副題:祝・かなだい現役続行!ソーラン衣装はやっぱり最高ですねという話
才能溢れる二人の目覚ましい躍進については、私でなくても既に色々と語られていると思います。
1年目も「大ちゃんがホントにアイスダンサーになってる!」とびっくりしたんですが、2年目で早くも、制約の多い競技プログラムでありながら、まるでショーを見ているようなワクワク感がある高橋大輔のスケートが帰って来たと思いました。
あのスケートを大ちゃんと一緒に実現した村元哉中ちゃんの才能にも感服。
特にソーラン節&KOTOは、曲も振り付けも衣装もワクワクに満ちたエンターテイメントだと思います。ソウルフルな歌声はもちろん、尺八を思わせるフルートの音色がカッコ良過ぎる。
そんな何ソーラン節&KOTOについて私に語れる事はないかなと思い、衣装を考察してみました。
(着物に関しては一応、若干ですがお勉強したことがございます)
私はかねがね思っていました(久能整風に)。
フィギュアスケートで「和」モチーフのプログラムが演じられる事は多いけど、和風の衣装はあんまりしっくり来ない事が多い気がする、と。
理由は簡単で、洋装と和装はシルエットが違い過ぎる事かと思われます。
ディテールだけ着物っぽくしても、シルエットが洋服風なので着物に見えない。
しかし、シルエットまで忠実に着物を再現してしまうと、動きにくいのはやる前からわかる。
そこで考えてみました。
着物っぽさを着物っぽく見せるために抑えるべきポイントについて。
掟は3つです。(あくまで個人の意見です)
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【掟1】襟はビシッと決めるべし
着物の特徴は着物襟なので、フィギュアの和風衣装にもしばしば着物襟っぽい襟元の衣装が登場します。
そして襟元は、着物姿をカッコよく決めるためにかなり重要なポイント。ここを決めるかどうかで大きく印象が変わります。
美しい襟元を作るため、着物を着るときには半襟のなかに芯(襟芯)を入れます。
フィギュアの衣装で襟芯を入れる訳にはいかないと思いますが、だからと言って襟元がダルダルになってしまうと全体の印象も台無しになってしまうと思います。
しばしば気になるのは、肌を見せるために襟ぐりを広くみせるデザイン。
フィギュアでは、胸元が大胆に開いた衣装は珍しくありませんが、着物襟を左右に広げると途端にだらしない印象になります。
どうしても肌見せしたいなら、襟の合わせを横ではなく縦に広げて深いV字のラインを作って欲しい。肌見せしながら、ビシっとした襟のラインもキープできると思います。
ほんとは襟を抜いてうなじを見せるとカッコいいんですが、襟芯なしでは難しいので現実的じゃないですね。
【掟2】身頃のシワは全力で阻止すべし
着物の着付けでは、身頃(胴体部分)になるべくシワが寄らないようにします。
そのために、体の凹凸がなるべく平らになるよう補正します。プロの着付けを頼むと体をタオルでぐるぐるにされるアレですね。
もちろんフィギュアの衣装でタオルぐるぐるにする訳にはいきません。
その代わり、フィギュア衣装にはストレッチ素材という強い味方が存在します。
ストレッチ素材を活用して、極力シワが寄らないようにする方が、着物風の衣装はカッコ良いと思います。
シースルー生地など、ストレッチが効かない素材を使うと、激しい動きでどうしても細かいシワが寄りますが、これもなんとなくだらしない印象になる原因だと思います。
【掟3】和装のおしゃれはレイヤード
一千年前の平安時代に十二枚もの重ね着ファッションを編み出し、襲の色目(かさねのいろめ)というレイヤードのカラーコーディネートパターンを残したのが我々の先祖です。
時代が下ると重ねる枚数は減りましたが、おしゃれの基本が重ね着からのチラ見せである事は変わりません。
襟元から半襟をのぞかせたり、比翼仕立や伊達襟で重ね着していないのに重ね着に見せるフェイクレイヤードも定番です。
裾や袖口から八掛(裏地)や襦袢をチラ見せするのもおしゃれの内。着物のおしゃれ上級者は、裏地や襦袢にもこだわります。
透け感のある素材を着るなら、下に透けない素材を重ねて、その組み合わせを見せる形で使うのが鉄則です。
盛夏の着物は原則透ける生地なので、下には必ず透けて見えても良い襦袢を重ねます。
間違っても、透ける素材を単体で着てはいけません。
【掟2】では、シワが寄るからという理由で身頃シースルーを禁止しましたが、そもそも和装で透ける素材1枚で着ることはまずないので、シースルー1枚だと下着に見えます。
使うならそれなりの工夫が必要だし、そもそも使わない方が無難だと思うんですが、何故か良く使われているのが謎です。
EXだと薄羽織のように使われていることも多くて、それはまあ良いと思うんですが、競技用衣装で袖とかにシースルー使うパターンが妙に多いのは何故だろう。それやっちゃうと和装じゃなくて中華に見えると思うんですが。
色も日本の伝統色じゃなくて、化学染料っぽい色が多いから余計に大陸っぽい感じがします。
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と、ここまで読んで頂ければもうおわかりですね。
ソーラン節&KOTOの和風衣装は、3つの掟をバッチリ抑えているのです。
特に哉中ちゃんの襟元のデザイン。ベースは大胆な洋風肌見せカッティングでありながら、そこへ和風の着物襟を、縦長V字でビシッと後付けしてる、あれ考えた人は天才だと思いました。
ベースは赤と黒でそれぞれ違う色ですが、帯や裾と襟のチラ見せカラーで統一感を持たせているのもオシャレ。
白ソーランの、ベースを白の無地にして、下に柄物を着込んでる風にチラ見せしているのも粋ですね。
そして実は、懐かしの大ちゃんLuvletter衣装もこの3条件を満たしています。
当時の衣装担当さんはよさこい系イベントのダンス衣装も手がけていた方なので、和のテキスタイルの扱いにも慣れてるとお見受けしました。
金蘭の素材で和服っぽさを前面に出していますが、この生地は本来帯地に使うものなのですごく硬くて重い。少ない面積で目立つよう上半身の一部に配置して、その他はストレッチベロアで動きやすく工夫されていると思いました。そして袖口からは伝統色のちりめん素材をチラ見せ。ちりめんならではのてろんとした落ち感が、動くと風になびいて美しかったですね。
来期、どんな新しい世界を見せてくれるのか。
今から楽しみで仕方ありません。
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