2001年2月10日(土)
ポール・バターフィールズ・ベター・デイズ「イット・オール・カムズ・バック」(ビクターエンタテインメント)
ホトケさん強力プッシュ、tbファンなら必聴の1枚がこれである。
バターフィールドのアルバムといえば、60年代、マイク・ブルームフィールドやエルヴィン・ビショップ在籍時のバターフィールド・ブルース・バンドによる「イースト・ウエスト」があまりにも有名である。
たしかにそれも、名盤中の名盤にはちがいあるまい。
だが、70年代に入ってから結成した「ベター・デイズ」にも、「E.W.」時代の、コテコテのホワイト・ブルースとは一味違ったよさがある。
69年開催のウッドストック・フェスののち、彼の地を気に入り住みついたミュージシャンたちがけっこういて、ウッドストック派などと呼ばれているが、そういった実力派ミュージシャンを中心に結成されたのが、この「ベター・デイズ」というプロジェクトなのだ。
リリース元も、ウッドストックに本拠地をかまえるレコード会社「ベアズヴィル」である(あのトッド・ラングレンもそこからアルバムを出していた)。
メンバーは、リーダーのP・バターフィールド(hca)、ボーカル&キーボードのロニー・バロン、ギターのジェフ・マルダー、エイモス・ギャレット、ベースのビリー・リッチ、ドラムスのクリストファー・パーカーの6人。いずれ劣らぬ巧者ぞろいである。
超強力なリズム・セクション、ツボを押さえた達者なギター・プレイに支えられてバターフィールドが編み出すサウンドは、根本はピュアなブルースでありながら、やはり70年代のコンテンポラリーな味わいのものである。
ボーカルのロニー・バロンも、派手さはないが、表現力にとんだ、シブ~いシンガーである。彼は以前、ドクター・ジョンと組んで「ナイト・トリッパー」というバンドをやっており、このアルバムにもふたりの共作「ルイジアナ・ブラッド」がおさめられている。
ちなみに、ドクター・ジョンという芸名は、本来はロニー・バロンが名乗るはずだったのが、ロニーが嫌がったため、現在のドクター・ジョンであるマック・レベナックが、しかたなくその名を引き受けたというこぼれ話もある。
その他、tbのライブでもおなじみの「スモール・タウン・トーク」、「イフ・ユー・リヴ」といった曲もおさめられている。前者はシンガー、ボビー・チャールズとザ・バンドのリック・ダンコのペンによるもの。ボビー自身のソロ・アルバムやエイモス・ギャレットのベスト・アルバムにも収録されている、リリカルな名曲だ。
あまりに大人っぽい、さらっとした仕上がりゆえに、発表当時は、日本のロックファン、ブルースファンにはほとんど話題にもならなかったアルバムだが、28年の歳月を経て聴いてみると、ブルース、ソウル、ロック、そしてニューオリンズ系ファンクと音楽的に引き出しの多い、完成度の高いサウンドで、まったく古さを感じさせない。
つまり、奥行きがあるっていうか、ふところが広いって感じだ。たまには、こういう大人の音楽、聴いてみてはどうかな?