2009年9月20日(日)
#92 ロニー・ブルックス「Figure Head」(Authentic Blues/Fuel 2000)
1933年生まれのベテラン・ブルースマン、ロニー・ブルックス、若き日のレコーディングより。クレイグ=デニーズ=エマーソンのトリオの作品を。
本名リー・ベイカー・ジュニア。ルイジアナ州ダビュイッソンに生まれ、テキサス州ポート・アーサーに移り住む。20代の後半、ロックン・ローラーとして「ギター・ジュニア」という芸名でローカル・レーベル、ゴールドバンドよりデビュー。後に同名のミュージシャンがいたこともあり、ロニー・ブルックスに改名することになる。
60年代はメジャーを目指してシカゴに出てきたもの、鳴かず飛ばずの状態が続き、レコード会社を転々とすることになるが、運が向いてきたのが79年にアリゲーターに移籍、アルバム「Bayou Lightning」を出したあたりからだ。
この一枚で見事、ブレイク。ブルックス、46才にしてついにオトコとなったわけである。
本曲はそのアルバムに収められた79年録音版‥‥ではなく、オリジナル録音版から。ミディアム・スローのブルース。オルガン(とホーン)のバック・サウンドが時代を感じさせる、いなたいナンバーだ。
もともとはルイジアナやテキサスといった「田舎」で、ほのぼの、ゆるゆるとしたブルースをやっていたブルックスが、都会(シカゴ)の世知辛い環境に入って揉みに揉まれた。そんな足跡も感じられる、ちょっとメランコリーな味わいもある。
ロニー・ブルックスというひと、日本ではいわゆるブルース・マニア以外にはほとんど知られていないし、その歌声よりもギター・プレイで語られることが多い。
が、彼は歌でも結構な実力を持っていると筆者は思う。メジャー未満のブルースマンのおおかたは、おもにギター・プレイで勝負、歌は素人に毛が生えた程度というのが相場だが、彼はもともと流行歌手的なデビューをしただけあって、声に魅力があるのだ。
とくにその中音・低音の巧みな使いわけかたとか、声の響きのよさは、特筆に値いするように思う。
塩辛声系のブルースマンにはない、ほどよい「甘さ」も感じられる。
「Bayou Lightning」にも、この曲の再演が収められているのだが、比較するにオリジナル版のほうが断然いい。若いころのほうが、歌声にまろみと色気があるのだ。
あえてギター・プレイを抑えて、歌一本で勝負するこの一曲。けっこうお気に入りであります。