「後期高齢者医療」制度廃止に現場は反発
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20090921-OYT1T00412.htm
高齢者などの反発を招き、政権交代の一因ともなった後期高齢者医療制度。長妻厚生労働相は、「廃止」に向けた検討に入ったが、制度を運営する後期高齢者医療広域連合や、保険料の徴収を行う市町村などは早くも反対ののろしを上げる。
関係者の利害を調整し、新しい高齢者医療制度をどのように構築するのか。社会保障制度の抜本改革を目指す民主党の一里塚となりそうだ。(社会保障部 阿部文彦、内田健司、政治部 高橋勝己)
◆制度開始1年半◆ 「年齢区分で区切る仕組みは廃止する」。長妻厚労相は17日未明の就任会見で、きっぱりと宣言した。75歳以上の医療費を現役世代が支援する後期高齢者医療制度は、昨年4月の施行以来、年金からの保険料天引き、周知不足などにより、大きな混乱を招いた。民主党などは、即時廃止し、従来の老人保健制度に戻すよう求める法案を昨年6月に参院で可決するなど、政権批判の追い風としてきた。
16日には、「全日本年金者組合」(組合員約9万人)が国会前で集会を開いた。冨田浩康書記長は「秋の国会で後期高齢者医療制度の廃止を実現することこそ、新政権の船出にふさわしい」とエールを送った。
しかし、制度開始からすでに1年半がたつだけに、制度廃止への反発も強い。京都府の広域連合は今月5日、鳩山政権の誕生を見越し、「制度が廃止された場合、老健制度が抱えていた問題の解決を遠ざける。制度の度重なる大幅な見直しにより、高齢者や制度を実施する現場に大きな混乱が生じることが懸念される」として、制度堅持を求める決議を賛成多数で可決した。制度を主導してきた日本医師会も、「廃止により現場が混乱する」との立場だ。
◆現場に大きな負担◆ 高齢者が国民健康保険などに加入したまま、医療サービスを受ける老健制度に代わる、新たな高齢者医療制度の検討が始まったのは1990年代後半から。国保を運営する市町村、健康保険組合、日本医師会などが論議を重ね、2005年末に、制度の枠組みが決まった。さらに、制度開始まで、保険料を徴収する市町村、運営主体となる広域連合は2年間をかけて、徴収システムの新設、窓口業務を行う職員の研修などに追われた。
すでに、来年度の保険料の改定作業も始まっており、すぐに制度を変えた場合、現場の負担は大きい。全国後期高齢者医療広域連合協議会の横尾俊彦会長(佐賀県多久市長)は、「多額な投資をして準備してきた制度であり、元に戻すとなると、同じくらいの費用がかかる。現状は落ち着いており、制度の基幹は残すべきだ。現場の意見を聞いてほしい」と指摘する。
さらに、開始当初、市町村に殺到した保険料などの苦情も目立たなくなっている。日本医療政策機構が今年1月に行った世論調査では、現行制度を基本的に維持すべきだとする人が、70代以上では56%に上った。在宅の高齢者を多く診る新宿ヒロクリニックの英裕雄(はなぶさひろお)医師も「高齢者や家族が、制度に特に強い問題意識を持っているような印象は受けない。ある程度定着したのでは」と話している。
・・・・・・・・
事務処理をする「現場の意見」ではなく「高齢者や高齢者を抱える家族の意見」を聞いてほしいものです。
“苦情が目立たなくなっている”のは、「定着した」というよりは「諦め」からなのではないかしらん、と思うのでアリマス。