紫のオダマキ(今朝前栽に仲間入り)
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【石油販売】元売りは系列店を大事にしたら?
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5月12日 燃料油脂新聞
共同受注契約単価「割引」撤廃に 福井県石商 福井支部
(割引していた)「従来の契約単価ではリットル5-6円のマージン。とても商売ではない。週決め仕切りの実態を説明し、理解を求めた」と慢性的な低粗利のため、県石商は前年度から県や市に対して見直し交渉を開始。
粘り強く交渉した結果、今年度4月分(県警は5月分)から割引が撤廃された。
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(卸格差や他社買いがあるから、私的には一律の契約単価には納得いかない部分もありますが)
福井県石商は、いい仕事をしはりましたね。
酒の安売り規制強化に異論…緩和の流れに逆行(読売新聞) - goo ニュース
安売り規制では町の酒販店を救えない
酒の安売り規制 消費者の利益を損なうな
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刹那に生きる人間の、それぞれの利益。
5月11日 読売新聞
元売り大手GS、量販店の「安売り攻勢」に悲鳴
石油元売り大手の系列スタンドが、量販店の「安売り攻勢」に悲鳴を上げている。
系列店側は、元売りが売れ残ったガソリンを割安な価格で、大量に系列以外に卸していると不満を募らす。人口減少や車の燃費向上で逆風にさらされているスタンドの経営が、いっそう苦しくなる恐れがある。(山本貴徳・中島千尋)
「近隣の数十店が潰れかねない」。東北地方のスタンドの間では、米国の会員制量販店「コストコ」が山形県上山市に今年夏にオープンする店舗に大型スタンドを併設することに警戒感が強まっている。
16台の車が同時に給油できる。元売り大手から売れ残ったガソリンなどを割安に仕入れるとみられる。米国などのコストコではスタンドを併設する店舗が多いが、日本では初めて。今年夏以降、富山県射水(いみず)市などでもスタンド併設型の出店を計画している。
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もし私がこの業界のことを何も知らない一消費者だったなら、恐らくセルフを利用しているだろうし、この記事を目にしても特に何も感じないと思います。
恐らく大多数の人がそうでしょう。
それでも、「卸格差」「売れ残ったガソリンを系列以外に卸している」「量販店の安売り攻勢」これが大手新聞に掲載された意味は大きいです。
ただ、この記事では「元売のブランドマークの無い店が安い」ということは分かりますが、
実際には系列店の方が安いなんていう事もありますし、同じマークの系列店であっても販売価格に10円以上もの差がある理由の説明はありません。
<補足>
特約店にも直営店があります。
元売り→特約店(2者店)→販売店(3者店)
元売から特約店に卸されるときの卸値にも数量インセンティブによる格差があります。
特約店から販売店に卸されるときには中間マージンが乗せられています。
(※なので卸格差自体は昔からありました)
「ガソリンがスタンドに届くまでの主な流れ」の図で、売れ残ったガソリンが割安で販売されると書かれている、このルートを業者間転売ルート(業転)といい、業転で流れる燃料油のことを業転玉と言います。
上の図では「元売→商社など→量販店などのスタンド」となっていますが、元売りのブランドマークを掲げている店の中には、正規ルートではない業転玉を仕入れる系列店があります。
(※分かりやすくするために、図に赤い線の矢印を入れました)
卸格差がある以上、販売価格に差が出るのは当然です。
高値販売しているからと言って適正利益が確保出来ているわけではないのです。
例えば、
系列ルートでの仕入れが130円のとき、業転ルートでの仕入れは120円です。(※当店では最大18円の差があったこともあります)
PB-SSが130円で販売したら10円の粗利です。系列店は135円で販売しても5円の粗利しかありません。
しかし、
系列店でありながら業転仕入れをすることで130円で販売することも可能ですし、
或は、全量系列仕入れで高値で売るしかない同業他社の価格に合わせることで15円の粗利を確保することも可能になるのです。
★仕入れ値にそれ程の差があるのに、一律の単価で公用燃料の受給契約を契約するのはおかしなことなのです。
卸値の格差で実現している安値(店)に引きずられる形でしか販売価格を決められないために高値で販売していても超低マージンなのです。
★「セルフより10円も高いのだから窓を拭くのは当然」、ではないのです。
次は、卸格差には「業転と系列の格差」と「系列間の差別対価」があることも記事にしてほしいと思います。
それから、読売新聞の記事では説明のつかない事例がこれです。
“系列安・PB高”に疑念
5月11日 ぜんせき
私たち系列3者店より割安な価格で仕入れているはずのPB-SS業者が、系列量販SSの存在に対して「これでは商売にならない」と声を上げているそうです。
ガソリンの卸値を決めるのは元売りであり、数量インセンティブといえば聞こえは良いですが、その実は「結果ありき」で恣意的に決められる卸値が正体だと思います。
その結果、普通に働いていれば得られるはずの利益が失われました。
元売は「自由競争」と言い、経産省も「違法ではない」と言う。
大多数の系列店の悲鳴(廃業→ガソリンスタンド過疎地化)は当然です。
だから、それを前提としての、「ガソリンスタンド過疎地化対策協議会」なのです。
系列マークを下ろして(下ろさざるを得ず)、PB-SSや無印店になった中小業者も、商圏に大手資本が参入してくれば今の優位性も失うことになるでしょう。
元売は「自由競争」と言い、経産省も「違法ではない」と言う。
その通りです。
そのための規制緩和でした。
そのためのスケープゴートとしての既存の地場3者店でした。
だから流れは変わらない。
規制緩和以降は殆ど無給のような状態でも、それぞれの○○のために踏ん張ってきた既存の零細店も、いずれは姿を消し、
市場に残るのは小口配達を切り捨ててきたような大手と、新たに参入してくる大手異業種セルフになるのだと思います。
そうなったとき、一部の消費者(地域)には供給不安という不利益が起こります。
その不利益を緩和するための、「ガソリンスタンド過疎地化対策協議会」です。
呼び鈴SSと移動式ガソリンスタンド
灯油の配置販売
※但し、その地域にセルフが1軒でもあれば対象とはなりません。
だけど私は念じています。
「使命は理解している。だが赤字では苦しい」と言った九州の販売店さん。
もちろん営業を続けるのはキレイゴトだけじゃないです。
自分のため、生活の糧を得るためでもあります。
でも本当なら得られるはずの利益の逸失がありました。
このブログにコメントをくれる方の中にも、消費者の誤解と偏見に疲労困憊しながらでも系列100%仕入れを貫いて、灯油1缶から配達している販売店さんがあります。
「マークを付けていたらそのマークの元売に潰される」とマークを下ろした販売店さんの中にも、です。
痛み止めの注射を打ちながら冬場の灯油シーズンには、団地などの家庭へポリ容器を手に階段を上り下りしているのです。
そういう地場の販売店さんを世の中は大事にしてやってほしいと思うのです。
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初めてご訪問くださった方へ
このブログの現在一番の目的はガソリンスタンド(昔ながらの)が置かれている現状を知ってもらうことです。
ガソリンスタンドカテゴリーの記事を全て読んで頂きたいのですが、あまり一般の方が興味を引く話題でもありませんので、
規制緩和以降のガソリンスタンドが置かれた現状を予備ブログ「masumi_iのブログ」にアップしました。
是非ご一読下さい。