あれは丁度2年前。12月のなみはやドームで、彼は圧倒的な存在感を示していました。SPではヒップホップで踊りまくり、FSでは2度の4回転を決めて圧勝。絶対王者とも言うべき彼の輝かしい未来を、私たちは信じて疑いませんでした。しかし翌年、銀盤に彼の姿はありませんでした。…
あの日から2年。「そこまでドラマティックにしなくていいから」と神様に文句を言いたくなるような、数多の運命の荒波を乗り越えて彼は還って来ました。奇しくも同じこのなみはやドームへ、王者として。
…のっけからポエム入っててごめんなさい。
***
そういう訳で、全日本選手権です。
今年は長野NHK杯、東京GPF、そして大阪全日本とチケットを取って、でも「3つ全部は行けないだろうなあ」と思ってたんですが、結局全部行っちゃったよ(笑)。
今回、MOIだけはどうやっても仕事が休めそうになくて泣く泣く諦めたので、そこだけが心残りなんですが、それはともかく全日本です。
大阪(梅田)から京橋へ出て、地下鉄で門真南へ。京橋へ来るのも2年ぶり。ここは比較的大きな町で、選手や関係者もなみはやでの試合ではここを拠点にしているようなんですが。
そんな京橋の駅前にひらかたパークがこんな看板出してます。
…そういう訳で、ひらパーではなく正真正銘、本物のバンクーバーオリンピックを目指す全日本での闘いです。とりあえず大ちゃん編。
***
■SP「Eye」
衣装はGPSの派手派手衣装マイナーチェンジ版。私の予想が当たりました。何か賭けておけば良かった。
おなか周りのダブダブ感もかなり解消されてましたね♪
このあざといまでに華々しい衣装を、最早なんの違和感もなく着こなしているのが素晴らしい。
前に滑った選手の点数待ちの時に、靴のヒモを結び直す。「大ちゃんそれやっちゃダメ!」2年前の仙台でのNHK杯のSPでもそうだったんですが、これはあんまり良くないサインらしく。そのせいか若干3Aが怪しかったものの、まずまずいい感じにジャンプをまとめてステップへ。
GPFのような、ガーーーーーーッと来るような、激しい勢いに任せたステップではありませんでした。ただ、あくまで「丁寧」であって「硬い」とは感じませんでした私は。
寧ろ、勢い任せでなかった分ちょっと余裕が出て来てたかも。華麗な舞でした。
ていうか、余裕がなかったのは見てる私たちだ(笑)。
何せNHK杯のトラウマがあるので、ジャンプを無事に飛び終わっても、最後の最後まで油断はできない。故に、「スピンもステップも最後のキメもコケずに決まった!!」→スタンディングオベーションです。
でも実際、最初から最後まで30人くらいの選手を見て、SPを目立つミスなく滑り切った選手ってほんの数人でしたよ。怪我の前、大ちゃんが当たり前にやってたのは、実は何気にすごかった。そして今の彼は、かつての「当たり前」を順調に取り戻しつつある。点数も景気良く90点越え。
国内の試合は点が高めに出るから…といいつつ、実はPCSはGPFの時と一緒なんですよね。サーキュラーステップでレベル4を取れたりその他で点数を上乗せ。
ここで取れたからと言って国際試合でもレベル4が取れるという訳ではないのかも知れませんが(よく分かりませんが)、でもSPでは最初からレベル4を目指してて、本当にそれが決して不可能ではないステップなんだなと再確認できたのは嬉しいですよね。
…で、今回私が一番感動したのは、6分間練習で最初に飛んだ3ルッツでした。
ジャンプの見分けの付かない私が、わざわざ「あのジャンプなんですか?」と詳しい人に聞きに行ってしまった。それくらいびっくりしたんですよ。
よく大ちゃんのジャンプのことを、「飛び上がってから回り始め、回り切ってから降りてくる」と言ってる人がいましたが、そんなこと素人の私にはわからん、と思ってました。あの時までは。
ポン☆と軽く飛び上がり、一瞬静止してからきゅるるっと回転し、またポン☆と降りて来る。そこだけ重力おかしくなってないか?と思ってしまうような物理法則を無視したジャンプでした。いいもの見せて貰いました。
そういう訳で2位以下を圧倒的に引き離した上でのFSですが、やはり油断はできない。如何せんGPFでのトラウマがありますからね(笑)。
■FS「道」
27日の朝は、早めに行くと男子最終グループの公式練習が見れました。
大ちゃんの4回転も、過去の安定感を取り戻すまであともう一歩という感じ。3回転になったり着氷で失敗したりもしていましたが、きれいに飛べてるジャンプもありましたよ。
大ちゃんは最終滑走なので、練習で曲がかかるのも最後です。でも他の選手の曲がかかってる時に「道」の2つのステップを確認してたので、もしかして自分の曲がかかるのを待たずに終わるのかな…と思ったらやっぱりそうでした。
最初のポーズだけ取って(そうしないと曲がかからないらしい)、後はいつもやってる、両腕を振りながらリンクの端を周回する動きをやってから、お辞儀をして去って行きました。
アイスダンス・ペア・女子SP(後で書くかも)を挟んで、男子シングルFS開始。最終滑走で大ちゃん登場。
6分間練習の感じはGPFより良さげ。4回転も1回くらい決まってたような気がするんですが何せ記憶が曖昧なので気のせいだったらすみません。
そして大ちゃんの演技が始まる。最初の4回転、辛うじて転倒を免れた所まではNHK杯と一緒。でもその後のジャンプはあの時より全然良かったです。その後もいくつか細かいミスはあったけど、GPFより断然良くなってました。何よりスピンが全部ちゃんとできてた(笑)。こうなるとステップはノリノリです。FSの日は席がかなり後ろの方だったんですが、活き活きと表情を作って『演じて』いるのが遠目にも分かりましたよ。
お花を渡す時の繊細なしぐさと表情。コインが目に見えるようなコイントス。軽やかな綱渡りでちょっとおどけて。そして最後はやり場のない悲しみが迸るストレートラインステップ。→これはスタンディングオベーションするしかないでしょう。
点数も気前良く。特にPCSが高いですが、試合の流れの中での相対評価としては、個人的にはこのくらい貰ってもバチは当たらん。と思いました。国内での試合だし。全日本なら07年にもALL8点代貰ってたし(なんかPCSって当時に比べると世界的に高騰して来てる気がするんですが)。
まあ、私には点数のことなんてよく分かりませんけどね(←無責任)。
とにかく本当におめでとう。
GPFから3週間。十分とは言えない時間の中で、よくぞここまで進化した所を見せてくれました。
思えば、今シーズン。深夜の特番でやっていましたが、9月にエッジのトラブルから来る思わぬ不調があり、十分に滑り込む余裕のないまま臨んだフィンランディア杯(FS通しで滑ったのが3回目って)。
2年振りの大きな試合でブランクの大きさを痛感したNHK杯。そこからGPFまで2週間おきに日本→カナダ→日本と移動しながらの連戦で、じっくり調整する時間もなく、戦いながら走りながら、実戦の中で一歩ずつ力を取り戻して来た、そんな感じのシーズン前半でした。
全日本の後、「やっと怪我前の状態に近づいて来た」と語ったように、彼は未だ力を取り戻して行っている、その途中の過程にあるんだと思います。
本人的には不満の残る演技だったと思いますが、私的にはここで(結果は出しつつも)『完成形』にならなかったことに実は安心しています。トリノからこっち漠然とフィギュアスケートを眺めてて思ったのは、簡単なプログラムなら完成するのも早いけど、そうやって一度完成したプログラムに更に何かを上乗せするのは、どうやらかなり無理があるっぽいなっていうこと。
NHK杯で大ちゃんが4位に終わった時、どなたかがこんな事を仰っていたのを思い出しました。
「大ちゃんは大丈夫。彼のプログラムはすごく高度なことをやっているから、ちゃんと滑りこなせれば高い点が取れるようになるよ」
ご本人が言うように「この演技ではメダルは取れない」のかも知れません。でも1ヶ月半後の彼の演技が、「この演技」のままだとも思いません。10月のフィンランディアから2ヶ月とちょっとで、彼は驚異的なスピードで進化を遂げて来ました。そして今もまだ、その進化の途中にあります。
ご本人が「あと1年欲しかった」とぼやくように、時間は決して十分ではないのかも知れませんが、ファンとしては間に合うのを信じて待つのみでしょう。
4回転も、練習ではGPFの時に比べると形になって来つつあるように見えたんですけどね。素人目ですけど。全日本にはあと一歩間に合わなかった。オリンピックには間に合いますように。
年明けにでもヒマがあればまた何かあるかも知れませんが、今年の所はひとまずこれで。
皆様どうぞよいお年を。
***
拍手コメントへのお返事
■2009/12/10 10:20
天才肌のアスリートって、いい意味でちょっとクレイジーな部分がある。彼は正しくそのタイプだと思いました。
こういう人を応援するファンも大変ですが、またこういう人だからこそ多くの人を惹き付けるのだと思います。ドキドキハラハラしつつ見守って行きたいものですね。
あの日から2年。「そこまでドラマティックにしなくていいから」と神様に文句を言いたくなるような、数多の運命の荒波を乗り越えて彼は還って来ました。奇しくも同じこのなみはやドームへ、王者として。
…のっけからポエム入っててごめんなさい。
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そういう訳で、全日本選手権です。
今年は長野NHK杯、東京GPF、そして大阪全日本とチケットを取って、でも「3つ全部は行けないだろうなあ」と思ってたんですが、結局全部行っちゃったよ(笑)。
今回、MOIだけはどうやっても仕事が休めそうになくて泣く泣く諦めたので、そこだけが心残りなんですが、それはともかく全日本です。
大阪(梅田)から京橋へ出て、地下鉄で門真南へ。京橋へ来るのも2年ぶり。ここは比較的大きな町で、選手や関係者もなみはやでの試合ではここを拠点にしているようなんですが。
そんな京橋の駅前にひらかたパークがこんな看板出してます。
…そういう訳で、ひらパーではなく正真正銘、本物のバンクーバーオリンピックを目指す全日本での闘いです。とりあえず大ちゃん編。
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■SP「Eye」
衣装はGPSの派手派手衣装マイナーチェンジ版。私の予想が当たりました。何か賭けておけば良かった。
おなか周りのダブダブ感もかなり解消されてましたね♪
このあざといまでに華々しい衣装を、最早なんの違和感もなく着こなしているのが素晴らしい。
前に滑った選手の点数待ちの時に、靴のヒモを結び直す。「大ちゃんそれやっちゃダメ!」2年前の仙台でのNHK杯のSPでもそうだったんですが、これはあんまり良くないサインらしく。そのせいか若干3Aが怪しかったものの、まずまずいい感じにジャンプをまとめてステップへ。
GPFのような、ガーーーーーーッと来るような、激しい勢いに任せたステップではありませんでした。ただ、あくまで「丁寧」であって「硬い」とは感じませんでした私は。
寧ろ、勢い任せでなかった分ちょっと余裕が出て来てたかも。華麗な舞でした。
ていうか、余裕がなかったのは見てる私たちだ(笑)。
何せNHK杯のトラウマがあるので、ジャンプを無事に飛び終わっても、最後の最後まで油断はできない。故に、「スピンもステップも最後のキメもコケずに決まった!!」→スタンディングオベーションです。
でも実際、最初から最後まで30人くらいの選手を見て、SPを目立つミスなく滑り切った選手ってほんの数人でしたよ。怪我の前、大ちゃんが当たり前にやってたのは、実は何気にすごかった。そして今の彼は、かつての「当たり前」を順調に取り戻しつつある。点数も景気良く90点越え。
国内の試合は点が高めに出るから…といいつつ、実はPCSはGPFの時と一緒なんですよね。サーキュラーステップでレベル4を取れたりその他で点数を上乗せ。
ここで取れたからと言って国際試合でもレベル4が取れるという訳ではないのかも知れませんが(よく分かりませんが)、でもSPでは最初からレベル4を目指してて、本当にそれが決して不可能ではないステップなんだなと再確認できたのは嬉しいですよね。
…で、今回私が一番感動したのは、6分間練習で最初に飛んだ3ルッツでした。
ジャンプの見分けの付かない私が、わざわざ「あのジャンプなんですか?」と詳しい人に聞きに行ってしまった。それくらいびっくりしたんですよ。
よく大ちゃんのジャンプのことを、「飛び上がってから回り始め、回り切ってから降りてくる」と言ってる人がいましたが、そんなこと素人の私にはわからん、と思ってました。あの時までは。
ポン☆と軽く飛び上がり、一瞬静止してからきゅるるっと回転し、またポン☆と降りて来る。そこだけ重力おかしくなってないか?と思ってしまうような物理法則を無視したジャンプでした。いいもの見せて貰いました。
そういう訳で2位以下を圧倒的に引き離した上でのFSですが、やはり油断はできない。如何せんGPFでのトラウマがありますからね(笑)。
■FS「道」
27日の朝は、早めに行くと男子最終グループの公式練習が見れました。
大ちゃんの4回転も、過去の安定感を取り戻すまであともう一歩という感じ。3回転になったり着氷で失敗したりもしていましたが、きれいに飛べてるジャンプもありましたよ。
大ちゃんは最終滑走なので、練習で曲がかかるのも最後です。でも他の選手の曲がかかってる時に「道」の2つのステップを確認してたので、もしかして自分の曲がかかるのを待たずに終わるのかな…と思ったらやっぱりそうでした。
最初のポーズだけ取って(そうしないと曲がかからないらしい)、後はいつもやってる、両腕を振りながらリンクの端を周回する動きをやってから、お辞儀をして去って行きました。
アイスダンス・ペア・女子SP(後で書くかも)を挟んで、男子シングルFS開始。最終滑走で大ちゃん登場。
6分間練習の感じはGPFより良さげ。4回転も1回くらい決まってたような気がするんですが何せ記憶が曖昧なので気のせいだったらすみません。
そして大ちゃんの演技が始まる。最初の4回転、辛うじて転倒を免れた所まではNHK杯と一緒。でもその後のジャンプはあの時より全然良かったです。その後もいくつか細かいミスはあったけど、GPFより断然良くなってました。何よりスピンが全部ちゃんとできてた(笑)。こうなるとステップはノリノリです。FSの日は席がかなり後ろの方だったんですが、活き活きと表情を作って『演じて』いるのが遠目にも分かりましたよ。
お花を渡す時の繊細なしぐさと表情。コインが目に見えるようなコイントス。軽やかな綱渡りでちょっとおどけて。そして最後はやり場のない悲しみが迸るストレートラインステップ。→これはスタンディングオベーションするしかないでしょう。
点数も気前良く。特にPCSが高いですが、試合の流れの中での相対評価としては、個人的にはこのくらい貰ってもバチは当たらん。と思いました。国内での試合だし。全日本なら07年にもALL8点代貰ってたし(なんかPCSって当時に比べると世界的に高騰して来てる気がするんですが)。
まあ、私には点数のことなんてよく分かりませんけどね(←無責任)。
とにかく本当におめでとう。
GPFから3週間。十分とは言えない時間の中で、よくぞここまで進化した所を見せてくれました。
思えば、今シーズン。深夜の特番でやっていましたが、9月にエッジのトラブルから来る思わぬ不調があり、十分に滑り込む余裕のないまま臨んだフィンランディア杯(FS通しで滑ったのが3回目って)。
2年振りの大きな試合でブランクの大きさを痛感したNHK杯。そこからGPFまで2週間おきに日本→カナダ→日本と移動しながらの連戦で、じっくり調整する時間もなく、戦いながら走りながら、実戦の中で一歩ずつ力を取り戻して来た、そんな感じのシーズン前半でした。
全日本の後、「やっと怪我前の状態に近づいて来た」と語ったように、彼は未だ力を取り戻して行っている、その途中の過程にあるんだと思います。
本人的には不満の残る演技だったと思いますが、私的にはここで(結果は出しつつも)『完成形』にならなかったことに実は安心しています。トリノからこっち漠然とフィギュアスケートを眺めてて思ったのは、簡単なプログラムなら完成するのも早いけど、そうやって一度完成したプログラムに更に何かを上乗せするのは、どうやらかなり無理があるっぽいなっていうこと。
NHK杯で大ちゃんが4位に終わった時、どなたかがこんな事を仰っていたのを思い出しました。
「大ちゃんは大丈夫。彼のプログラムはすごく高度なことをやっているから、ちゃんと滑りこなせれば高い点が取れるようになるよ」
ご本人が言うように「この演技ではメダルは取れない」のかも知れません。でも1ヶ月半後の彼の演技が、「この演技」のままだとも思いません。10月のフィンランディアから2ヶ月とちょっとで、彼は驚異的なスピードで進化を遂げて来ました。そして今もまだ、その進化の途中にあります。
ご本人が「あと1年欲しかった」とぼやくように、時間は決して十分ではないのかも知れませんが、ファンとしては間に合うのを信じて待つのみでしょう。
4回転も、練習ではGPFの時に比べると形になって来つつあるように見えたんですけどね。素人目ですけど。全日本にはあと一歩間に合わなかった。オリンピックには間に合いますように。
年明けにでもヒマがあればまた何かあるかも知れませんが、今年の所はひとまずこれで。
皆様どうぞよいお年を。
***
拍手コメントへのお返事
■2009/12/10 10:20
天才肌のアスリートって、いい意味でちょっとクレイジーな部分がある。彼は正しくそのタイプだと思いました。
こういう人を応援するファンも大変ですが、またこういう人だからこそ多くの人を惹き付けるのだと思います。ドキドキハラハラしつつ見守って行きたいものですね。