2009年12月13日(日)
#103 ヴァン・ヘイレン「Ice Cream Man」(Van Halen/Warner Bros.)
#103 ヴァン・ヘイレン「Ice Cream Man」(Van Halen/Warner Bros.)
ヴァン・ヘイレン、78年リリースのデビュー・アルバムより。ジョン・ブリムの作品。
ヴァン・ヘイレンは、ここ10年ほどは活動休止状態ではあるものの、35年もの歴史を誇る長寿バンドだ。
オリジナル・メンバーはエディ(g)とアレックス(ds)のヴァン・ヘイレン兄弟に、デイヴィッド・リー・ロス(vo)とマーク・アンソニー(b)の4人編成。74年、カリフォルニア州パサディナにて結成。
78年にキンクスのカバー「You Really Got Me」のシングルヒットを飛ばしたときは、実に清新な衝撃をロック界に与えたものだ。
ブリティッシュ・ハードロックの強い影響を受けながらも一歩突き抜けた、アメリカのバンドならではの陽気で開放感あふれるサウンドは、それまでにないものだった。
デイヴの賑やかなキャラクターと超絶高音ボーカル、エディの派手なライトハンド奏法、そしてリズムセクションの切れのいいワイルドなプレイ。
先達であるZEP、エアロなどともひと味違った、まさに新世代ハードロックの幕開けだった。
ファーストにしてすでにベテラン・バンドに匹敵する完成度を備えたアルバムは、リスナーたちを大いに刺激した。これぞ80年代の音という評価も少なからずあった。
その後バンドは何回かのメンバー交代を経て、少しずつスタイルを変えつつも存続していくのだが、デビューアルバムを最高傑作と考える人は多い。
初々しさというよりは、既に十分な貫禄を感じさせるそのサウンドは、フツーのバンドならば3枚目か4枚目でようやく達成するレベルのものだ。
そんな良曲ぞろいの中でも、ちょっと異色の一曲が、この「Ice Cream Man」。
ジョン・ブリムといえば、50年代にシカゴで活躍した黒人シンガー/ギタリストだが、いくつかのレーベルを経て所属したレコード会社、チェッカー/チェスとの折り合いがあまりよくなかったため、そこでのレコーディングもお蔵入りになることが多く、わずかにエルモア・ジェイムズとの相乗りアルバム「Whose Muddy Shoes」(70年発表)収録の7曲で知られる程度であった。
60年代にはミュージシャンからほぼ足を洗って、クリーニング屋で生計を立てざるをえなかったという。
そんなブリムにとって思いもよらぬ朗報が、このヴァン・ヘイレンによるカバー・バージョンだった。
ブリムが再びブルースマンとして表舞台に立つことになったのも、このアルバムのヒットのおかげだったという。
オリジナルは、ブリムの友人リトル・ウォルターのハープを従えた軽快なシャッフルだが、ヴァン・ヘイレン版はちょっとひねってあって、前半アコースティック、後半ハードロックというアレンジになっている。
ブリムが妻のミュージシャン、グレイスの協力を得て作ったユーモラスな歌詞が、実に印象的。ダイヤモンド・デイヴの伊達男キャラにもマッチした、小粋でちょっとキワドく、そしてとことん陽気なナンバーだ。
デイヴの派手なボーカルに負けじと、目一杯ハジケて弾きまくるエディのギター・ソロも聴きもの。
ヴァン・ヘイレンによる、ブルース讃歌と言える一曲。ハードロックのルーツは、やっぱりブルースなんであります。