2022年12月24日(土)
#405 CAROLE KING「TAPESTORY」(Ode/Epic/Legacy 493180 2)
米国のシンガーソングライター、キャロル・キングのセカンド・アルバム。71年リリース。ルー・アドラーによるプロデュース。
全米1位をなんと15週にわたって続けた、モンスター・アルバム。米国でのセールスは1,100万枚、日本でも40万枚というすさまじい売り上げがあった作品。
29歳という年齢の女性シンガーのアルバムがここまで売れたのには、もちろん理由がある。
ひとつは、キャロル・キングには既にソングライターとして10年近い、確たるキャリアがあったということ。
60年代に彼女が当時の夫、ジェリー・ゴフィン(作詞担当)と組んで書いた曲、例えばシュレルズの「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー」、リトル・エヴァの「ロコモーション」、シフォンズの「ワン・ファイン・デイ」、アレサ・フランクリンの「ナチュラル・ウーマン」などが次々とヒットしたのだ。
10代の若さで結婚して子供もいたキングは、自分がシンガーとして表舞台に出ることはなく、もっぱら裏方だったわけだが、ゴフィンと離婚してひとりとなり、子供も大きくなったことで、70年代は自ら歌うことを選んだのだ。
ふたつめは、シンガーソングライターの台頭、そしてブームである。
60年代前半はまだ、曲の作り手と歌い手の分業が当たり前だった時代だったが、作り手の中には、他人に歌ってもらうだけでなく、自ら歌う人々が次第に増えてくる。
女性シンガーで言えば、ジョーン・バエズあたりを筆頭に、ジョニ・ミッチェル、ローラ・ニーロ、ジュディ・コリンズといった人たちに、60年代後半からスポットが当たるようになる。
男性でも、ジェイムズ・テイラー、ニール・ヤング、ニルソン、ランディ・ニューマン、ジョン・セバスチャン、ニール・ダイヤモンドらが登場して、従来のショービズとは一線を画した活動をするようになる。
69年の「ウッドストック・フェスティバル」は、まさにそういう「手作り文化」「草の根文化」の集大成ともいうべき祭典だった。
アマチュア、インディーズのミュージシャンたちが、これまでの商業主義と異なる音楽を作っていこうという、マニフェストでもあったのだ。
このような文化背景の中、キャロル・キングは新時代の旗手として、一躍脚光を浴びたのである。
そのサウンドはピアノの弾き語りを基本とした、ややジャズ寄りの大人っぽいもの。
流行りの派手なロックやポップ・サウンドとは無縁な、スタンダードな音作りだったが、これが刺激の強いロックにあきはじめていたリスナー層に見事にアピールした。
他のシンガーソングライターはフォークをバックグラウンドとした人が多かったが、それよりもっと都会的で洗練されたイメージが、彼女のサウンドにはあった。
後に日本でブームを呼ぶシティ・ポップも、キングにひとつの源流があるといえそうだ。
このアルバム(邦題「つづれおり」)を久しぶり聴き返してみる。
ピアノの音が実に鮮明にレコーディングされていて、聴いていて心地よい。
ヒット・シングル「イッツ・トゥー・レイト」、そのカップリング曲「空が落ちてくる」、シングル第2弾「スマックウォーター・ジャック」とカップリング「去りゆく恋人」。
落ち着いた雰囲気のメランコリックな曲、躍動感のある曲、その両方でキングはその作曲の才能をいかんなく発揮している。
他にも、ジェイムズ・テイラーに提供した名曲「きみの友だち」、バーブラ・ストライザントに提供した「地の果てまでも」、60年代の作品の「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー」「ナチュラル・ウーマン」の2曲のセルフ・カバーと、実に強力なラインアップが揃っている。こりゃ売れるワケだわ。
ちなみに、テイラーもギターやコーラスで参加している。まさに友情出演だな。
こういった曲の歌詞内容を、キング自身の人生の軌跡と重ね合わせてみると、実に感慨深い。
出会いと別れを経て、人は成長していくのである。
以上の有名なナンバー以外にも、佳曲、良曲は多い。
例えば「ホーム・アゲイン」、アルバム・タイトル曲の「つづれおり」、CDで追加された「アウト・イン・ザ・コールド」など、どれもシングルにしてもおかしくない。さすがNo.1メロディ・メーカー。
キングの独特の温かみのある歌声、そしてその深みのある歌詞に、都会暮らしやうまくいかない恋愛や結婚生活で心のすさんだ人々は、癒しを得るのだろう。
50年昔も、いまも、それは変わることはない。
<独断評価>★★★★☆
米国のシンガーソングライター、キャロル・キングのセカンド・アルバム。71年リリース。ルー・アドラーによるプロデュース。
全米1位をなんと15週にわたって続けた、モンスター・アルバム。米国でのセールスは1,100万枚、日本でも40万枚というすさまじい売り上げがあった作品。
29歳という年齢の女性シンガーのアルバムがここまで売れたのには、もちろん理由がある。
ひとつは、キャロル・キングには既にソングライターとして10年近い、確たるキャリアがあったということ。
60年代に彼女が当時の夫、ジェリー・ゴフィン(作詞担当)と組んで書いた曲、例えばシュレルズの「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー」、リトル・エヴァの「ロコモーション」、シフォンズの「ワン・ファイン・デイ」、アレサ・フランクリンの「ナチュラル・ウーマン」などが次々とヒットしたのだ。
10代の若さで結婚して子供もいたキングは、自分がシンガーとして表舞台に出ることはなく、もっぱら裏方だったわけだが、ゴフィンと離婚してひとりとなり、子供も大きくなったことで、70年代は自ら歌うことを選んだのだ。
ふたつめは、シンガーソングライターの台頭、そしてブームである。
60年代前半はまだ、曲の作り手と歌い手の分業が当たり前だった時代だったが、作り手の中には、他人に歌ってもらうだけでなく、自ら歌う人々が次第に増えてくる。
女性シンガーで言えば、ジョーン・バエズあたりを筆頭に、ジョニ・ミッチェル、ローラ・ニーロ、ジュディ・コリンズといった人たちに、60年代後半からスポットが当たるようになる。
男性でも、ジェイムズ・テイラー、ニール・ヤング、ニルソン、ランディ・ニューマン、ジョン・セバスチャン、ニール・ダイヤモンドらが登場して、従来のショービズとは一線を画した活動をするようになる。
69年の「ウッドストック・フェスティバル」は、まさにそういう「手作り文化」「草の根文化」の集大成ともいうべき祭典だった。
アマチュア、インディーズのミュージシャンたちが、これまでの商業主義と異なる音楽を作っていこうという、マニフェストでもあったのだ。
このような文化背景の中、キャロル・キングは新時代の旗手として、一躍脚光を浴びたのである。
そのサウンドはピアノの弾き語りを基本とした、ややジャズ寄りの大人っぽいもの。
流行りの派手なロックやポップ・サウンドとは無縁な、スタンダードな音作りだったが、これが刺激の強いロックにあきはじめていたリスナー層に見事にアピールした。
他のシンガーソングライターはフォークをバックグラウンドとした人が多かったが、それよりもっと都会的で洗練されたイメージが、彼女のサウンドにはあった。
後に日本でブームを呼ぶシティ・ポップも、キングにひとつの源流があるといえそうだ。
このアルバム(邦題「つづれおり」)を久しぶり聴き返してみる。
ピアノの音が実に鮮明にレコーディングされていて、聴いていて心地よい。
ヒット・シングル「イッツ・トゥー・レイト」、そのカップリング曲「空が落ちてくる」、シングル第2弾「スマックウォーター・ジャック」とカップリング「去りゆく恋人」。
落ち着いた雰囲気のメランコリックな曲、躍動感のある曲、その両方でキングはその作曲の才能をいかんなく発揮している。
他にも、ジェイムズ・テイラーに提供した名曲「きみの友だち」、バーブラ・ストライザントに提供した「地の果てまでも」、60年代の作品の「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー」「ナチュラル・ウーマン」の2曲のセルフ・カバーと、実に強力なラインアップが揃っている。こりゃ売れるワケだわ。
ちなみに、テイラーもギターやコーラスで参加している。まさに友情出演だな。
こういった曲の歌詞内容を、キング自身の人生の軌跡と重ね合わせてみると、実に感慨深い。
出会いと別れを経て、人は成長していくのである。
以上の有名なナンバー以外にも、佳曲、良曲は多い。
例えば「ホーム・アゲイン」、アルバム・タイトル曲の「つづれおり」、CDで追加された「アウト・イン・ザ・コールド」など、どれもシングルにしてもおかしくない。さすがNo.1メロディ・メーカー。
キングの独特の温かみのある歌声、そしてその深みのある歌詞に、都会暮らしやうまくいかない恋愛や結婚生活で心のすさんだ人々は、癒しを得るのだろう。
50年昔も、いまも、それは変わることはない。
<独断評価>★★★★☆