天然ガス輸送パイプライン設置研究 舞鶴−三田間
兵庫県と京都府の「北近畿エネルギーセキュリティ・インフラ整備研究会」による日本海側の天然ガスインフラ整備に向けた研究が進んでいる。同研究会の提言を受けて国側も高速道路へのガスパイプライン設置の技術指針づくりを本格化。同研究会ではメタンハイドレートの開発を視野に、京阪神の経済効果や災害への備えなどのメリットをアピールし、新たなエネルギーインフラの実現につなげたい考えだ。(辻本一好)
同研究会は2015年9月に発足。事務局の県、京都府のほか、大阪ガスや関西電力などのエネルギー関連企業、両府県の経済団体、近畿経済産業局などが参加している。
同研究会での議論が注目される背景には、パイプラインなど天然ガスインフラで日本が極端に遅れている現状がある。
石炭、石油から天然ガスへの転換を地球温暖化対策の柱とする欧米では数万から数十万キロの幹線ガスパイプライン網を整備しているが、日本では約2450キロにすぎない。「とりわけ日本海側は富山県から島根県まで幹線がまったくない」(事務局の県水エネルギー課)
東日本大震災で仙台港のガス施設が被災した際、新潟から天然ガスを運ぶためにあったパイプラインが仙台市内のガス供給の早期復旧に活用されたことで、エネルギーセキュリティの面からも注目されるようになった。国家主導で幹線網を整備する中国、韓国にも劣る状況が課題として指摘されている。
同研究会では、こうした状況を踏まえて研究を進め、15年12月、国に国内の整備計画の策定と財政支援制度の創設などを提言した。
近畿における具体策として、京都・舞鶴湾の液化天然ガス(LNG)基地整備と、既存の幹線パイプラインが通る三田市までの幹線整備を提案。さらに舞鶴若狭自動車道を活用することで経費が一般道利用に比べ約3分の1の337億円(管径750ミリ)で済む試算を示した。
これを受けて、一般財団法人・国土技術研究センターが高速道路にパイプライン設置する台湾の実例を調査するなどして技術指針を策定中だ。
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背景のもう一つは、日本海に眠るメタンハイドレートの研究が本格化していることだ。資源エネルギー庁の調査では1742カ所で存在が見込まれ、うち新潟・上越沖の海底1カ所で、日本の消費量2日分に当たる約6億立方メートルの存在が確認されている。
同研究会は、まず米アラスカやロシアからの安価な天然ガスを調達し、長期的には日本海のメタンハイドレートをパイプラインで供給することを目標としている。
1月の第6回研究会では、パイプラインを計画する北近畿地域でのガス需要の試算や需要を増やすためのガス火力発電所の必要性などが事務局から説明された。
これに対し、委員からは「京阪神の消費地にどれだけのコスト競争力のあるものが届けられるのかを示すことが必要」「日本のエネルギーの在り方を変える施策として必要性を訴えるべき」などの声が上がった。
県水エネルギー課は「沿線と大都市への便益と費用について精度を上げ、パイプラインの意義を示していくことがまずは目標となる」としている。
【メタンハイドレート】高圧低温の環境で水とメタンが結びついた物質。海底の地下深くにある太平洋側に比べ、日本海側は海底表面付近にあり、「表層型」と言われる。採取する技術が開発されれば低コストで無尽蔵の国産エネルギーになると言われている。
東燃ゼネラルと関電、千葉の石炭火力発電所の建設を中止
東燃ゼネラル石油〈5012〉と関西電力〈9503〉子会社の関電エネルギーソリューション(大阪市)は23日、千葉県市原市で計画していた石炭火力発電所の建設を取りやめると発表した。発電所計画の事業性や事業環境の変化をめぐり、両社の見解に相違が生じたためという。
関西電力と石炭火力発電所の新設を計画していた東燃ゼネラル石油の千葉工場=千葉県市原市、東燃ゼネラル提供
http://www.asahi.com/articles/ASK3R5RWNK3RULFA01W.html
出光興産、泥沼化する経営陣と創業家の対立…懸念される「最悪の事態」
2017年01月25日 21時01分 ビジネスジャーナル
2016年12月19日、公正取引委員会(杉本和行委員長)は、両社の合併を正式に承認した。出光は公取委の正式承認を受けて同日、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル(RDS)から議決権ベースで31.2%の昭和シェル株を取得した。取得するのに要した金額は1589億7800万円である。
一方、出光創業家は、出光と昭和シェルの合併に断固反対している。創業家の代理人の浜田卓二郎弁護士は、「現時点で合併に賛成は100パーセントない」との姿勢を崩していない。
16年7月に昭介氏が昭和シェルの株式を40万株(0.1%)取得し、出光がRDSから相対で昭和シェル株を取得すれば金融商品取引法に抵触すると主張。出光が昭和シェル株を取得した場合には、証券取引等監視委員会(長谷川充弘委員長)など関係当局に異議を申し立てるとしている。
出光が昭和シェル株を取得した後、両社は合併することを目指している。これに対し、出光の大株主でもある創業家が反対を表明したため、臨時株主総会を開き、合併に必要な3分の2以上の賛成を得るのが難しい状況が続いている。
そこで、合併の前段階として、互いに株式を20%程度持ち合う資本・業務提携を結ぶ案を検討した。合併は、株主総会において出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を得なければならないため、3分の1を超える出光株式を持つ創業家が反対すれば、否決される公算が大きい。だが、資本・業務提携は総会承認案件ではないため、両社が合意すれば実現する。
出光創業家は声明で「出光が自社株を昭和シェルに持たせる第三者割当増資を行う場合は、発行差し止めのための法的措置を講じる」と表明した。声明は昭介氏と浜田弁護士らの連名で、昭和シェルに対して出光株式を譲渡することは「創業家が反対する合併議案を通すことが狙いだ」と述べ、「到底承服できない」と強く反発した。
創業家が法的措置に踏み切れば、全面戦争に突入する。そこで創業家との協議を優先して相互の株式持ち合いを16年末に断念した。
浜田弁護士は「今回の事態を招いたのは、会社と大株主である創業家の意思疎通が欠けていたことが原因のひとつだ」と述べ、新たな出光をつくっていくうえで当然出てくるテーマとして、創業家出身者の経営参加に言及している。
月岡隆社長が辞表を懐に入れて、代理人抜きで創業家を直接説得し、昭介氏二男の正道氏を役員(それも常務以上)に就ける妥協案を早急に示すしかない、との声が社内外から出ているが、月岡社長の決断が注目される。
かつて7代目社長の出光昭氏(創業者・出光佐三氏の末弟で2代目社長の計助氏の二男、持ち株ゼロ)は、生き残りを賭け外部資本の受け入れと株式上場を決断した。当時会長だった昭介氏(佐三氏の長男で、創業家の直系)は、この時も猛反対したが、第8代社長になった天坊昭彦氏が昭氏を強力にサポート。住友銀行、東海銀行、住友信託銀行(いずれも当時)など金融機関の後押しを受けて、株式公開を実現させた。この当時、昭介氏は出光株を40%支配する、唯一の個人大株主だった。現在より持ち株は多かったが、会長を辞任した。
株式公開後、出光一族の役員は一人もいなくなり、創業家が経営に口を挟むことはなかった。そのため「創業家の影響力はほとんどない」と月岡社長が判断したことで、昭介氏とボタンの掛け違いを起こし、感情的な反発を招いてしまったのだ。
「月岡社長に天坊氏の半分の経営力(経営者の器)があれば、事態はここまでドロ沼状態にならなかっただろう」(出光興産の関係者)との声も聞こえる。二重三重の意味で、月岡社長は人間力が試されている。
●サウジアラムコにのみ込まれることを恐れる出光創業家
サウジアラムコはサウジアラビア国営石油会社である。サウジアラムコは株式の5%未満を17年中に上場する計画だ。サウジ国内の証券取引所のほか米ニューヨーク市場への上場が有力視されている。日本取引所グループの清田瞭最高経営責任者(CEO)はサウジを訪れ、サウジアラムコの東京証券取引所への上場を働きかけている。
サウジアラムコが上場すれば、時価総額は2兆ドル(約230兆円)を超えるとみられている。時価総額トップの米アップルを大きく上回り、世界最大のエネルギー会社となる。サウジアラムコはアラムコ・オーバーシーズ・カンパニー・ビー・ヴィ名義で昭和シェル石油株式を14.96%保有している。
出光創業家が昭和シェルとの合併に反対する最大の理由は、サウジアラムコにのみ込まれて出光が消滅することを恐れているからだと指摘するエネルギー業界の首脳もいる。
昭介氏が16年9月23日付で販売店の出光会会員に宛てた書簡に、次の一文が記載されている。
「韓国のS-Oil社の場合、かつては35%程度の株主であったサウジアラムコ社が、64%の株主となり社長も送り込まれ、タンカーがサウジアラビアとS-Oil社の間でしか往復しなくなっています。このような轍を踏まないようにしなければなりません」
合併によってサウジアラムコが出光の大株主として入り込むことは、断固阻止したいと考えていることがわかる。いったん、大株主として橋頭堡を確保されれば、早晩、サウジアラムコにのみ込まれる可能性が高い。
意思が乖離している経営陣と創業家の妥協点は見つかるのだろうか。
(文=編集部)
https://news.nifty.com/article/item/neta/12111-30520/
※( ・_・)ノノ"□" メモノハリツケ
米シェールガスが初上陸 電力・ガス、調達先拡大狙う
技術革新で米国で生産が本格化しているシェールガスが6日、初めて日本に上陸した。日本のエネルギー企業は天然ガスの大半を中東や東南アジアに頼り、調達先の多様化が課題になっている。トランプ次期米大統領は資源開発に積極的で、新たな燃料の仕入れ先として期待が高まる。
(中略)
日本は年8500万トンのLNGを輸入し、8割を中東や東南アジア、豪州に頼る。調達価格は基本的に原油価格と連動して決まり、原油が1バレル=100ドル前後だった14年ごろはLNGも高値でつかまされてきた。一方、シェールガスは米国内の需給で価格が決まるため、原油が高騰しても価格は比較的安定している。
<OPEC>減産で合意 8年ぶり 価格急上昇 http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/business/wbusiness/mainichi-20160929k0000e020114000c.html
石油輸出国機構(OPEC)は28日、アルジェリアの首都アルジェで非公式会合を開き、原油価格を押し上げるため協調減産することで合意した。欧米メディアが一斉に報じた。減産で合意するのは、金融危機直後の2008年12月以来、約8年ぶり。
ロイター通信は、関係筋の話としてOPECは加盟国の原油生産量を8月の日量3324万バレルから、3250万バレルに削減すると報じた。今回の会合では減産合意が見送られるとの見方が多かったため、市場には驚きが広がり、28日のニューヨーク原油先物市場で米国産標準油種(WTI)は1バレル=47ドル台に急上昇した。
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5月中旬以降、米WTI原油先物価格は1バレル=45ドルから50ドルの間で推移してきたが、ここに来て下落傾向が顕著になってきている。7月26日のWTI原油先物価格は3カ月ぶりに同42ドル台に下落した。
市場関係者の嫌気を誘った直接の原因は、米国の石油リグ(掘削装置)稼働数が4週連続で増加したことだ。ただしシェールオイルの生産量は減少を続けたままである。原油市場で弱気ムードが支配している真の理由は、ドライビングシーズンの真っ最中なのに米国のガソリン在庫が4月以来の高水準になっているからだ。夏の最盛期としては少なくとも10年ぶりの高水準にある。
筆者は以前のコラム(「原油価格が下落し始めた本当の理由」)で昨年と同様に米国でガソリン在庫が増加する兆しが出ていることを指摘したが、この認識が市場関係者の間に広く浸透したようだ。
中国のガソリン在庫が記録的な水準に
米国ではガソリン需要も石油需要全体も堅調である。6月の石油需要量は日量2014万バレルと前年比2.8%増だった。8カ月連続の増加となり、石油需要量は2008年1月以来日量2000万バレルの大台を超えた。
それにもかかわらず、なぜガソリン在庫が積み上がっているのか。最大の理由は、海外からのガソリン輸入が急増しているからである。
7月14日付日本経済新聞は、米国の東海岸でタンクの容量が一杯となり、ガソリンを積んだタンカーが港に入れない状態を伝えている。東海岸の6月のガソリン在庫は史上最高水準の7000万バレル超えとなり、米国全体では2.4億バレルと高水準である。ガソリン価格も1ガロン=2.5ドル以下と低迷している(例年は3ドル前後)。
米金融ニュースサイトの「Zero Hedge」は「タンカーが1週間以上荷揚げできないのが当たり前になっている。そのため、ニューヨークでの荷揚げを諦めてフロリダやメキシコ湾へ向かったタンカーも出始めている。世界各地からタンカーが押し寄せているが、中でも欧州からのタンカーが多い」と報じている。
6月の欧州のガソリン在庫は、例年より1000万バレル多い約1億バレルと過去最高になっている。Zero Hedgeによると、中国から欧州市場へのガソリン輸出が急増していることがその要因だという。
中国の今年上期のガソリン消費量は前年比13.7%増と堅調だが、今年のガソリン生産量はガソリン消費量を9%上回っているため、国内のガソリン在庫は記録的な水準に達している(5月末時点で783万トン)。
中国国家統計局によれば、中国のガソリン生産の前年比増加は16カ月連続となっている(6月には前年比8.7%増の1101万トンで過去最高を更新した)。世界一となった自動車市場の需要拡大を見込んで、精製業者がディ−ゼルからガソリンに生産をシフトしている結果だ。
中国でその先頭を走っているのが独立系製油所(茶壺、以下「ティ−ポット」、本コラム「原油市場で注目を集める中国の『ティーポット』」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47052 を参照)である。ティーポットは既にガソリンをディスカント価格で輸出し始めており、3年以内にガソリン生産の半分(現在は1割)を海外に輸出することを計画しているという。
中国政府も、国内の供給過剰状態を緩和するため、石油製品の輸出枠を2倍にした。6月の中国からの石油製品輸出量は日量102万バレルと1月から75%上昇も上昇し、さらに16万バレル増える見込みである。
7月24日、G20財務相・中央銀行総裁会議で「中国の過剰生産について構造改革が重要」との認識が示された。過剰生産は鉄鋼製品分野に限らない。石油製品の生産過剰も深刻な問題となっているのだ。このままのペースで進めば世界中に中国製のガソリンがあふれかえる事態になりかねない。
中国の原油需要減少で再び価格下落か
このように市場の関心が、世界のガソリン市場の供給過剰にシフトしつつある。原油市場も再び供給過剰に戻る心配はないのだろうか。
7月20日の米エネルギー省の発表によれば、米国の原油在庫は9週連続で減少し、1982年以降で最長を記録した。だが、在庫が順調に取り崩されてはいるものの、ここに来て原油需要が大幅に落ち込む可能性があることが指摘され始めている(7月25日付ブルームバーグ)。米国では例年夏期休暇が終了する8月と9月にガソリン需要が落ち込むため、製油所はこの時期に定期修理を実施するからだ。過去5年間、製油所の原油需要は7〜10月に日量平均120万バレル減少している。
中国もティ−ポットの頑張りで原油輸入量が増加していたが、6月の原油輸入量は前月比6.0%減の3032万トンだった。6月の原油生産量は前年比8.9%減の1658万トンだったことと合わせると、国内の原油需要が急速に冷え込んでいる可能性がある。
中国のGDPを見ると、第2四半期は前年比6.7%増だったが、販売担当者指数(PMI)に基づく試算では公式値の半分程度だという指摘がある。上半期の家計所得の伸び率は前年比6.5%となり、前年同期の7.6%と比べて鈍化している。そのため政府が期待している消費ブームにも陰りが出始めている。
中国経済に対する不安が高まる最中の7月19日、人民銀行幹部の口から「中国企業には既に『流動性の罠』の現象が生じている」との発言が出た。「流動性の罠」とは金利水準が限界まで低下した場合に金融政策の効果がなくなることを指す。中国の狭義のマネーサプライであるM1(現金+当座預金)の伸び率(6月末時点で前年比24.6%増と6年ぶりの大きな伸び)が、広義のマネーサプライであるM2(現金+預金)の伸び率(同11.8%増)を大きく上回った。大量の通貨が企業に流れているが企業は適当な投資先を見つけられず資金を当座預金の口座に預けたままにしている状態から、同幹部は「企業の投資意欲が低い中、利下げよりも減税の方が景気対策として有効である」と述べた。
景況感の弱さと投資への消極姿勢が経済を圧迫した「失われた10年」の日本で、何度「流動性の罠」が指摘されたことだろうか。同幹部の指摘が正しいとすれば、中国経済はバブルが崩壊し「失われた10年」に突入してしまったことになる。そうなれば原油需要が大幅に減少することは必至であり、中国はますます石油製品の輸出を加速させるだろう。
原油市場は相場上昇がモメンタムを失う中、価格は再び1バレル=40ドルに下落すると予想するアナリストが増加しており(7月15日付ブルームバーグ)、原油価格が今年最安値を付けた2月の状態に戻る懸念すら浮上している。
懸念されるシェール企業の大量倒産
ゴールドマンサックスは7月19日、「原油価格が回復したため、2018年までに10万人分の雇用が創出される」との明るい予測を発表した。高賃金雇用であるシェール産業が復興すれば、米国全土で景気拡大が期待できる。しかし、原油価格が下落すれば「絵に描いた餅」である。
シェール企業はこのところ原油市場の需給均衡に貢献してきたが、ここに来ていよいよ拡大路線に舵を切り始めている。だが問題は、原油価格が反転し始めた2月から、シェール企業が発行したジャンク債の流通価格が約50%上昇しているものの、その一方でデフォルト率も急上昇していることだ。大手格付け会社フィッチによれば、シェール企業が発行しているジャンク債のデフォルト率は29%と既に記録的に高い水準にあり、今年中に35%にまで上昇する可能性がある。
昨年以降に北米地域のシェール企業85社が破産申請し、負債総額は610億ドルを超えた(7月22日付ロイター)。シェール企業のジャンク債発行額が約5000億ドルであることに鑑みると、原油価格が下落し始めれば負債総額が1000億ドルを超える可能性が高いだろう。
ジャンク債市場は今年上期の発行額が6年ぶりの低水準となった。ジャンク債市場での資金調達が困難となったシェール企業は、株式を過去最速のペースで発行している(7月14日付ブルームバーグ)。年初以降に株式発行で調達した資金総額は160億ドルとなり、同業界がこれまで株式で調達した総額290億ドルの半分を超えるまでになった。だが、7月に入り株価が下落し、株式での調達が困難になりつつある。
7月25日、米財務省は「英国のEU離脱決定により米金融システムの安定を脅かす潜在的なリスクが増大した」との見解を示した。原油価格下落によるシェール企業の大量倒産という悪条件が加わったとしても、米金融システムが悪化することを回避できるだろうか。
(藤 和彦)
5日午前10時ごろ、千葉県市川市鬼高3丁目のガソリンスタンド跡地で、解体工事中に空のタンクが爆発する事故があった。
県警市川署などによると、解体作業現場の地下に埋設されていた空のタンクが爆発したという。近くを通行中の男性(54)が軽傷を負ったほか、付近にとまっていた車数台が破損したという。県警が事故の原因を調べている。
「元売りが2~3社になって終わりでしょう」という人もいるが、そうではない。
石油開発、石油化学のほか、広くいえば電力、ガスなどエネルギー産業全体がどうなるか。
私が生きている間に起きるかもわからないが、いずれ、これまでと違う形での再編の世界に入っていくだろう。
日本は世界の石油メジャーと戦えるのか?より
全文はこちら↓でどうぞ。
http://toyokeizai.net/articles/-/111698
JX社長は「まだ終わっていない」
出光創業家は、
出光創業家、昭和シェル株40万株取得 合併阻止狙い奇策
都市ガス小売りが完全自由化される来年4月に向け関西電力は1日、事業登録を経済産業省に申請した。大阪ガスの営業エリアで事業展開する。関電は、電力小売りが全面自由化された今年4月以降、大ガスなどの新規参入事業者「新電力」に顧客を奪われてきたが、電気とガスのセット販売で割安な料金を設定し巻き返しを図る。
来年4月から大ガスなど都市ガス事業者による地域独占や料金規制が撤廃され、家庭も購入先を自由に選べるようになる。新規参入業者は都市ガス事業者が持つガス管を、使用料を払って使い、顧客にガスを販売する。東京、東邦、大阪の大手都市ガス3社は、34年にガス管事業を別会社化し、他の企業がガス管を公平に使えるようにする。
関電は東日本大震災後に2度にわたって電気料金を引き上げたこともあり、今年4月の電力小売り全面自由化以降、新電力に顧客を奪われてきた。
大ガスが強固な販売網を生かした営業活動で約17万件の契約を獲得するなど、6月末時点で26万件超が新電力に切り替えている。また、企業向けでは、新電力の関西での販売電力量シェアは上昇を続け、すでに1割を超えている。
こうした苦境に立たされる関電にとって、ガス小売り自由化は「新たな成長に向けたビジネスチャンス」(関電幹部)となる。営業エリアは大阪ガスが都市ガスを供給している近畿2府4県で、約720万世帯が対象となる。
すでに自由化されている企業向けでは平成12年に参入。27年は約72万トンを販売した。今年6月の組織改正でガス事業本部を立ち上げるなどして態勢を整え、30年に販売量100万トンを目指している。
7月23日 読売新聞より
これから日本は、縮小していく社会になっていく。
これまでは電力需要が右肩上がりになるとの前提で、離島や山間地にも電線を引っ張ってきた。
これをいつまでできるか、
水素発電が解決の選択肢
産業政策復活で大喜びしている経産官僚たち
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39561より
経済産業省が、民間企業への「介入」に踏み切るようだ。今年1月に施行された「産業競争力強化法」に基づいて、供給過剰になっている石油業界の再編を促すために、市場調査に手をつけるというのだ。経産省は石油業界の各社に、年内をめどに合理化計画などの提出も求めるという。
政府が民間企業の経営に口を出す---これは「いつか見た風景」である。今回の政府の行動の根拠になっている産業競争力強化法を見ても、かつての高度成長期に跋扈し、二十数年前にぱったりと姿を消した日本的産業政策が、ちゃっかりアベノミクスの中で復活したことがよくわかる。
「これでいよいよ経産省の復権だ」
元通産省(現経産省)事務次官の某氏はこう言って、手放しで喜んでいたほどである。
では果たして、これで日本の石油業界は見事に「復活」するのだろうか。
日本では、産業政策によって高度成長したという神話があるが、実は最近の研究では、日本的な産業政策の効果はなかったというのが定説。城山三郎氏の『官僚たちの夏』は、産業政策を過度に美化しているが、それは小説の中の世界だ。
国主導で産業を育成するのが「無理」な理由は、官僚はビジネスに疎いという一点に尽きる。社会主義経済がうまくいかないのと、本質的な理由は変わらない。ノーベル経済学賞受賞のハイエクらが何回も指摘してきたことだ。
日本の戦後成長の歴史を見ても、通産省がターゲットにした産業は、石油産業、航空機、宇宙産業などことごとく失敗している。
さらに見れば、情報通信分野などの基礎的な研究の支援を目的としたものの、ほぼ3000億円をどぶに捨てた「基盤技術研究促進センター」があった。第5世代コンピューターも600億円ほどを投入しても、アプリケーションのないマシンしかできなかった。ソフトウエア技術者の不足に対応するということでスタートしたシグマプロジェクトも200億円が消えた。
実は、成長産業を国が見いだすという産業政策は、日本独特のものだ。そんなによければ、とっくに世界中で流行しているはずだが、そうはなっていない。
政府がミクロ的な介入をするだけの能力がないから、先進国で産業政策の例はまずない。産業政策というと立派な政策と思うかもしれないが、実は英語で説明できない。「industrial policy」と言っても、海外ではさっぱり通じない。産業政策を説明すると、開発途上国での幼稚産業保護と誤解される。だから安倍首相も海外の講演では、産業政策を強調できない。
国がある特定産業をターゲットにすると、結果として産業がダメになる。逆に、政府の産業政策に従わなかった自動車などは、世界との競争の荒波にもまれながら、日本のリーディング産業に成長した。要するに、国に産業の将来を見極める眼力があればいいのだが、現実にはそんな魔法はない。必要なのは、国による選別ではなく、競争にもまれることだ。
こうした失敗の歴史にもかかわらず、官僚の誰も責任を取っておらず、天下り官僚が潤っただけだった。
石油業界が供給過剰というが、世界を見回して将来の需給まで見通せる能力が政府にあるはずがない。見通しは業界の人が行って、その結果責任はビジネスが取るしかないだろう。こんな政府介入を恐れて、事前に経産省の天下り先を受け入れるようになったら、おしまいだ。
『週刊現代』2014年6月28日号より
「JXとの統合に反対」、東燃・中原元社長が激白
東洋経済オンライン http://toyokeizai.net/articles/-/102832より
──経産省は、設備廃棄を促すエネルギー供給構造高度化法(高度化法)や産業競争力強化法を盾に、石油業界再編を後押ししてきた。
業界は戦前から統制色が濃かったが、今のやり方はまったく時代と逆行している。高度化法は2010年の民主党政権時代に作られたもの。それを安倍晋三政権になり、経産省がいわば悪用し、高度に統制的なものにすげ替えてきた。
高度化法には罰則が設けられており、いちばん厳しい金融商品取引法並みだ。統制経済の思考で再編を進めたいだけだろう。経産省の手法は1963年の亡霊を思い出させる。当時は旧通商産業省が自動車などの産業保護のため、国際競争力強化法案を作ろうとした。その後、本田宗一郎さんの反対で特定産業振興臨時措置法案と名を変えたが、廃案になった。
今回は悲願の特振法が日の目を見たことになる。TPP(環太平洋経済連携協定)が世界経済の主流になる中、矛盾した動きである。
石油開発のINPEXに集約する動きも
──国内では石油元売り会社が3グループに集約されようとしている。
1960年代は成長産業を助ける名目だったが、今日では斜陽産業の石油業界を何とかしようとしている。足元では石油元売りや商社の持つ“水浸し”の上流権益を、準国策会社のINPEX(国際石油開発帝石)に集約しよう、という動きもあるらしい。
非常に驚くべき話で、既得権益の権限拡大を許せば、政治家の介入や官僚に対する饗応など、ずいぶん弊害が出る。INPEXやJOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)のトップは経産省出身者が多い。
経産省が石油業界の一部のようになっている。何かしら、望ましくないような事態が起こるのではないか、といささか危惧する。
──経産省は石油産業の国際競争力を高めるため、という題目を掲げているが。
国際競争力って何ですか。1960年代の特振法でも、同じテーマを掲げていたが、収益力を高める具体的なメニューが見えない。(元売り各社が計画に掲げる)アジアでの精製販売事業なんて、欧米の石油メジャーがとっくに捨てたマーケットですよ。
肝心の国内の精製販売事業の収益力をどう立て直すのか。それこそが日本の石油供給の安定につながる。寡占化で国内の競争がなくなるのは、石油元売りにとってはうれしいだろう。統合でシェアが50%を超えれば、ガソリンや灯油の価格決定力が格段に上がる。私がJXの社長だったらバンザイ三唱ぐらいはするでしょう。
──再編は寡占化を生み、消費者のためにならないと。
安倍政権の経済政策の根幹は、海外に比べて高い日本のエネルギーコストをいかに安くするか、だ。石油価格を上げて家計を圧迫するのは、電力自由化の動きなどとまるで逆行している。今後の公正取引委員会の判断は、非常に大きな意味を持つだろう。
統合決議は数票の僅差だった?
戦前から日本には、民族系と外資系の石油会社が共存していた。わが国の政府は外資を制約しようと、1934年の第一次石油業法に続き、1962年に第二次石油業法を作った。民族系が有利になるよう、石油精製能力拡張を割り当て、さらに共同石油を設立した。
その後、1980年代後半に私と出光興産の出光昭介社長の二人で、石油審議会で自由化を主張して、石油業法は撤廃に追い込まれたわけだ。
──元売り各社は低収益体質にあえぐ。東燃元社長としてJXとの統合には反対か。
かつての東燃ゼネラルは日本のエクセレントカンパニーだった。だが、今や財務が悪化し、2014年は子会社を減資してまで利益を計上。ついには自力更生の道を放棄したようだ。東燃ゼネラルを愛している従業員や関係者は、みな失望していると思う。JXと東燃ゼネラルの統合は、売上高10兆円対3兆円と完全にアンバランスで、東燃ゼネラルはのみ込まれる。
いちばん問題なのは、影響力のある株主がいないこと。現経営陣はマネジメント経験がまだ浅く、十分な収益を上げていない。いつまで38円という高配当を続けられるか。
東燃ゼネラルが統合を決議した取締役会は、トップが強く働きかけたにもかかわらず、数票の僅差だったと聞く。売上高3兆円の巨大な東燃ゼネラルが存在感を失ったのは誠に残念なことだ。
(「週刊東洋経済」2016年2月6日号<1日発売>「核心リポート01」を転載)
ただ同然だったガソリン、60倍まで値上げ ベネズエラ
ベネズエラのマドゥロ大統領は17日、世界で最も安く「ただ同然」とされてきた国内のガソリン価格を約60倍まで値上げすると発表した。外貨収入の96%を原油輸出に頼る同国は、原油の国際価格の下落で財政が急速に悪化。補助金による低価格の維持が難しくなった。1999年の故チャベス政権の誕生以降、値上げは初めて。
地元紙エルナシオナルなどによると、レギュラーガソリンは1リットル当たりの価格を0・07ボリバル(約1円)から1ボリバル(約17円)、ハイオクは0.097ボリバルから6ボリバルに引き上げる。
同国は原油の確認埋蔵量で世界最大を誇る。マドゥロ氏は、原油価格の急落で「原油輸出による収入が、2014年の370億ドル(約4兆1800億円)から昨年は125億8700万ドルに減った」と説明。米国や隣国コロンビアに比べ、国内のガソリン価格が極めて低く抑えられてきたとして、「(新価格を)受け入れ、支持してほしい」と国民に呼びかけた。
同国では89年、ガソリンなどの値上げをきっかけに大暴動が発生。以降、ガソリン値上げはタブー視され、年200%超とされる高インフレの中でも極端な低価格が維持されてきた。(サンパウロ=田村剛)