ウロコのつぶやき

昭和生まれの深海魚が海の底からお送りします。

『蒼天航路』王欣太(原作/李學仁)

2007-08-29 22:06:35 | 漫画
文庫にして全18巻。
友人がGWに持って来たヤツを、今回の帰省でやっと読破しました。
一応ネタバレありですが、元が超有名な話なのでネタバレも何もないかも。

中国の三国時代を舞台に、曹操(曹孟徳)の人生を描いた漫画です。敢えて、三国志漫画とは言いたくない感じ。
日本で「三国志」と言えば、「三国志演義」に基づいた作品が多いけど、これは講談と史書を元に創られた「小説」であって、書いてあることは必ずしも史実ではない。
で、この「蒼天航路」は「史書」よりの漫画だと友人は言ってたけど、その割に史実にはない演義オリジナルエピソードの「美女連環」とか「桃園の誓い」エピソードもしっかり入ってます。
決して「史書」に忠実な訳でも「演義」を否定してる訳でもなくて、それら諸々の資料を元に、独自の「三国時代ストーリー」を再構築しようと試みてるのかな。壮大ですね。

でもキャラクターがすごく漫画的に強烈にデフォルメされてて、あんまり真面目な歴史モノとしてはおススメできないかなあとは思いました。でも、デフォルメされているお陰で漫画としては面白かったし、あと、やたら登場人物が多い「三国志」モノの中でも「あんまり」誰が誰だか分からなくなるということが起きにくかったので、個人的にはOKです(やっぱり多少は混乱しましたけど)。

でもまあ、友人が「正史」っぽいと感じた理由も分かります。
「演義」では徹底して、蜀の劉備をヒーローに、魏の曹操を悪役に描いている。それに対して「蒼天」は曹操をヒーローとして中心に据えているという点で、あんまり「演義」っぽくは感じられないかも。
でも、曹操をヒーローとして描くこと自体は、それほど斬新には感じられなかったですね。元々日本人には曹操好きが多そうだし(日本人に織田信長が人気だ、と中国人に言うと、中国人は、「えー、だって信長って曹操と同類じゃん」と応えるという話をどっかで読んだんですがどこだったかな)。
何か、劉備の「仁」とか「徳」っていうのは、漠然としてて分かりにくい。その点曹操はすこぶる頭がキレる。理知的で論理的。
陳舜臣は理性の人だから、彼の書く三国志も曹操びいきだったと思うので、実は私はそんなに曹操が虐げられてるとは思ってなかったり。横山光輝の三国志でも、曹操は悪役っていうよりは、主人公のかっこいいライバルってイメージじゃなかったでしたっけ?

そんな訳で、曹操くんがヒーローの漫画なんですが。
が。

意外なことに、この漫画の劉備(劉玄徳)がえらくかっこ良かった。
だらしなくていい加減だけど憎めない。飄々としてつかみ所がなく、誰でも受け入れ、水のように相手の心に入って来る、とてつもなく懐の広い男。
「演義」ベースの聖人君子な優等生くんより、はるかに生き生きとして魅力的な劉備だと思ってしまいました。「王道」とはこういうことかと。

頭の良い人が、その才覚を以て権力の座に着くことを「覇道」と言います。普通はこういう人が「英雄」とされますが、中国ではそうではない。
「覇道」は所詮、人の道なのです。天の意に背いて、人間が勝手に権力の座に着くことは、決して褒められたことではないのです。
曹操はこのタイプ。徹底した頭の良さで、自らの知略によって一国の主人へと上り詰めた。
しかし中国では、一国の長というものは本来、「天によって任じられた者」にしか許されないものなのです。
それが「王道」。知謀や知略を駆使しなくても、その仁と徳により、天の方からその者に位を与えるのが理想とされている訳です。
劉備自身、最初は大望は抱いていないし、増して権力を得るための具体的なプランなんて持っていない。なのにまるで天が彼を導くように、運命が彼を駆り立てる。人が集まり、人が彼を望む。

天に望まれた者。王道を行く者。あらゆる人を受け容れる、大いなる「空」。
劉備という人が「英雄」である所以を、これほど分かりやすく伝えてくれた作品はなかったなーと思いました。

それに対して曹操は…確かにかっこいい。素晴らしくキレる頭、人並み外れた剛胆な精神力と実行力。過去や因習に捕われない斬新で合理的な発想の数々。その上芸術的センスも良くて詩も上手なスーパーマンなんですが…どう見てもフォローのしようのない「悪事」まで、「それも全部分かった上でやってるんだよ!」的なフォローが入るのがちょっと見てて苦しかったです。

***

まあ、結局曹操も劉備も志半ばに倒れた上に国自体も結局長続きせず、最終的に統一国家(晋)を建てたのは曹家の家臣の司馬懿(司馬中達)の一族だったというのがオチなんですけどね。
そこまで行かずに、曹操が死んだ所でこの漫画は終わります。

個人的に、終盤ちょこちょこ出て来ては色んなことを呟く、ヒッピー兄ちゃん風の何晏が面白かったです。

おまけ。
一応この漫画のネタバレなので要反転。
最後の最後、あれだけ長年連れ添って尽くして貰った卞玲瓏を差し置いて水晶かよこの男は!と思ったのは私だけですか?

F1トルコGP

2007-08-29 10:33:57 | F1
実家に帰るなり父が私に言った一言。
「ホンダもトヨタも遅えのう」
全くだ。

スーパーアグリはあれで、チームの規模や体制を思えばよくやっている方だから良いとして。
山本左近がいつの間にかスパイカーにいるのはいいけど、あのチームはシーズン中に何回名前と持ち主を変えるんだろうとかそういうのも取りあえず置いといて。

ヤフーのトップに出て来るトピックスがどういう基準で選ばれてるのかは知らないけど、決勝や予選ならともかく、何でフリー走行の順位なんかが出てるんだろうと思ってたら、そういう時に限ってトヨタが上位に入ってたりして、何やら勘ぐりたくなって来たりして。

でも決勝でフタを開けてみれば、トヨタもホンダもアレな位置に終わってました。
日本GPに向けて盛り上がらないこと夥しいですが、どうせ日本GPもフジなのでどうでもいいです。
サーキットへのアクセスがバスだけ、というのは、TIサーキット英田(現・岡山国際サーキット)で昔経験しましたが、正直言ってしんどいです。徒歩圏内に駅がある鈴鹿が天国のように思えました。
それにTIの時は、隣町に湯郷温泉っていう結構大きな温泉街があって、そこの温泉宿に観客やチーム関係者が泊まれたからまだ良かったけど富士にはそういうのもなさそうだし。
…ま、いいか。切符が売れなきゃ、どうせトヨタが下請けに動員かけて席埋めるんだろうし。私が心配することじゃないさ。

***

ジャパンパワーが迷走する中、トップグループも混迷の気配を見せて来ました。主にフェラーリとマクラーレンの2強ですが。
ハミルトンの予想外の活躍に、アロンソとのトラブルが浮上。
元々ロン・デニスってドライバーの好き嫌いがものすごく分かりやすいですもんね。普通に考えれば、2度のタイトルを持つアロンソと新人のハミルトンなら前者が圧倒的に優遇されるもんなんですが、でも多分ロンにとっては自分が手塩にかけて育てて来た、キャラ的にも優等生的でロン好みなハミルトンの方が可愛いに違いない。それで実際成績でもハミルトンに先行されてるもんだから、アロンソがスネたくなるのも分かるような気がします。
そしてそんな所へ顔を出して「フェアプレーでいかないとね」とか言ってるミカは、相変わらず絶好調でミカです。
こんな状況を予期していたかのようなメルセデスのCM↓
http://www.youtube.com/watch?v=5C0I7Ef4gQI
某サイトのお影で、日本では流れないメルセデスのCMが見られるのは有り難いんですよね。ミカ出演の面白いCMは他にも多数。イリヤ様との競演作も傑作です。ヨーロッパのCMプランナーはレベル高いなあ…と見る度に思います。

話が逸れました。

そんなこんなで、ハミルトン VS アロンソ チームメイト同士の争いは如何に、フェラーリキミ・ライコネンの反撃はあるのか?! とか言ってる時に限ってマッサが勝ちます。
なんか段々マッサが怖くなって来ました。何か妙な運を持ってるのかもしれない、この人。

***

拍手コメントその他へのお返事。

前回のエントリーについて、メール及び拍手にてコメント下さった方、ありがとうございました。
件の記者に関しては…メール頂いてどういう人かよく分かりました。F1で言えば赤井邦彦みたいな人だと思っておきます。99年の鈴鹿で、ミカがシューマッハを破ってチャンピオンになった時の錯乱っぷりは今思い出すと笑えます(当時は相当頭に来たけど)。
別に抗議とかしませんが、彼が幻想を現実と取り違えている限り、現実に裏切られる日々は続くだろうなと思いました。以て他山の石としましょう。

灼熱の5番ホーム

2007-08-28 01:12:15 | 日記
前回のエントリーで書いた「無難」表現に対する発言について。
もののついでに軽く流すには重いネタだったみたいなので、簡単に補足。
あんまり楽しい話ではないので、興味のない方は流して下さい。

***

ええと、私が「プロなのに」と書いたのは、別に「こっちゃ金払ってんぞ!」という意味で怒っている訳ではありません。(その後のコメントで「金を払う価値がない」と書いたので話がややこしくなっちゃったかも知れませんが)。

これだけ情報が反乱する時代であっても、「新聞」というのは未だに「権威」だから、「権威」を持った者が、その「権威」をいい加減な覚悟で行使するなと、そういう意味で怒ったのです。
「マスコミなんていい加減なもんだもん。信じないもんねー♪」と悟っている一握りのお利口さんは良いですが、世の中まだまだ、「新聞に書いてあることは正しい」と思ってる人は多い。そこらのゴシップ紙じゃなくて大手一般紙の記者が書いた記事なら尚の事。
そこら辺の得体の知れないブログで、何の権威も持たない一個人が勝手に書き散らかしているなら「こいつ、アホやな」と思われておしまいですが、新聞社から配信されたニュース記事は「信頼に値するソース」と位置づけられているわけで。
その重みをちゃんと分かってね、と言いたい訳なんですよ。

別に美麗で華麗な文章を書けと言っている訳ではありません。本来「事実をありのままに伝える」役目を持つ者が、勝手に判断して情報にバイアスをかけるな、と言ってるだけです。
判断は自分でします。判断の材料となる事実だけを、過不足なく伝えて欲しいと思ってるだけ(仮に嘘は言ってなくても、事実の内のどれを伝えてどれを伏せるか、その取捨選択だけでいくらでもバイアスはかけられますけどね)。

***

で、「無難」という表現ですね。
たった一言、とお思いになる方もいるかも知れませんが、一言をバカにしてはいけません。
ちょっとした一言が、てこの軸のように全体の意味を変えてしまうるというのはままある話です。例えとして適当かどうかは分かりませんが、字幕翻訳者の某戸田奈津子女史は「嘘つき!」の一言だけで、「ロード・オブ・ザ・リング」3時間のストーリーをぶち壊しました。
増して見出しはキャッチコピーです。短い文字数で如何に見るものの興味を引くかの勝負所。一言、一文字たりとも、無意味な言葉はないはずなんです。

「無難」という言葉が示す意味は、「特に文句をいう所もないが、とりたてて褒める所もない」ということでしょうか。褒める所がないなら何も言わなければいいだけなのに、わざわざそれを言う所で暗に「つまらない、価値がない」という印象を与えようという意志を感じたんですよね。
更に言うなら、「無難」には「安全策を取って無理をしない」という意味もある。褒め言葉としても使えないことはないけど、どっちかというと攻めてない、挑戦していないという消極的な印象を与える。
ていうか、ぶっちゃけ「手抜き」とか「逃げ」とかそういうマイナスの印象の方が大きいかなと思います。
そもそも、試合でもなくあくまで「見世物」であるショーで、何でわざわざ「攻めてない」なんて意味のことを言われなければいけないのかも謎なんですが。
それ以上に、手を抜いたのかなんて本人にしか分からないことを、赤の他人が勝手に勘ぐって決めつけて良いことではないと思います。大ちゃんに限らず、あらゆる競技の選手、そして表現者に対して。
見る側が面白くない、つまらないと思うのは百歩譲って仕方ないとして(それでも公の報道機関にある人間が、そういった個人の感想だけで文を書くのは問題があるとは思いますが)。
本人がどんな思いでどれだけ努力して来たかなんてそう簡単に他人に分かる訳もないんだから、「どうせ簡単なことしかやってないんでしょ?」みたいなことは私なら怖くてそうおいそれとは書けないなあ、と思っただけです。

何も「華麗な」とか「情熱的な」とか取って付けたような美辞麗句を書けとは言ってないし、「斬新で芸術的な云々」とか語られたら逆に引きますが。
特に褒める言葉が見つからないなら、普通に「ミスのない演技を披露した」で済む所に、わざわざ「無難」なんて言葉を選択する辺り、「意地でも褒めてやるもんか」みたいなそこはかとない悪意を感じて、そこにうんざりしただけです。

***

延々語った割に、中身は全然大したことありません。
所詮ここは、そんなアホ女が一人で呟いてるブログなので、あんまり気にしないで下さい。

***

で、タイトルの「灼熱の5番ホーム」なんですが、これは岡山駅の5番ホームのことです。
岡山駅、最近改装してて、5番ホームも割と最近できたみたいなんですが…。
暑い。寧ろ、熱い。幾らなんでもこの暑さはおかしいと思ってよく見たら、ホームの向かい側の壁に沿ってずらっっっとエアコンの室外機が並んでました…。
熱風を吹き出す数十の室外機を前に、サウナ並みの暑さの中電車を待ちながら、文明の歪みを考えずにはいられませんでした。
嘘です。暑さで思考停止してました。JRの人はもうちょっと考えて駅を造って下さい。

そんな訳でやっと実家に帰って来ました。

フレンズ オン アイス2007(その2)

2007-08-20 00:06:54 | 日記
(その1)からの続き。
まとまらないので、まとめません(開き直り)。

■改めて、「バチェラレット」
紹介のアナウンスで「リハーサルから和気あいあいとして楽しい」と言っていたので、本当に今回のショーは楽しめてるんだなと思いました。
そして実際ショー自体、終始和気あいあいとした和やかなムードで進んでいたように思います。

が。

「バチェラレット」が始まると、一転してシリアスに。良い意味で、冷たく張り詰めた空気を感じました。例によって細かい部分を色々変えて来ていて、何やら啜ったり舐めたりするような仕草が入って来てるみたいで、なんていうかその、生々しい。食欲と性欲とは、生存欲求という意味で繋がっている。人間が理性で覆い隠しているその本能の醜さと崇高さを、剥き出しにして突きつけて来るような。
…なんて考えるのは後から思い出しながらであって、その時その場では、ただその不可思議な動きをほけっと見ていることしか出来ないんですけどね。
今回、途中に両手でクイっとやる所(あれがどうしても、生きた相手から心臓をえぐり出しているようにしか見えない私)と、最後の振り返る所が北向きでした。
特にラストはまたちょっと振り返るタイミングが変わってて、てっきり西向いて終わるのかと思ってたらいきなり「カッ!」て擬音が付きそうな勢いでこっちを向かれたのがものすごい不意打ちでした。
最初にTVで見た時の、ふっと顔を上げた所で目が合って「見たな」という感じではなくて、明確な殺意を持ってこっちを睨んで来る感じです。私が何をしたって言うんだ(いや、実際には視線の位置は私がいた所からはだいぶ離れてはいたんですが)。
思うのは、この「バチェラレット」では、具体的なキャラクターやストーリーやエピソードは表現されていないんですね。そう言った表層的な所からもっと深い所まで踏み込んだ、普遍的なイメージそのものを見せようとしている。元々大ちゃんの表現にはそういう傾向はあったと思うんですが、それを更に押し進めた感じ。…なんかもう既に、集合無意識の領域にまで足を踏み入れているような。
そういう、普遍性のあるイメージだからこそ、見た人がそれぞれ自分の記憶と経験の中からキャラクターやストーリーを自由に当てはめることも出来るのかなと思いました。
でもなんか、あっと言う間に終わってしまった。一度限りだからこそ生(ライブ)なんだとは分かってるけど…それでもやっぱりもう一度(ていうか何回でも)見たいと思ってしまいます。

***

でも本当に、暖かい雰囲気のいいショーでした。去年見た時、「初めて見た生のショーがこれで良かった」と思いましたが、今年見て改めて同じことを思いました。
出演者及びスタッフの皆さん、お疲れ様でした&ありがとうございました。

***

ちなみに、防寒対策の方もバッチリでした。あれだけ厚着すればね(笑)。助言して下さった方ありがとう。

***

「クリスマス・オン・アイス」の案内がもう始まってました。チラシを作った段階では出演者が決まってなかったのか、「荒川静香ほか国内外フィギュアスケーター」って、そんなざっくりした情報で一体何を判断すれば良いのかと。

それと大ちゃんの新しい競技用プログラムの情報がやっと出ましたね。
「フリーはクラシック曲。ショートプログラムは(今までと)違った感じにして新しい自分を見せたい」
だからそんな漠然とした情報で一体何を(以下略)。…手の内を見せたくないのかな…。
ところでこのネタを報じた記事、「無難な滑り」ってなんか悪意を感じますね。痛いクレーマーと化して文句のメールでも送ろうかと思うような。大ちゃんのファンとしてというより、一応、言葉を扱う人間として。
悪意もなしに「無難」なんて言葉を安易に使うなら、それはそれで怖いと思います。こういう、社会に影響を与える媒体で文章を書いてる人が、こんな粗暴な言葉の使い方をするという事実が恐ろしいです。

***

コメント拍手への返信
「ガールズ」の名前に拘ったのかも知れませんが…。神宮は男子選手も含めて本来の姿という感じがするので、ちゃんとした形で見てみたかったですね。
「自分もやってみよう!」という気持ちにさせられるという点は、他のフィギュアの番組にはない良さだったと私も思います。

フレンズ オン アイス2007(その1)

2007-08-19 23:29:16 | 日記
18日昼公演を見て来ました。
何から書けばいいのやら。

***

ショーの冒頭で、昨年初めてこのショーが開かれた経緯を語り、その後の1年余りを振り返るナレーションがありました。思えば私も、去年のこのショーが、初の生フィギュア(そして生大ちゃん)だったのだなと感慨深く振り返ってしまいました。
去年の大ちゃんは偉大な先輩たちのショーに何とか混ぜて貰った若造、という雰囲気を醸し出してたんですが、あれから一年。大トリは当然荒川さんなのですが、大ちゃんの滑走順が(それに紹介順も)荒川さんのすぐ前で、出世したもんだとしみじみしてしまいました。
それでも、ここ最近試合だけでなくショーでも「エース」としての責任を果たすべく気を張ってる感じだったのが、このFOIでは頼りになる先輩たちの後ろを「末っ子」として付いて行く、みたいな感じで、すごくリラックスして楽しそうだったのが印象的でした。

そして大ちゃんに限らず、今回のショーでは出演者の皆さんが本当に仲良さそうでリラックスしていて、何より自分たちが楽しんでショーを作り上げているような雰囲気は去年と全く変わっていなくて、とても居心地の良いショーでした。
以下、例によってスケートの分からない素人が、ウロ覚えでテキトーに。

■オープニング
すでにあちこちで言われてることですが、皆であっちに行ったりこっちに行ったりする際、大ちゃん遅れる→氷上を「走る」。しかも速い。先に行った人たちを追い越したあと急ブレーキをかけてました。ちょっとびっくり。

■第一部
今年の趣向は、演技の前に、本人たちの声で紹介が入るというもの(海外ゲストは英語コメントの後に翻訳)。紹介コメントにもそれぞれの個性が出ていて面白いです。
○鈴木明子さん「タイタニック」で上品に幕開け。今年のフリーのダイジェストだそうです。衣装がちょっと、荒川さんの「ユーレイズミーアップ」に似てました。
○井上怜奈さん&ジョン・ボールドウィンさん曲名は分かりませんが、らぶらぶです。今まで見たどのペアやアイスダンスよりも、激しくラブラブに見えました。
○田村岳斗さん「トゥーランドット」男性がロマンチックに踊るトゥーランドットも乙なものです。
○中野友加里さん曲名は分かりませんが、大ちゃんバチェラレット誕生のきっかけになったという、不思議系のアレです。見れて嬉しかった。というかコレ、すごく私好みです。音楽と衣装と振付けが合わさって、十九世紀くらいのヨーロッパの田舎町で、怪しい旅芸人一座の芝居小屋に迷い込んでしまったような不思議な気分に。写真だと今いちピンと来なかった茶系の衣装も、セピア色の写真から出て来たようなレトロな雰囲気で上手くハマってました。唐突に終わるラストにもイメージをかきたてられます。照明を上手く活かした演劇的な表現だと思うんですが、どうでしょう。
ちなみにこれを見て、私が「バチェラレット」を好きなのは、単に大ちゃんが好きだから大ちゃんのやることなら何でもOK!と盲目的に受け入れた訳じゃないんだな、と再確認出来ました。
「バチェラレット」も中野さんのコレも賛否が分かれているということですが、私は基本的に大好きです、この系統。
○本田武史さん「ゴッドファーザー」スカバージョンで、ノリノリで。終わった所でもう一度音楽が始まる。「?」と見ると、怪しい男の影が…→宮本さん乱入。本田くんを弄る。脱いだジャケットを丁寧に畳む姿がステキ過ぎ。そして二人でステップの競演。これは中々貴重な図です。
…ていうか、宮本さんかっこ良過ぎです。
私は素人なので、スケートの上手下手は分かりません。私に分かるのは彼が「いい男」だということだけ。自分の魅せ方をわかってる。ワルいお顔、いやらしい指先の動きにメロメロです。憎いお方。
○恩田美栄さん「シスターアクト(邦題「天使にラブソングを」)」この映画も曲も大好きなので嬉しかったです。「自分の持ち味を生かして…」とのことなので、和製ゴールドバーグを目指した路線で(多分)。
シスターのロングドレスでジャンプしてたのにびっくりです。
○荒川静香さん曲名不明。ピンクの衣装で、現役時代に佐藤有香さんに作ったもらったプログラムだそうです。「敢えて当時のままで、ジャンプが多くて「どうしようかな?」と思ってたら案の定転んでしまいました…」って、あれだけ飛べれば十分だと思います。
そんな流れで
○佐藤有香さん曲名分かりませんが、優雅系で。貫禄ありますね。余裕の微笑みがステキです。この荒川さん→有香さんの流れには先輩へのリスペクトを感じました。

■休憩中
チケットの半券を使った抽選会が今年も。司会は宮本さんです。宮本さん、自分のプログラムは滑らないのにすごい存在感なんですが(笑)。
くじを引くのは荒川さん、本田くん、恩田さんの3人でした。

■第2部
○未来のフレンズ「ユーレイズミーアップ」
大ちゃんと中野さんが、それぞれに小さな「フレンズ」をエスコートして踊り、それから他のメンバーも出て来て、ちびっ子を中心に群舞を見せる…というもの。
これも振付けは宮本さんでしょうか?子供が混ざっているのに、十分見応えのあるものになる構成が上手。そして子供たちを見守る、とても優しい雰囲気に、見ている方も幸せな気分になりました。
最初に大ちゃんと中野さんが出て来て、子供たちを守るように踊る所が素敵でした。これで大ちゃんがもっと近くで見られれば更に幸せだったんですが(笑)。
○田村岳斗さん「ロッキーのテーマ」男前が…ネタに走っている。シャドーボクシング、腕立て伏せ、縄跳び、チャンピオンベルトを掲げ、最後は客席でガッツポーズ。やりたい放題です。楽しそう。
○恩田美栄さん「ずいずいずっころばし」浴衣風の衣装で田舎の子供風に。こちらもじゃんけんしたり巾着の中からアメを出して投げたりやりたい放題でした。すごく楽しそう。
○本田武史さん曲名分かりませんが、一部とはがらっと変わって優雅系の曲で。雄大なイーグルも堪能できました。
○チン・パンさん&ジャン・トンさん「アダージョ」二人とも背が高くてすらっとしてて、ダイナミックな技もどことなく優雅。近くで見ると迫力あります。
○エヴァン・ライサチェクさん「カルメン」現役選手の競技用、それもフリーのプログラムということで迫力がありました(どうやってあの小さいリンクに収めたのかは私には分かりません)。
闘牛士の行進に合わせたステップでノリノリ。
○高橋大輔さん「バチェラレット」詳細は別記にて。今回、私の周りのお客さんは大人しい人たちなのか、ずっと黙って見てる感じだったのですが、これが終わった時には「入りこんでるねー」「すごい迫力だったねー」と言い合ってました。
○荒川静香さん「フライミートゥザムーン」これも宮本さん作!大人のキュートさで、ノリノリで。当初の予定では宮本さんが乱入するという案もあったそうですが…それも見てみたかったです。

■エンディング
荒川さんの「フライミートゥザムーン」の曲のまま、エンディングに突入。こういう流れの作り方がFOIならではという感じですね。上からシャボン玉が降って来る中、ノリノリで踊るメンバーたち。
当然大ちゃんもそれはもう楽しそうに踊ってました。結構凝った振付けだったように思うんですが、大ちゃんが踊ってると簡単そうに見えてしまう。途中、客席に寄って行く所に小さな子供がいたらしく、その子にピンポイントで絡んでる姿が遠目にも微笑ましかったです。

(その2)に続く