2010年5月2日(日)
#120 プロフェッサー・ロングヘア「Rockin' With 'Fess」(Tipitina: The Complete 1949-1957 New Orleans Recordings/Important Artists)
#120 プロフェッサー・ロングヘア「Rockin' With 'Fess」(Tipitina: The Complete 1949-1957 New Orleans Recordings/Important Artists)
プロフェッサー・ロングヘアの代表的ヒット。彼自身の作品。フェデラル時代の録音(51年)。
フェスことプロフェッサー・ロングヘアは本名ヘンリー・ローランド・バード。1918年ルイジアナ州ボガルーサ生まれ。80年、61才で同州ニューオーリンズにて亡くなっている。
N.O.が生み出した偉大な音楽家フェスについて、ここでいまさらくだくだしく語るつもりはないが、20世紀アメリカにおける天才の一人であることは、間違いないだろう。
ニューオリンズR&Bとよばれる音楽の一ジャンルは、まさにフェスが「発明」したものといっていい。
その左右の手をフルに駆使したピアノ演奏は独創的きわまりないもので、彼ひとりでフルオーケストラ一個分に相当するスケールのサウンドを叩き出していた。
フェスティバルのステージでフェスがピアノを弾き始めたとたん、他の会場の演奏がすべて止まってしまったとか、逸話にはことかかないのも、天才の証明か。
まさに空前絶後の存在だったわけだが、60年代までの日本においてはほとんど知る者がなかったのも事実で、このコンピアルバムに収録された50年代の曲群は、リアルタイムで聴く者などいなかった。いや、彼の音楽だけでなく、ブルース、R&B系の音楽全般に関してそうであった。
当時、いかに外来音楽の伝播が偏ったものであったか、ということやね。
だが、知られざる天才フェスも70年代に入って、ドクター・ジョンなどの白人ミュージシャン、あるいはミーターズのような若手黒人ミュージシャンらが礼賛していたこともあって、日本でも聴かれるようになってきた。
亡くなって既に30年の歳月が経ってしまったが、彼の音楽は、いまだに聴くたびに新鮮な驚きを筆者に与えてくれる。
ダイナミックに転がるピアノ、ほどよくラフなボーカル。これぞロックンロールの始祖形なのだと感じる。
きょう聴いていただく「Rockin' With 'Fess」は、テナーサックスをフィチャーしたジャズっぽいスタイルながら、しっかりロックもしている、アップテンポのブギ・ナンバー。「アルプス一万尺」をモチーフにしたユーモアあふれるアレンジがいい。
この卓越したリズム感覚こそが、ニューオリンズ音楽の本質であり、最大の魅力といっていい。
約60年の月日を経て甦る、フェスの名演・名唱。聴かんと、大損でっせ~。