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音曲日誌「一日一曲」#275 レイ・チャールズ「That Old Lucky Sun」(Best Of Ray Charles/Victor)

2024-01-05 06:07:00 | Weblog
2013年7月7日(日)

#275 レイ・チャールズ「That Old Lucky Sun」(Best Of Ray Charles/Victor)





今年もはや、後半に突入である。梅雨も明けて、本格的な夏に突入した7月の第一弾はこれ。

先々週の「Night Time Is the Right Time」が好例だが、レイ・チャールズはオリジナル作品を多数もつ一方で、他のアーティストの作品も遠慮なく歌う「カバーの達人」でもある。そんな彼による、63年のレコーディング。ビーズリー・スミス、ヘブン・ガレスピーの作品。

もともとこの曲は西部劇の俳優として有名な、フランキー・レインによって49年に大ヒットしたものだ。

これをヴォーン・モンロー・オーケストラやルイ・アームストロング、フランク・シナトラがこぞってカバーし、49年を代表するヒットとなったのである。

その後も、このカントリー・バラード調の哀愁あふれるメロディにひかれて、数多くのアーティストがカバーしている。50年代では、バッファロー・ビルズによるコーラス、ジェリー・リー・ルイス、サム・クック、60年代に入ってからは、ベルベッツ、アレサ・フランクリンらのバージョンがその代表例だ。

レイ・チャールズ版はそれらにいささか遅れて、63年、アルバム「Ingredients in a Recipe for Soul」のためにレコーディングしている。

まずは、聴いていただこう。レイ・チャールズのバック・サウンドは大別して、ストリングス中心のポピュラー・ソング風のアレンジと、リズムを強調したR&B、ソウル風アレンジの2種があると思うが、この曲は前者に属するタイプ。いかにも、白人のリスナーにも十分ウケそうな、カントリー・タッチのアレンジになっている。

ゆっくりとしたテンポで、噛みしめるように歌うチャールズ。バックこそ、弦と混声コーラスでポピュラー・ソングっぽいのだが、歌にはやはり、彼ならではのソウルが感じられるね。特に、サビ部分の、控えめながらもこみ上げる思いを歌うさまは、聴く者の心を強くゆさぶるに違いない。

その後もこの「That Old Lucky Sun」は、70年代にはポール・ウィリアムス、ウィリー・ネルスン、90年代以降はジェリー・ガルシア・バンド、リトル・ウィリー・リトルフィールド、ジョニー・キャッシュ、ブライアン・ウィルスン、クリス・アイザックらによって、また日本では久保田麻琴によってもカバーされている。まさに、エバー・グリーンな一曲。

本来はカントリー・ソングとして生まれながら、そのメロディには、ソウル・バラードにも通じる、胸にしみる哀愁があり、それゆえに白人・黒人を問わず愛唱されるのだと思う。その、数あるバージョンの中でも、レイ・チャールズの名唱は、後進のアーティストたちを強くインスパイアしたはずである。

歌曲(うた)は、歌い継がれることによって、その生命を何十年、何百年も長らえることが可能になる。64年に渡って私たちを魅了しつづけてきた「That Old Lucky Sun」。いま一度、その魅力にふれてみよう。