新シルクロードに商機 アジア投資銀きょう開業
山東如意・科天集団… 中国企業、中央アジア・中東へ
2016/1/16 3:30 日経朝刊
中国の習近平指導部が進める広域経済圏構想「一帯一路(新シルクロード)」
を受け、中国企業が西へ動き始めた。繊維大手の山東如意科技集団は中国最西部の
新疆ウイグル自治区に新工場を建設、塗料大手の科天集団は沿海部に近い安徽省から
西部の甘粛省に本社を移した。狙うのは中央アジアや中東、インドなどかつての
交易路につながる成長市場。16日に開業式典を開くアジアインフラ投資銀行
(AIIB)の資金力も生かし成長の種をまく。
中国企業の進出を見込み工業団地や商業施設の整備が進む(新疆ウイグル自治区カシュガル)
パキスタン国境まで約300キロメートルの新疆ウイグル自治区カシュガル。
そんな中国の西の果ての街に紡績工場を設けるのがレナウンの親会社でもある
山東如意だ。周囲は砂漠だけという過酷な環境。それでも邸亜夫董事長は意に
介さない。「ここからインドやパキスタン、中央アジアの巨大市場への道を開く」
中国の民営水性塗料メーカー、科天集団は2014年、上海にほど近い安徽省
合肥から内陸部の甘粛省蘭州に本社と工場を移した。同社は環境負荷の低い
水性塗料を手掛け、スウェーデンの家具世界最大手イケアにも納入する。
古代シルクロードでも重要な要所だった蘭州を起点に「水性塗料を世界に
輸出する」とグループ会社の蘭州科天環保節能科技の戴家君総経理は意気込む。
両社の「西進」を新シルクロード構想が後押しする。その先兵役がAIIBだ。
中国はこれまでもカザフスタン経由で欧州とつながる国際鉄道やカシュガルと
パキスタンを結ぶ国道の整備を進めてきた。AIIBが本格稼働してアジアの
インフラ整備が進めば、周辺国の経済成長も後押しできる。中国企業はそこで
広がる商機を見込む。
周辺国のインフラ需要の取り込みはもう始まっている。建機大手の中聯重科は
昨年末、キルギスの道路整備向け機械を30台あまり出荷した。同業でライバルの
三一重工もインフラ整備需要を見越してトルコやインドなどで拠点づくりを急ぐ。
新シルクロードでつながる市場の成長余地は大きい。例えば中央アジアの一角を
占めるタジキスタン。国連によれば15年に848万人の人口が50年には1400万人に
増える。石油資源に恵まれ中間層の厚みが増すカザフスタンでも50年の人口は
15年比で3割増える見通しだ。
もともと内陸部に本拠を置く企業のチャンスも出てくる。中国の石油・化学設備
大手で甘粛省に本社を置く蘭州蘭石集団は16年上期までにインドやトルクメニスタン
など海外6カ国に営業拠点を新設する計画だ。
「原油価格の下落で国内での新規受注は打撃を受けている。海外市場の開拓で
対応したい」と同社の楊鋼・市場部長は話す。現在1割以下の海外売上高比率を
5割超に高める考えという。
もっとも、中央アジアや中東でも資源ブームの収束で経済成長が足踏みする国が
増えている。AIIBを通じてインフラ投資の資金をまかなうことはあっても、
自国経済の低迷から中国企業が売り込む製品を積極的に購入するかは未知数だ。
中央アジアの国々では伝統的にロシアの影響力が強いこともネックとなる。
カザフスタンに進出した中国食品メーカー幹部は漏らす。「彼らの中国企業に対する
警戒感は強い。ビジネスは容易ではない」
思惑通りに現代のシルクロードを生かせるか。中国企業には険しい難路を乗り
越える覚悟も問われる。
山東如意・科天集団… 中国企業、中央アジア・中東へ
2016/1/16 3:30 日経朝刊
中国の習近平指導部が進める広域経済圏構想「一帯一路(新シルクロード)」
を受け、中国企業が西へ動き始めた。繊維大手の山東如意科技集団は中国最西部の
新疆ウイグル自治区に新工場を建設、塗料大手の科天集団は沿海部に近い安徽省から
西部の甘粛省に本社を移した。狙うのは中央アジアや中東、インドなどかつての
交易路につながる成長市場。16日に開業式典を開くアジアインフラ投資銀行
(AIIB)の資金力も生かし成長の種をまく。
中国企業の進出を見込み工業団地や商業施設の整備が進む(新疆ウイグル自治区カシュガル)
パキスタン国境まで約300キロメートルの新疆ウイグル自治区カシュガル。
そんな中国の西の果ての街に紡績工場を設けるのがレナウンの親会社でもある
山東如意だ。周囲は砂漠だけという過酷な環境。それでも邸亜夫董事長は意に
介さない。「ここからインドやパキスタン、中央アジアの巨大市場への道を開く」
中国の民営水性塗料メーカー、科天集団は2014年、上海にほど近い安徽省
合肥から内陸部の甘粛省蘭州に本社と工場を移した。同社は環境負荷の低い
水性塗料を手掛け、スウェーデンの家具世界最大手イケアにも納入する。
古代シルクロードでも重要な要所だった蘭州を起点に「水性塗料を世界に
輸出する」とグループ会社の蘭州科天環保節能科技の戴家君総経理は意気込む。
両社の「西進」を新シルクロード構想が後押しする。その先兵役がAIIBだ。
中国はこれまでもカザフスタン経由で欧州とつながる国際鉄道やカシュガルと
パキスタンを結ぶ国道の整備を進めてきた。AIIBが本格稼働してアジアの
インフラ整備が進めば、周辺国の経済成長も後押しできる。中国企業はそこで
広がる商機を見込む。
周辺国のインフラ需要の取り込みはもう始まっている。建機大手の中聯重科は
昨年末、キルギスの道路整備向け機械を30台あまり出荷した。同業でライバルの
三一重工もインフラ整備需要を見越してトルコやインドなどで拠点づくりを急ぐ。
新シルクロードでつながる市場の成長余地は大きい。例えば中央アジアの一角を
占めるタジキスタン。国連によれば15年に848万人の人口が50年には1400万人に
増える。石油資源に恵まれ中間層の厚みが増すカザフスタンでも50年の人口は
15年比で3割増える見通しだ。
もともと内陸部に本拠を置く企業のチャンスも出てくる。中国の石油・化学設備
大手で甘粛省に本社を置く蘭州蘭石集団は16年上期までにインドやトルクメニスタン
など海外6カ国に営業拠点を新設する計画だ。
「原油価格の下落で国内での新規受注は打撃を受けている。海外市場の開拓で
対応したい」と同社の楊鋼・市場部長は話す。現在1割以下の海外売上高比率を
5割超に高める考えという。
もっとも、中央アジアや中東でも資源ブームの収束で経済成長が足踏みする国が
増えている。AIIBを通じてインフラ投資の資金をまかなうことはあっても、
自国経済の低迷から中国企業が売り込む製品を積極的に購入するかは未知数だ。
中央アジアの国々では伝統的にロシアの影響力が強いこともネックとなる。
カザフスタンに進出した中国食品メーカー幹部は漏らす。「彼らの中国企業に対する
警戒感は強い。ビジネスは容易ではない」
思惑通りに現代のシルクロードを生かせるか。中国企業には険しい難路を乗り
越える覚悟も問われる。