
この列車は前2両が金沢止まり、残りは和倉温泉行きとなるため、金沢駅で車両の切り離し作業が行われていました。こういうものを見たことが無かったので、ものめずらしさに見物に行ったら可愛い先客が。

***

金沢の主な足はバスみたいですね。北陸鉄道の路線バスが充実してて、停留所のシステムも先進的。しかし、初心者が乗りこなすのは難易度高し。観光客向けに、メジャーな観光地を巡るバスも出てるんですが、これがまた種類が多くてどれがどれやら~な感じ。しっかり下調べしとかないと、正しいバスには乗れません。ちなみに私は、逆方向のバスに乗るという初歩的ミスをやっちゃいました(涙)。

とりあえす、金沢駅からバスに乗り、香林坊で降りて長町へ。


雨の中、加賀藩士の屋敷町だったというお江戸な町を探索。ここは修学旅行の時に来損ねたので、取りあえず一度は行きたかったんです。

最初に行ったのは、加賀藩の名家の屋敷の一部が残る武家屋敷跡野村家
ここでは自由に写真を撮って良いと言われ、「何て太っ腹!」と感激しながら撮りまくりました。

 
こういうの、普通なかなか撮らせて貰えないですよね。


如何にも『武家』のお家という感じの謁見の間とか。


「こんな雨の日には、まったり庭でも眺めてるに限るよね」
ここのお庭は、何か海外のリストに、兼六園より先に登録されたそうです。「規模や知名度ではなく、中身を評価して貰った!」というようなことが誇らしげに書いてありました。2日間滞在して分かったんですが、兼六園に限らず金沢は『庭』が多い。安土桃山の流れを汲む武士の文化ってヤツなのかな、と思いました。


池の鯉にすら貫禄を感じますな。

この他、小さな中庭を通って離れの2階にお茶室があったりと実に風流。
こんなワビサビな生活一度で良いから送ってみたいと思いながら、野村家を後にして次の目的地へ。

***


こういう、時代劇に出そうな光景を見るとテンションが上がりますね♪辻斬りとかしてみたくなる(しないけど)。

↑の奥にある「おいしいいっぷく鏑木」でお昼ご飯。

どこかのお家にお邪魔したようなお店で頂くじゃこどんぶり1000円なり。
ここのカウンターからも立派なお庭が見えます~。

ここは九谷焼の窯元(九谷焼鏑木商舗)が運営していて、九谷焼の販売・展示も行われています。


これは2002年日韓ワールドカップの時に公式グッズとして作られた九谷焼の招き猫だそうです。
丁度この時南アWCやってたので、タイムリーと言えないこともないネタ。
今となってはブブゼラとタコだけが強烈に思い出に残っています…。

***

長町ラストは前田土佐守家資料館


ここは撮影禁止だったので外観の写真だけ。

前田土佐守家というのは、加賀藩主前田家の分家。藩祖利家の次男に始まり、代々加賀藩の家老を務めたお家ということで、鎧兜や武具、古文書などを見学できます。

受付兼ミュージアムショップをで甲冑すごろくセット(500円)を購入。さっきサイトを見たら、今一番の人気商品らしい。多分ここでしか買えないレア感が魅力です。

***

写真が多くて長くなったので一旦切ります。次は21世紀美術館に行きます。

***

拍手コメントへのお返事

□2010/7/9 4:50
同意頂いてありがとうございます。
私もずっと違和感を感じて来たことが、2つに分けたことで自分の中ではわかりやすくなりました。

□2010/7/10 23:09
次のエントリーで詳細を書きますが、21世紀美術館すごく楽しかったです!次は天気の良い時に行きたいですね。
『アメリ』は確かに、観客に囲まれていても沈黙に支配されているようなプログラム。私はすごく気に入ってます。

□2010/7/13 22:12
私はランビエールさんは、振付師としてとても良い仕事をしてくれたと思うのですが、彼のファンは(今の所は)あくまでスケーターとしての彼のファンであって、振付師としての彼を見ている訳ではないのかなと思いました。ファンの方こそ「少し前までライバルだった」所から、意識を先に進めることが必要なのかもしれません。

□2010/7/23 16:35
確かに大ちゃんのファンの中にも、前評判を聞いて萎縮しているような空気は感じました。
ノリノリのダンサブルなプログラムもきっとステキだろうなと思いますが、同時にそういうのは他のスケーターがもうやってるから無理に見なくてもいいかな、とも思います。大ちゃんには、彼にしか出来ないことをやって欲しいと思うので。ランビエール氏には感謝です。

金沢に行ってきました

2010-07-08 01:34:00 | 日記
以前から度々書いていますが、私が常々感じている大ちゃんの魅力の一つに、「自分のものさしを持っていること」が上げられます。「今までこうして来たから」「みんながこうしてる・言ってるから」ではなく「自分に必要だから」「自分がそうしたいから」という視点で選択できる。バンクーバー五輪前後に話題になった「チーム高橋」も、「海外の有名コーチに付いて貰わなければ」という思い込みに捕われていたら実現できなかったと思います。

しかし凡人にはなかなかそうはいかないらしく。新EX「アメリ」への評価をみていると、思い込みというものの怖さをしみじみと感じます。
今回のDOIでは、ランビエール氏の出演は最初から発表されていたけれど、大ちゃんの出演が決まったのはショーの1週間前でした。当日、会場で真っ先にこのプログラムを見たのは、ランビエール氏のファンの方が多かったのではないでしょうか。そして振付師のファンが見れば、振付師に似てる所ばかりが目に付くのは当然だと思います(意識のフォーカスがスケーターより振付師に当たってるんだから)。そして最初に見た人の「ランビエールに似てる」という感想を見聞きした人が、実際に見る前から「『似てる』ってみんな言ってる」という思い込みありきになっちゃってるような(実況&解説にも原因があるかも知れませんが)。
大ちゃんが山陽新聞のインタビューで、競技用のプログラムについて「先入観なく見て欲しい」と語っているのも、そう言うことも関係あるのかなと思いました。
(そもそも、スケーターは振り付け師の動きをお手本にして動きを覚えるんだから、能力が高い程似るのは当たり前だと思うんですけどね。それが「高橋がすべる意味がない」と言われるまでに「いつものランビエール」でしかないというなら、憂うべきは振り付け師の引き出しのなさではないでしょうか。もっとも私は、ランビエール氏に似てるともコピーだとも全く思いませんでしたが。元々氏の演技をあんまり真面目に見てなかったというのもあるけど、見てても結論は変わらなかったと思います)

***

フィギュアスケートを見てて「表現力」という言葉を目にする度に思うこと。

体を使って音楽を表現すると言うことは、大きく分けて
(1)音楽を聞いてイメージを膨らませ、何をどのように表現するかを考える。
(2)イメージに基づいて実際に動いたり踊ったりする。
という2つの段階があると思うんですよね。
(1)はセンスの問題、(2)は踊りの技術や身体能力の問題に関わって来る事ですが。この2つがしばしばごっちゃになってる事に、違和感を感じることがよくあります。

表現の本質である、いわゆる「芸術的センス」というのは(1)の部分だと思いますが、この部分は目には見えない。ぶっちゃけ、分かる人には何も言わなくても分かるけど、分からない人には何を言っても分からない世界。故に実際には、誰の目にもはっきり見えてわかりやすい(2)の部分が主に評価されているように思います。ていうか、そうじゃないと採点競技として成立しないだろうし。
私から見るとトップレベルのスケーターたちは、(2)に関してはみんなすごい人たちだと思うんですよね。元々身体能力は高い人たちですしね。
でも(1)に関して非凡なものを感じさせる人は残念ながらほとんどいない。考えてみれば当たり前のことです。非凡な芸術的センスがあるなら、普通はスポーツやらずに芸術の道に進みます。わざわざ氷の上で飛んだり回ったりしなくても、表現の方法は他にいくらでもありますから。
それに、フィギュアの場合(1)は無理に自分でやらなくても、振り付け師に代わりにやって貰えますしね。(1)のセンスが全くなくても、(2)の身体能力さえ高ければ、「表現力」の点でもある程度は何とかなってるみたいです。スポーツだから、それはそれでアリだと思います。
でも見る方からすると、ある程度(1)のセンスを持ってる人の方が見てて楽しいです。スケーターがただ振り付け師に言われたことをなぞっているのか、それとも自分なりに「こういう事を表現したい」という意志を持って滑っているのか、見ていてなんとなく伝わってくるものはありますから。
(特に大事なのは、「何をどのように」の「何を」の部分ですよ。ここが無かったり借物だったりすると、「仏作って魂入れず」な演技になってしまうように見えます)

***

私が大ちゃんの「ノクターン」を見て一発でハマったのは、彼が(2)はもちろん、(1)に関しても人並み外れた「何か」を持っていると感じたからです。
「ノクターン」で感じたのは、優しい、静かな、切ない表現の向こうに見え隠れする底の知れない深い闇でした。
「こいつの目には、世界は一体どういう風に見えているんだ?」と、感動と同時に強い畏怖を覚えました。

そして「アメリ」を見た時にも、同じ暗闇をはっきりと感じました。「ノクターン」の時は霧の向こうに柔らかくぼやかされていたものが、クリアになって迫って来たと言う感じ(だから、最初見たとき無茶苦茶怖かった/汗)。

人が誰でも心の奥底に抱えている暗い闇。人には見せないし、自分にもきっと見えない・見たくない。そういうものを敢えて真正面から見つめようとする。
それは間違いなく、「オペラ座の怪人」のファントムの狂気を、人が誰でも持っている普遍的なものと捉える高橋大輔の感性だと思いました。
寧ろ、何で他人が振付けしてるのに、こんなに大輔ワールドが全開になってるんだろうとびっくりしたくらい。
(「ソロモン流」のcobaさんとの対談でも、eyeについて「隠しているものが見えちゃってる」と語ってましたね。多分彼は元々、人が隠している心の闇部に対して独自の感性を持ってるんだろうなと思います)

だから(2)の部分、具体的な表現の方法としてどういう手法を使うか?という部分にランビエール氏の持つ動きを取り入れたからと言って、それが「ランビエールのコピー」だとは私は全く思いません。

金沢のプリンスアイスワールドでは、その辺の動きの部分もだいぶ馴染んで来て自分流のアレンジを少しずつ取り入れて来ている感じでしたが(最後横たわる所もちょっとポーズ変わってたし)。
でも表現の本質である(1)の部分は、DOIの最初の時点でちゃんと確立されてたと思います。

そうは言っても、ランビエール氏から取り入れた新しい表現の手法による視覚効果にも中々に劇的なものがありました。
生で見た「アメリ」は…なんて言うか、凄かった。重力無視してた。ふわっふわのつるっつる。何の抵抗もなくすっすっと滑っていて、しかも滑る動きと踊る動きが完全に融合していて、この世のものではない何かを見ているような。
金沢のお客さんはみんな、大ちゃんを待っていた!みたいな反応でしたが、そんなお客さんの期待に見事に応えてましたよ。

***

ショー全体のことを言うと、今回は大ちゃん以外のゲストも鈴木明子ちゃん&村上佳菜子ちゃんと私好みのスケーターさんたちで楽しかったです。佳菜子ちゃんはえらく背伸びしたようなEXでしたが、センスのある子は年とは関係なくああいうのもやれるんでしょうね。プリンスチームの演目は、よく知られている曲を多用してるので入りやすいです(「上を向いて歩こう」がスタレビVer.だった♪)。去年まで競技に出てた小林宏一くんもメンバーに入ってましたね。彼はまだジャニーズにも籍を置いてるんでしょうか?見せ方の上手さは流石でした。スピードスケートのお二人もお元気そうで何より。荒川さんのフラメンコも大好きなプログラムなので、また生で見れて嬉しかったです。八木沼さんも相変わらず若かったです。
終演後のお花コーナーでも大ちゃん目当てのお客さんは多かったらしく、係の人に渡す端から花束が山盛りになって行ってました。私は花束渡すのが精一杯でしたが、大ちゃんの方から手を伸ばしてくれて、「がしっ」と握って握手してくれました。疲れてるだろうにずっと笑顔なんですよね。偉いなあ…。

※この次は、スケート全く関係ない金沢旅行記を上げる予定です。

***

□拍手コメントへのお返事

■2010/6/29 2:30
こちらこそ、喜んで頂けて嬉しいです。
「アメリ」なかなかにインパクトの強いプログラムですよね。ランビエール氏の事は詳しくないので、何がどうなって彼がここに辿りついたのかも不思議です。

■2010/6/29 13:33
狂気はあくまで私の一個人の感想です。バチェラレットにも通じてると思います。更に元を辿ればノクターンにも。衣装はどうでしょう。あの袖の長さは腕の動きを美しく見せていると思いますが。いずれにしても、シンプルな衣装が似合うと思います。

■2010/6/29 14:01
地元の方ですか?行って来ましたよ金沢!きっちり雨に降られましたけど(笑)。楽しかったです。いい所ですよね。21世紀美術館も堪能しました~♪

■2010/6/29 16:46
はい。私も最初に一回見た後、怖くてなかなか見返せませんでした(笑)。何か、すぐに受け止めて消化するには重過ぎる気がして。バチェラレットにはまだ、気持ち悪さを楽しむ余裕があったんですが、「アメリ」はガチで怖いです…。

■2010/7/2 23:31
熱い感想をありがとうございます。金沢、楽しかったです。
仰るように、動きにランビエール氏っぽいものがあったとしても、あの暗さは間違いなく大ちゃん独自のものだと私も思います。皆さん仰るように、「ノクターン」や「バチェラレット」に通じるものがあって、でもこの2つとも明らかに違うんですよね。その違いや怖さの正体に、それぞれ違った解釈があるのがとても興味深いです。正解は見る人それぞれの心の中にあるのかも知れません。